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J1第7節(7月26日)、昨季J1優勝のマリノス相手に3−1で快勝

20・07・29
 上写真/前半開始早々の45秒、横浜FMはカウンターからの攻撃で、FW遠藤からのパスを受けたエジガル・ジュニオ(30番)がシュートするが、札幌GK菅野(1番)が上にはじき飛ばしてクリア。下ですべり込んでいるのはMF菅(4番)
 
 (写真はいずれも7月26日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)


「オシムほうふつ」選手と勉強会
ミシャもポリバレント選手で

 札幌ドームから笑顔がぞろぞろ「今日のビールはきっとうまいぞ」。新型コロナウイルスどこ吹く風の祝勝ムードが漂っていた。

 2020年明治安田生命J1第7節は7月26日、北海道コンサドーレ札幌の本拠地札幌ドームに横浜F・マリノスを迎えて、好天の午後1時過ぎから行われた。6試合を終えて札幌は8位、マリノスは昨年優勝チームには不足だらけの11位。開始15分でマリノスが1点を先取したが、1分後には同点、さらに札幌が加点。後半にもコンサドーレの新加入選手がゴールゲット。3−1の快勝だった。

 元日本代表のイビチャ・オシム監督の「オールラウンドプレーヤー」の「ポリバレント」(複数)の必要性を説いていたという。「ハイプレス」は、いち早くペトロビッチ監督が、2019年からコンサドーレの看板としてきたが、もう一つの課題、選手独特の「個性ではなく、複数のプレーが出来ているのに生かされていない」点を指摘、このゲームに展開してみた。

 試合の方は、ドームの中、気温24.2度、湿度58パーセント。無言の観客3千305人。レフェリーは国際審判でプロ契約をしている荒木友輔主審(34=東京都出身)で午後1時8分に札幌の荒野拓馬のキックオフで始まった。

 ドームのスクリーンに映し出されたコンサドーレにメンバーはGK菅野孝憲。3バックは進藤亮佑−宮澤裕樹−高嶺朋樹。ここからがペトロビッチ監督の「今日のポリバレント」の始まり。MFのミッドフィルダーが7人。いつものFWジェイの名前がない。7番ルーカス・フェルナンデス、23番中野嘉大、8番深井一希、4番菅大輝、27番荒野拓馬、14番駒井善成、18番チャナティップの全てがMF。キックオフが荒野だからチャナティップと駒井が3トップ。ルーカスと菅が両サイドWB。中野と深井がボランチ役だろう。こう決めつけると愛称ミシャも黙っていないだろう。

 普段の布陣だと3−4−3で、7人はそれぞれの基本ポジションプレーの他に「何かをゲーム展開に入れてみよう」。最近の駒井に「オールラウンドプレーヤーの片りんが見えて期待していた」サポーターも多くなってきた。チャナティップだって、菅だって「得点を挙げたFWプレーヤーだ」。

 図星だった。15分にマリノス・天野純に先制されると1分後の16分、この日トップ下に入った駒井がJ1の浦和レッズから札幌に来て3年、この日J1初得点を挙げた。オールラウンドプレーヤーとして目を付けて浦和から一緒に来た「ブラボー」父さんもさぞ満足だったろう。

 札幌の2点目は、レッドカード(18日対ベガルタ仙台戦)を受けた荒野だった。これもミシャ采配に「おつりがくるほどの見せ場」。仙台戦で10人で戦ってくれた味方への「お礼」、さらにDFからMFそして、この日はチャナティップからのパスを受けゴール。逆転した。試合後のコメントでは、「これで仙台戦の退場が帳消しになるわけでないので、これを継続してやっていきたい」と、一皮むけた言葉を残していた。

 前半17分にはマリノスのFW遠藤渓太(ドイツのチームからオファー)が、大津祐樹と交代した。


 【監督のハーフタイムコメント】
■札幌・ペトロビッチ監督のコメント
 「集中力を高くもって、慌てずにいこう」、「後半も運動量が大事になってくる」、「逆サイドをうまくつかっていこう」

■横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督のコメント
 「チャンスは作れている。チャンスをものにしよう。ゴール前で強く。責任感を持ってプレーしよう」


 後半は、両チームとも一進一退の攻防を続けるが、動いたのはマリノスで後半開始からDFティーラトンと小池龍太が交代した。その後11分FWエジガル・ジュニオとオナイウ阿道、MF喜田拓也と仙頭啓矢が交代した。

 札幌も疲労が見え始めた深井に代えて20分キム・ミンテを入れて、守りを固めた。31分にはトップにジェイを入れるためチャナティップを。ルーカスのところに白井康介を。DF高嶺とMF金子拓郎との3枚交代をやってのけた。

 札幌はジェイをターゲットに左右にボールを散らして、さらにジェイのスルーパスなどで相手を揺さぶった。中央に集中する中で、マークがあまくなった。40分過ぎマリノスの必死の反撃。焦る場面が多く、GK菅野に直接ボールが入る。右の進藤―白井が来たボールをさばく。ジェイ狙いのボールが中央ライン付近で相手DFに。荒野が競り合い、相手DFはヘディングで返そうとするが、このボールが荒野に渡る。ドリブルで突破、相手GKと向き合う。瞬間に荒野がバックパス。後ろから走り込んだ金子がGKのいないゴールに流し込み3点目。荒野が最後まで走り続けた「大きなご褒美」が1得点1アシストと勝利につながった。

 次の明治安田生命J1リーグ第8節は、8月2日午後2時から札幌ドームで北海道コンサドーレ札幌8位と9位のヴィッセル神戸が対戦する(2018年からペトロビッチ監督からの対戦成績は、3勝1敗。ドームでは負け無し)。


 上写真/前半15分、横浜FMのMF天野(39番)がFW水沼からのパスをゴール右に決めて先制する。札幌GK菅野(1番)、中央はMF深井(8番)


 上写真/前半16分、札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)が右サイドを駆け上がってボールをキープ、駒井の抜け出しを見て横浜FMのDFティーラトン(5番)、畠中(左端)のマークをかわし、右足のアウトで絶妙のスルーパス。駒井の同点弾を呼ぶ


 上:左側写真/前半16分、札幌MF駒井(14番)がルーカス・フェルナンデスのパスを豪快に決めてガッツポーズ、なんとJ1では初ゴールという。手前は悔しがる横浜FMのGK梶川(21番)、右DF畠中

 上:右側写真/前半16分、J1での初ゴールとなる同点弾を決めた札幌MF駒井(14番)がチームメイトの祝福を受ける、何だか本人がビックリしているような表情に見える



 上写真/前半18分、札幌MFチャナティップ(18番)がゴール前でボールをキープ、横浜FMのGK梶川を引っ張り出し、この後、体を反転させ逆転弾を決めた荒野(27番)につなげる。左端横浜FMのMF扇原(6番)


 上写真/前半18分、逆転ゴールを決めた札幌MF荒野(27番)が、チームメイトから手荒い祝福を受けた。左からMFルーカス・フェルナンデス(7番)、駒井(14番)、深井(荒野の後方)、菅(4番)、DF進藤(3番)、MF宮澤、高嶺、左端横浜FMのGK梶川


 上:左側写真/後半44分、札幌DF金子(30番)が荒野の絶妙なバックパスを受けて、ダメ押し点となるリーグ戦初ゴールを決める。金子の足元に横浜FMのGK梶川

上:右側写真/後半44分、大卒ルーキーの札幌DF金子(30番)が嬉しいリーグ戦初ゴールを決め、同じくJ1リーグ初ゴールとなる同点弾を決めた駒井(14番)と喜びを分かち合う。中央横浜FMのFWオナイウ(45番)の背中が泣いている


 上写真/後半追加タイム4分、横浜FMの反撃をヘッドではね返す札幌DF進藤(3番)、その左キム・ミンテ(20番)、白井(19番)は途中出場し体をはった


 上写真/昨年の覇者横浜FMを3−1で下しベンチの選手たちとスタンドのサポーターの拍手に迎えられる札幌の選手たち


 上:左側写真/後半31分、これから投入するDF金子(30番)、MF白井(19番)に指示を与える札幌のペトロビッチ監督
 
 上:右側写真/後半24分、給水する横浜FMのMF天野(39番)、DF伊藤(15番)、小池(25番)の間で腕組みして考え込む横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「マリノスとの対戦は打ち合いになることが多い。洗練されたパスサッカーの攻撃力のあるチーム。それに対してわれわれもリスクを冒して戦い、ポリバレントな選手を起用した中で自分たちの狙いであるパスサッカーをやろうとした。今日に関しては1対1の場面が多くなり、選手たちがそこで勝ってくれた。試合全体を振り返っても、勝利に値するゲームができたと思います」

(『ゼロトップ』のような布陣だったが―)
 「サッカーは医学と同様に進歩していく。イメージしてほしいのは1974年のアヤックス。全員の選手がどこのポジションをやっても、問題なくプレーできる。それが私の理想であり、哲学である。これが次のトレンドになると思っているし、それを狙っている。私のパスサッカーはモビリティーのある選手が多くいるほど生きると思う。今季はそういった戦い方が増えていくと思います。今日の選手たちが見せたサッカーはメディアの方にも宿題を出したつもりです。サッカーの見方というものも変わるかもしれません」


■横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督のコメント
 「本当に悔しい結果になってしまいました。自分たちにミスが多く、良いゲームでもありませんでした。勝点3を取ろうという意識で札幌の方が戦った試合でした」

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影