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ヨーロッパフットボール回廊『ヨーロッパ各国の賜杯獲得はどのクラブ?』

24・05・17
 今シーズンの終盤ヨーロッパの各国リーグはあと2、3試合を残し終了する。既に優勝が決まったリーグや、これから最終戦にもつれ込むリーグもあり終盤戦の熱気に包まれている。

1・最終節を迎えるドイツブンデスリーガではレーバクーゼンがシャビ・アロンソ監督の采配が冴え、5試合を残した段階で優勝を確定した。常勝のバイエルン・ミュンヘンは今シーズン、イングランド代表キャプテン、スパーズのハリー・ケーンを絶対的ストライカーとして獲得したが12連覇とはならなかった。またヨーロッパUEFAチャンピオンズリーグでも宿敵スペインのレアル・マドリッドに準決勝で敗退し今シーズンは覇権を取ることは出来なくなった。その結果、監督トッシェルは今シーズンで辞任を表明、ハリー・ケーン自身も覇権を取る為の移籍であったが夢叶わず来シーズンはミュンヘンを去るのではないかと噂されている。

2.あと2試合を残しているイタリアのセリアAはリーグで圧倒的な強さを示したインタ―ミランが、残り5試合の段階で2位ACミランに17勝ち点差をつけ優勝を決めた。

3.フランスリーグアン(A)ではPSGが2位モナコに勝ち点差6をつけ優勝を決めた。PSGの主砲エムバぺは今シーズン限りで契約が切れ、来シーズンはスペインのレアル・マドリッドへ移籍する模様である。本人が自由移籍先選択権を保有している為PSGは移籍金が取れないことになる。

4.スペインリーグはバロセロナがメッシを放出後、監督として帰還したシャビが昨年リーグ優勝を果たしたが、今季は名門レアル・マドリッドが優勝を決めた。イングランド代表の若干21歳ビリンガムが中盤の要として攻撃に参加、既に19点を挙げておりヨーロッパの時代を背負う星となる可能性を示している。

5.イングランドプレミアリーグも最終戦を5月19日に控え、優勝争いはマンチェスター・シティ(MC)とアーセナルの2チームに絞られた。

 延期となっていた第34節は5月14日に行われ、MCはスパーズに2−0と勝利し、最終戦ウエストハム戦を残し勝ち点88、2位アーセナルはあと1試合を残し勝ち点86で拮抗している。アーセナルが最終日19日にホームでエバートンに勝ち、MCがウエストハムに負ければ、アーセナルの優勝となる。MCのグオラデイオラ監督対アーセナル監督アルテカの子弟対決(アルテカはMC時代グオラデイオラ監督のアシスタントであった)で雌雄を決することになる。

 5月19日のプレミアリーグ最終戦は全ての対戦が午後4時キックオフとなりイングランドだけでなく世界中で刻々と経過していく戦況にファンは一喜一憂することになる。

 
 さて閑話休題。プレミアリーグ覇者の常連MUはどうなるのか、多くのファンはその動向に揺れている。現在リーグ8位に下がり来年のUEFAチャンピオンズリーグの出場権はなくなった。そしてその下部のリーグ、ヨーロッパリーグ出場はプレミア5位のスパーズにほぼ決まり、ヨーロッパ3部リーグともいえるカンファレンスリーグの出場も執筆時点で、あと2試合(対ニューカッスル戦とブライトン戦)に勝てなければここ数年での最悪の戦績のヨーロッパUEFAカップ不出場となることになる(その後、MUはニューカッスルに3−2で勝利し、希望をつなげた)。

 MUの27%の株式を買収、フットボール部門のトップになったラットクリフは多くの課題に直面し解決を迫られている。

*まず監督テン・ハグの更迭はあるのか、そして後任は誰に?
 まだThe FAカップの決勝戦出場が決まっており、あわよくば宿敵MCに勝ってカップを掲げることが出来るのか。負ければ当然更迭となることは必至。既に後任の噂に上がっているのが現イングランド監督サウスゲート、元フランス主将ジダンや、既にBミュンヘンの監督を更迭されることに決まっている元チェルシー監督トッシェルとか、はたまた元監督であったモウリーニョも噂に上がっている。しかし過去の栄光を勝ち得たMUの英国人監督はファーガソン以来いない。それだけにサポーターからは英国人監督でなければ高額選手をマネージできないのでは?という声あり、元ブライトン監督のポッターが有力視されているが、「Who will be?(誰を?)」

*高額移籍金を払い獲得したにもかかわらず結果を出していない選手を残留させるのか、売却移籍させるのか、特にブラジル人選手のセクハラ問題を起こしたアントニオ、ベテラン中盤のカセミロの放出は決定的である。さらにMU生え抜きのイングランド代表FWラッシュフォードもPSGへの移籍が噂されており、元キャプテンCBのマグアイアーもけがが多く、かつキャプテンの座を監督テン・ハグから剥奪された経緯もあり、移籍の対象となっている。そして現キャプテンのフェルナンデスも移籍願いをクラブへ出したともいわれており監督のみならず選手の総入れ替えもあるかもしれずお家騒動勃発かとみなされている。
(結局プロフットボールの見識は勝負に勝つことしかないのかもしれない)

*そして老朽化したスタジアムの改修に多額の費用が掛かるという問題が発生している。大雨が降ると屋根から土砂降りの水が観客席に流れ、また更衣室が雨漏れするという事態が起こっているため早急のスタジアム改修が迫られている。

*さらに1千人以上になった選手、役員、従業員のリストラができるのか。世界一のクラブとして定評のあったMUも今や、売上高でスペインのRマドリッド(1,371億円)、英国のMC(1,362億円)、フランスのPSG(1,323億円)、スペインのバロセロナ(1,320億円)の後塵を拝しランキングで5位の1,230億円に落ちてしまった。来シーズンヨーロッパ大会への参加資格無くなり更に経営的には苦しくなる可能性あり「これからどうするんや?!」との声が多くなった。

 この経営的見地からプレミアリーグは「Spending Cap」を導入する方向で検討に入った。このスキームは移籍金、人件費、代理人費用の総額がテレビ収入の4倍を限度とするもので、6月の年次総会で決議される。これにより2部から下部のリーグとの差を縮め、フットボール全体を底上げしようとする意図が見える。

 これからシーズンオフ、フットボールの世界も一旦休止し冷静に見直す機会かもしれない。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)

伊藤 庸夫