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ヨーロッパフットボール回廊『コロナフリーのフットボールいつ来るか?』

21・03・14
 コロナの感染が広がってから既に1年を経過、世界の状況はまだ終息には程遠い。ワクチンの接種が始まってはいるが、世界に行き届くには更なる年という時間が必要であろう。それによってスポーツイベントは翻弄され「いつから?」という言葉が1年経っても消えていない。

 フットボールの世界も当然ながらこの混迷の中にあり、世界中のフットボールを愛するファンが早く日常性が戻り、ホームチームを熱狂的に応援する事を望んでいるがそれも叶わないのが現実だ。熱狂ファンと一体となったフットボールがいつ来るのか? 昨年3月以降このコラムでも繰り返し触れてはいるが、ウイルスの動きは予測不可能でありいまだに誰も決められない。

 英国も2021年1月4日から再度ロックダウンに入り、一時千人までの観客を入れての試合が許されていたが、現在は無観客試合に戻っている。声なし、熱なし、静かな試合が続いている。そしてやっと2月23日にジョンソン首相はワクチンの接種が1,700万人(人口比26%)になったところでコロナロックダウン解除のロードマップを発表し、明確なステップで平常化の道を進む予定となった。ちなみに3月12日現在のワクチン接種者数は2,410万人(全人口の37%)と世界でもトップクラスのワクチン接種者数となっており収束方向に向かってきている。

 
 そのロードマップは次の通り。
◇3月 8日 Step1A:Stay Home、
              学校再開、外での1:1の会合許可等

◇3月29日 Step1B:Stay Local、
              外でのスポーツ一部許可、6人までなど

◇4月12日 Step2:Social distancing、
             ジム、図書館再開 、1家族会合許可など

◇5月17日 Step3:6人まで外で会合許可、屋内スポーツ観客
             1,000人、屋外スポーツ4,000人、
             ウエンブレースタジアム10,000人
             (82,000人収容)入場許可など

◇6月21日 Step4:Lockdown解除予定


 今日現在英国の中で実施されているフットボールはプレミアリーグ、チャンピオンシップリーグ、プロリーグ1部、2部そして地方リーグのトップリーグ及び地域リーグ北部、南部の7リーグだけであり、アマチュアリーグ及びユース、ジュニアのリーグは停止されている。もちろん無観客である。

 ステップ3(5月17日)になれば一部観客を入れてもよいことになる。そこで現在検討されているのが、4月25日に行われるEFL(イングランドフットボールリーグ)カップ『Carabao Cup(カラバオカップ)』の決勝戦トッテナム・ホットスパーズ対マンチェスターシティの試合を特別許可で観客を入れてやれないかというもの。しかしコロナの感染者数、死亡者数がどうなるのか不明の中、まだ政府としての判断は出ていない。もし出来ればやっと熱狂が戻るのではと期待されている。

 そして5月15日になれば『The FAカップ』の決勝戦がウエンブレーで行われる。この時こそ観客を入れて行いたいというのが多くのフットボールファンの願いだが、果たして政府が前倒しして特例で観客を認めるのか、上記のロードマップ通りに6月21日まではロックダウンが続きコロナ対策が進んでいくのかが焦点となっている。

 一方でこのコロナ感染による各国のロックダウン環境の中、3月22日から始まるインターナショナルデイ(国際試合日)にプレミアクラブが所属する代表選手を出場させないと警告を発している。

 マンチェスターシティのグアデイオラ監督、リバプールのクロップ監督、マンチェスターユナイテッドのソルシアー監督そろって代表選手をその選手の国へ出さないとコメントしているのだ。

 その理由は世界各国がコロナ禍の為、それぞれに外国人の入国を制限しており多くはその国への入国時自動的に10日−14日の隔離が科せられる(現在英国での隔離期間は10日)。また帰国時も同じく10日−14日の隔離となる。となると選手は都合3−4週間クラブの試合に出場できないことになり優勝、降格が掛かっているクラブにとっては死活問題と指摘している。

 特に南米ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、ヨーロッパのポルトガルのように、現在レッドリストにある国の代表としてその国へ帰国しプレーした場合は隔離措置が取られ、クラブとして大きな損失になると訴えているのだ。

 現在マンチェスターシティはプレミアトップを走っており、アグエロ、エデルソン、フエルデイーノ、ジーザス、マレーズなどの南米選手及びEUヨーロッパからの選手も多く、国際試合でのコロナ隔離でプレミアに出場できなくなるのは戦力的にもその影響は大であるとし、選手を国代表へ出したくないと主張している。

 FIFAルールでは、従来から代表に選ばれた選手に対してけがなどの理由なくしてクラブが拒否することは出来ない。

 しかしこのコロナ禍の、各国リーグ、監督からの要請にこたえてFIFAは特例として各国からの訴えを取り入れ、代表選手の選出についてそのクラブで決定してよいと認めることになった。英断である。

 このため、3月の国際試合はいささか興味を欠くことになったことは否めないが、これもコロナの為す仕業として認めなければならないのであろう。

 ただし、2021年4月末までの緊急措置であり、5月からはまた従来の基本的規則が復活することになっている。

 早くワクチン接種が終わり平常な生活が、スポーツが、フットボールが戻ることを!


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫