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大津一貴のエンジョイフットボールライフ「2021年は超短期決戦!」

21・09・11
 上写真/ソーシャル・ディスタンシングを保って写真撮影するFCウランバートルスターティングメンバー(写真はモンゴルナショナルプレミアリーグ公式フェイスブックページより)


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。2021年8月から開幕したモンゴルリーグは、早くも前期リーグが終了しました。私が所属するFCウランバートルは前半戦を3位で折り返し、首位チームとの勝ち点差は3ポイントの位置に付けています。10月3日に最終節を予定している今年のリーグ戦は、果たしてどのような結果になるのでしょうか。私自身の近況を交えつつ、コロナ禍におけるモンゴルサッカーの現状をお伝えします。


●1年10か月振りのピッチ

 『2019年10月23日』

 この日付は、コロナ禍以前に私がサッカー選手としてプレーした最後の日です。その後、現在所属しているモンゴル1部リーグ・FCウランバートルとの契約を更新するも、2020年シーズンは新型コロナウイルスの影響によって現地に渡航することが出来ませんでした。その状況は、2021年になっても変わらず、ただただ時間が過ぎていく日々でした。

 そして2021年8月、モンゴル現地へようやく渡航することが出来、ピッチに戻ることが出来ました。その期間を月日に表すと、およそ1年10か月。プロサッカー選手の平均選手生命が「2−3年」、平均引退年齢が「25・26歳」と言われるなか、今年32歳を迎える私にとっては、とても難しい時間を過ごしてきました。

 FCウランバートルの一員として久々に挑む試合の前は、「緊張するかな?」、「久しぶりすぎて感動するのかな?」など、色々な状況を頭の中で想定していましたが、いざキックオフの笛が鳴ると「勝つために全力で戦おう」と、集中している自分の姿がありました。しっかりと落ち着いてプレーすることが出来、復帰戦は無事に勝利。試合後は少しホッとした気分にもなりました。

 サッカーが出来なかった期間、ここでは書ききれないほど様々なことがあったので、現役プレーヤーとしてのサッカーを辞める選択も考えました。ですが、「もう一度プレーしたい」という自分の気持ちに嘘をつくことが出来ず、想いのままに突き進み、再びプレーヤーとしてユニホームを着てプレーする日を迎えることが出来ました。サッカーを辞める選択をしなくて、本当に良かったと思います。

 今の私にとって、長い期間会えなかったチームメートと共にプレー出来ることは、試合の勝敗以上に嬉しいことです。「結果」が求められるプロサッカー選手としては、正しい考え方ではないのかもしれませんが、サッカーが出来るだけでも「幸せ」だと感じています。


 上写真/ボールをキープする大津選手


●リーグ戦は早くも後半戦へ

 コロナ禍の影響により、約2か月間の短期決戦である2021年シーズンのモンゴルリーグ。先月のコラムでもお伝えした通り、毎週2試合を行うスケジュールでリーグ戦を開催しており、8月中にシーズンの半分が終了しました。

 1部リーグは全10チームで構成されているので、前期9試合・後期9試合(全18試合)を中2日から3日で消化する必要があります。選手にとってはかなりハードなスケジュールで、前期を終えて各チームにはけがを抱える選手が出てきています。東京オリンピックのサッカー日本代表が、最後の試合(メキシコ戦)で失速してしまったのも、ある意味仕方ない部分があることを身を持って体感しております(正直、身体的には相当ハードです!)。

 ここで考えられるのは、控え選手の重要性。けがを抱えた主力選手の穴を埋める活躍を見せるようなチームの「総合力」が、リーグ戦の行方を左右するのではないかと、私は客観的に考えています。

 また、モンゴルでは9月から一気に寒さも襲ってきます。初雪が降る可能性も大いに考えられるので、日頃の体調管理や寒さ対策もリーグ戦を勝ち抜くための1つの鍵になるでしょう。さらに、現地ではコロナウイルスの流行も収まる気配が見えません。けがや体調管理を含めて、「健康にプレーする」ことが、大きなポイントになるでしょう。


●モンゴルリーグでのコロナ対策

 本来であれば、2021年4月からシーズンをスタートさせる予定だったモンゴルリーグですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今季は開催自体が危ぶまれておりました。しかし、モンゴルサッカー協会をはじめとする、リーグ運営者たちの努力によって8月からリーグ戦の開催が実現。公式戦を成立させるために、様々な感染予防対策が施されています。

 まず、試合に出場する選手は、「2回のワクチン摂取を終えていること」を条件としています。試合に出場するために必要な選手登録カードには、ワクチンを2回摂取した証明書を元に発行される「QRコード」が印字されており、試合会場に入場する際にワクチン摂取の有無を確認しています。

 また、ロッカールームに入場する前には、「検温」と「アルコール消毒」が実施されます。選手が出入りするスタジアムの玄関には係員が常駐しており、各選手の体温の記録を取った後、アルコール消毒を目視で確認しています。

 「ソーシャル・ディスタンシング」を確保する工夫も施されています。例えば、試合前の整列時には、選手同士が距離を空けて並びます。併せて、試合前に相手チームとのあいさつは実施されず、スターティング・メンバーの選手が横一列にそろった時点で、拍手をしてから試合前の撮影に移ります。写真を撮影する際も、選手同士は距離を空けて並ぶことになっています。

 さらに、リーグ戦はすべて「無観客試合」を実施しています。2021年9月初旬の時点で、モンゴル国内の感染者数は増加傾向である状況を踏まえると、おそらく今季のリーグ戦は無観客のまま実施されていくことでしょう。選手の立場としては、サポーターの前でプレー出来ないことは残念ですが、9月になってから1日あたり3000人以上の新規感染者数を記録している状況を考えると、無観客での実施は致し方ないと思います。


●まとめ

 コロナ禍の状況でも、様々な人たちの努力によって運営されている2021年のモンゴルリーグ。私自身も、まずはサッカーが出来る環境があることに感謝したいと思います。そして、チームのために結果を残せるよう、後半戦も引き続き全力を尽くしていきたいです。残念ながら、試合会場にはサポーターの姿が無い状況ですが、応援してくれている人に良い報告が出来るよう、残り1か月のシーズンを戦いたいと思います。


下写真/チームメートと喜ぶ左から2人目、14番の大津選手


◆大津一貴プロフィル◆
 少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。
2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)
2015年FCウランバートル(モンゴル)
2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)
2017年カンペーンペットFC(タイ)
2018年からは再度FCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
2019−21年もFCウランバートル所属
大津 一貴