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J1第33節(10月29日)、鬼門アウエー広島で2−1の勝利

22・11・01
 ミシャ=ブラボーJ1残留が決定

  宮澤8試合ぶり先発で恩返し


 広島の空は、明るくて広かった。日本に16年滞在するミハイロ・ペトロビッチ監督は、初任地・サンフレッチェ広島、浦和レッズ、さらに北海道コンサドーレ札幌に滞在している。札幌に来て5年、アウエー広島に勝ったことが無かった。

 それこそ2017年にJ1に這い上がり残留した四方田修平元監督から2018年に引き継ぎ、18年0●1(J1第1節2月24日)、19年0●1(J1第21節8月3日)、20年2△2(J1第30節11月28日)、21年1●2(J1第3節3月10日)。その間19年のルヴァンカップ1△1(準々決勝9月8日)。さらに22年今年のルヴァンカップ1△1(POステージ第2戦6月11日)。

 歴史をたどると、1998年Jリーグ3●4(ウーゴ・フェルナンデス監督)、2001年J1で0●1(岡田武史監督)、02年1●5(柱谷哲史監督)。03年J2で1△1(ジョアン・カルロス監督)。同0●1(張外龍監督)。12年J1で0●3(石崎信弘監督)、17年1△1(ここは四方田監督)。

 何しろ広島のアウエー戦は、引き分けか敗戦だった。それが2022年10月29日のアウエー戦では、2−1で「初勝利」をして帰ってきた。ペトロビッチ監督いわく「早く帰って、サッポロビールを飲みたい」だった。

 このアウエー戦で札幌が勝ったことで、これまでのJ1・J2・Jリーグカップの対戦成績は、札幌の8勝7分け14敗。これを念頭に試合展開を説明しよう。

 試合は29日、エディオンスタジアム広島に1万8千106人の観衆。札幌からも800人が詰めかけた―と地元紙と道スポ。天候は晴れ。気温19,3度、湿度32パーセント。まずは絶好のコンディション。審判団は中村太主審(43歳、埼玉県出身、今年からプロを宣言したが、すでにJ1通算128ゲームを裁くベテラン)。副審は中野卓、坂本晋悟。第4の審判は清水修平。VAR井上知大(主審格)、AVAR武部陽介。

 広島にミシャが降り立ったのが2006年だから、その時から広島のシステムは3−4−2−1。浦和は徐々に4バックから4−4−2、3−4−2−1、3−4−3など。札幌は岡田武史スタイルから柳下正明−石崎信弘−バルバリッチ氏らから四方田修平監督。ペトロビッチ監督は来年6年目を迎えるというから、3−4−2−1からは、離れられない。

 この日のゲームの方は3−4−2−1のミラーゲーム。広島のキックオフで始まった。札幌は2週間近く空き、荒野拓馬と小柏剛が外れ、宮澤裕樹と興梠慎三が代わっただけ。しかしキャプテン宮澤は8試合ぶりのスタメンと、だいぶ戦列から離れており、コンディションも気にかかる。

 札幌のスタメンはGK菅野孝憲、DF田中駿汰、岡村大八、菅大輝、WB右に金子拓郎、左はルーカス・フェルナンデス、MF宮澤裕樹、高嶺朋樹、シャドーはガブリエル・シャビエル、青木亮太、トップに興梠慎三。控え選手(交代のみ)は、GK大谷幸輝、DF福森晃斗、MFスパチョーク、FWキム・ゴンヒ。

 一方、今季の広島はドイツからミヒャエル・スキッベ監督(56、レバーグーセンやドイツの年齢別代表コーチ・監督を歴任)を招き、8年目の強化本部長の下、コーチ陣も一新した。今回のスタメンを見ると前節から11人中10人が変わっている。

 その広島のスタメン。GK大迫敬介、DF塩谷司、荒木隼人、佐々木翔、MF野上結貴、川村拓夢、野津田岳人、柏好文、MF森島司、満田誠、FWナッシム・ベン・カリファ。控え選手(交代のみ記載)は、MF松本泰志、茶島雄介、柴崎晃誠、棚田遼。

 15時03分、広島ボールでキックオフ。広島・佐々木、札幌・宮澤がキャプテンマーク。10分過ぎから札幌ペースで試合が進むが、広島GK大迫のセーブに遭う。8試合ぶりのスタメン札幌の宮澤は、中央を出たり入ったり、久々の元気な攻守。

 広島もエース野津田の動きが注目される。FKを蹴ったり前線に配球し攻撃の中心。しかし、札幌も左サイドのルーカスのカウンターが目に留まる。23分、広島守備陣を突き破って攻める。うまいルーカスのキープから札幌トップの興梠にスルーパスが送られる。GK大迫をかわし興梠が左足でシュート。がら空きのゴールに転がり込んだ。

 興梠J1通算163得点目のゴールで。10月17日に長男誕生、札幌ベンチから全員がとびだし「ゆりかご」ダンス。幸先の良いスタートを切った。引退した大久保嘉人氏の191得点に次ぐ163得点を記録し、歴代単独2位となった。

 この直後に広島の柏が反則。主審がVARとやり取りし、イエローカード。札幌金子とルーカスの両ワイドの攻めが激しい。34分、今度は広島にチャンス。FKが与えられMF満田がキック、森島がヘディングシュートを放つが枠の外。

 ホームの歓声は37分に上がる。広島・柏が右サイドのDF塩谷に横パス。塩谷が野上がいったん預け、リターンされたパスをペナルティエリア中央に上げる。待ち構えていたMF野津田が左足のシュート。広島が1−1の同点に追いつく。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「ボールを動かして、自分たちのペースを作っていこう」、「走り負けず、相手の背後を狙っていこう」


■サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督のコメント
「全体的にいい戦いができている。よく走れている」、「相手の早い攻撃に気を付けること」、「少ないタッチ数で早くボールを動かしていこう」


 後半に入っても、広島・野津田、札幌・金子、ルーカスの動きが目立つ。両チームともハーフタイムの選手交代は無し。札幌はルーカス、シャビエルを中心にビルドアップ。広島は、野津田、満田のやり取りからの展開でチャンスをうかがう。

 動いたのは9分。札幌が広島陣内でのパス回しから、最後は左のルーカスが広島ペナルティエリア内右に進入していたシャビエルを狙い高い球を上げる。ヘディングでゴール中央に折り返し、フリーで走り込んだ宮澤がGK大迫と1対1になり、右足で押し込みゴール。2−1とする。

 18分、札幌のシャビエルを引き倒した広島の佐々木にイエローカード。22分、広島の野津田にレイトタックルをした札幌の青木にイエローカード。両チームのせめぎ合いで「隙あらば」のお見合い状態。

 最初に動いたのは広島。柏OUT柴崎IN。26分、広島のFWカリファを手を使い倒した札幌DF岡村にイエローカード。29分、広島の森島との競り合いでひじを使った札幌WB金子にイエローカード。

 バランスの取れなくなった札幌が選手交代。32分興梠OUTキム・ゴンヒIN。宮澤OUTスパチョークIN。キャプテンマークはMF高嶺に渡された。直後、広島のDF塩谷に足裏を見せながらスライディングをした札幌のキム・ゴンヒにイエローカード。34分、今度は広島の選手交代。野津田OUT松本IN。野上OUT茶島IN。森島OUT棚田IN。さらに37分、札幌の高嶺OUT福森IN。キャプテンマークは福森へ。

 45分、広島に左CKのチャンス。満田がキッカー、低いボールは札幌DFがクリア。アディショナルタイムは5分。47分札幌GK菅野が足を気にしてピッチに座り込む。ベンチの札幌GK大谷が準備。菅野OUT大谷IN。

 49分、札幌がCK獲得、福森がスタンバイ。ショートコーナーで「時間稼ぎ」。51分、今度は広島にCK。キッカーの満田はゴール正面にクロスを送るがGK大谷はパンチングで逃げ「ゲームセット」。アウエー札幌の記念すべき「Jリーグ・アウエー広島戦初勝利」で、J1残留を決めた。

 シュート数は、広14−15札、CK広3−3札、FK広20−12札、PKなし。

 2022明治安田生命J1リーグ最終節戦の第34節北海道コンサドーレ札幌対清水エスパルス戦は11月5日午後2時から、札幌ドームで行われる。


■北海道コンサドーレ札幌の興梠慎三選手のコメント(一部抜粋)
 (J1残留決定を受けて−)
 「最初に目標に掲げていたところとは全然違う形になってしまったんですけど、こういう厳しい状況の中で残留ができたことは良かったなと思います」


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント(一部抜粋)
 「今日は両チームにとって非常に重要なゲームだったと思います。広島は勝てば3位のポジションが決まるゲームでした。我々は勝利すれば残留が自力で決まるゲームでした。ゲーム自体はお互いに攻撃的な素晴らしいゲームをしたと思います。我々札幌は残留を決めるために戦いました。今日のゲーム、次のゲームで連敗すれば、もしかしたら降格の可能性がまだ残っているという中で、非常に我々にとって厳しいゲームだったと思っています」


■サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督のコメント(一部抜粋)
 「難しい試合になることは予想していました。札幌はカウンターが鋭くて、非常に前がかりにプレスに来るチームということから、難しい試合になることは分かっていました。その中で、札幌の方が確実なチャンスが多かったと思っています。なので、今日の試合は札幌が勝ちに値してもおかしくないと思っています」

池田淳