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一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『Wrexham FCが遂にイングランドプロリーグに昇格!』
23・05・18
英国ロンドンに『Lexham Gardens』という地域がある。『Lexham』を日本語表記にすると『レクサム』である。場所はロンドン中央部の区域としては英国一の高級住宅地『Kensington(ケンジントン)』、ハイドパークの南に位置する地域である。
たまたま筆者はこの地域に居住しており、歩いて10分でロンドン一の公園ハイドパークへよく散歩ジョッキングに行っていた。周囲8km、西側には『Kensington Palace』があり、数年前まではウイリアム皇太子が住んでいたロンドンっ子の憩いの公園でもある。
散歩してもよし、ランニングしてもよし、ピクニックしてもよし、一面芝の上で水着になって日光浴してもよしの大公園である。そして荷物をゴールに仕立てての草フットボールは至る所で行われている。特にゴールポストがあるわけではない。ただ広い草の公園を縦横無尽に使い、しかも無料。
「Hey! why not join us!」と声を掛けられる。英国人だけではなく、ギリシャ人、フランス人、イタリア人、インド人、アフリカ人世界中の移民居住者がそれぞれに三々五々集まりボールを追っている。まさに草フットボール広場の公園なのだ。そして途中「Thank you! Good bye! See you again!」と言っていつでもその場を離れる事自由なのだ。
その日本語発音の『レクサム』という地方都市がウエールズにもある。英字表記では『Lexham』ではなく『Wrexham』という町である。『Wrexham』も日本人の発音では『レクサム』となる。実際の発音はLとRとで異なるため、日本人には中々区別して発音できる人は少ない。
この『Wrexham』は『Wales』の北部に位置しイングランドのチェスターとも近く、チェスターFCとの闘いはクロスボーダー戦(イングランド対ウエールズの小型版)としても有名である。
それだけにこの『Wrexham』はウエールズフットボールのメッカとしてホームグランドとして多くの国際試合が行われているのだ。
地元クラブの名前は『Wrexham Association Football Club(Wrexham AFC−以下WAFCと呼ぶ)』、創立は1864年、世界のプロのフットボールクラブとしては3番目に古い歴史あるクラブである。
WAFCはもちろんWales FAの傘下のクラブである。しかし、歴史的地勢的にイングランドに近く、リーグ戦はイングランドと共通のリーグに加盟しておりWAFCは創立以来、長年イングランドのプロフットボールリーグ(当時のイングランドリーグ3部、4部)を上下するチームであった。
またWales Cupにもウエールズのクラブとして出場し、都合23回優勝の栄誉を得ている。そしてイングランドのThe FAカップでも1992年アーセナルに勝つというジャイアントキラーぶりも発揮しているのだ。イングランドとウエールズ2か国に所属する稀有なるクラブでもある。
しかし2004年度にクラブが経営破綻、低迷し2008年にはプロリーグからいわゆるノンリーグのConference League(プロリーグ4部制の下の下部リーグ)へ降格してしまった。
このローカル化したWAFCを立て直す救世主が現れたのである。その名はRyan・Reynolds(ライアン・レイノルズ)及びRob・McElhenny(ロブ・マケルヘニー)の2人である。
ライアンはカナダ系アメリカ人。職業は映画のプロデユーサーであり俳優でもある実業家。そしてロブはアメリカ人の俳優である。2020年11月、わずか2百万ポンド(3.3億円)でクラブを買収したのである(ちなみに現在クラブ売却で話題となっているマンチェスターユナイテッドの買収額は£5BN(8千250億円)である。Wrexham買収額の2千5百倍である)。
ふたりがなぜウエールズのWAFCを買収したのか? ライアンは「ふたりとも、Walesの文化と言語に興味を覚えたから」とインタビューで答えている。
そして今シーズンのイングランドプロリーグ4部(プレミア、チャンピオンズ、プロ1部、プロ2部)の下部リーグNational Leagueで見事優勝を飾ったのである。46試合34勝9分3敗:勝ち点111となり、2位ノッツカウンテイに勝ち点4差をつけて来年度からプロリーグ2部へ昇格を決めたのである。
平均1万人のサポーターが応援するこのWrexhamには国王チャールズ3世からシティの称号を与えられている。歴代英国皇太子はプリンス・オブ・ウエールズの称号を持っているからでもある。
更に上を目指し、プロリーグ1部へそしてチャンピオンズシップ、そしてプレミアを目指すことを目標に掲げている。
熱狂的な地元Wrexhamのサポーターに応援され、来年そしてその後WAFCはどう発展していくのか楽しみである。夢は必ず叶うということが現実となったのだ。
追記:ヨーロッパ各国のリーグ優勝が続いている。
* まずイングランドプレミアは、あと2〜3試合残し、Manchester City(MC)がEvertonに勝ち、2位アーセナルがブライトンに敗れたため、ほぼ優勝間違いない。
* スペインは、バルサがリーガ優勝を決めた。
* イタリアセリエAは、ナポリがマラドーナ在籍時以来の優勝を飾った。
* オランダは、フェイエノルドが優勝した。
* フランスリーグはPSGが優勝。
* ドイツブンデスリーグは、バイエルンミュンヘンがあと2試合残し、勝ち点68、2位ボルシア・ドルトムンドは勝ち点67なので、まだ決着はついていない。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−04:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫