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J1第33節(11月30日)、アウエー最終戦。J1残留を懸けた鳥栖に勝利

19・12・02
“御者”は間違いなく選手を操った

 最後はホームでカップ戦のお返し

 北海道コンサドーレ札幌は、勝てば残留が決まるサガン鳥栖のホームでプレッシャーのかかった戦いを見事に勝ち取った。ペトロビッチ監督は「ここで連敗すると今季積み上げたものを無くす」と、選手たちを鼓舞し、勝ちに出た。見事だった先制点と、最後の締めは、この日を待ちわびた鳥栖ファンを涙も出ないほど「ガックリ」させた。

 明治安田生命J1リーグ第33節は11月30日午後2時から、鳥栖のホーム・駅前不動産スタジアムに1万7千512人の観衆を集めて行われた。収容人数2万4千余人のこじんまりとしたサッカー専用グラウンドは、ファンとピッチ上の選手の親近感が抜群。愛称ミシャも好きな競技場のひとつだ。天候は晴れ。気温24.7度、湿度20パーセントの好コンディション。岡部拓人主審(38=福島県出身)で、札幌・ジェイのキックオフで始まった。

 ジェイがトップの時はシャドーの右は鈴木武蔵、左チャナティップ。俗にいう3トップだが、武蔵がトップに入ると右にアンデルソン・ロペスが浮き気味に並ぶ。その裏(下)は白井康介が、攻撃的なウイングバック(WB)に入る。しかし、この日はルーカス・フェルナンデスが先発だ。

 ミシャ監督は、専守防衛を願って、左のWBは、U−21の日本代表・菅大輝を起用した。早めの決戦を仕掛けたのだろう。ボランチは名コンビになったキャプテン宮澤裕樹と深井一希。3バックは迷わず進藤亮佑−キム・ミンテ−福森晃斗。GKク・ソンユン。集大成した攻撃型の2乗の「人事」だろう。

 鳥栖も3−4−3の配置だが、トップの金崎夢生−豊田陽平に攻撃の中心イサック・クエンカが厚みをもたらす。DFは小林祐三−高橋祐治−高橋秀人で締める。

 先取点は4分、早い時間に決まった。札幌の左サイドの攻めが厚い。トップのジェイをターゲットにチャナティップ、菅が放り込む。その都度ジェイは丁寧なボールを深井、チャナティップに返し、センターに帰る。3度目の正直だっただろう。菅に大きく返した後、中央に走り込んだ。菅の左足がサイドラインからPKマーク辺りに絶妙なクロス。ブルーのユニホーム鳥栖のDF高橋祐(背番号3)と高橋秀(同36)の間にジェイの体が入り、ヘディングは見事ネットを揺らした。


■北海道コンサドーレ札幌のジェイ選手のコメント
 「自分がゴールを決めることができたのはうれしいですが、2連敗していたので、勝利できたことが一番大きいと思います。菅(大輝)が素晴らしいクロスを上げてくれて、俺は頭で合わせるだけでした。良いゴールでした。

 これはいつも菅に言っていることですが、「ワイドの選手はクロスを上げること。クロスが上がってそこにいなかったらそれは俺が悪い。俺がいるのにクロスを上げられなかったらそれは自分(菅)のミスだ」と。今日は完璧なクロスを上げてくれた。俺と目が合って、良いタイミングでクロスを入れてくれたのは良かった」


 その後も札幌の攻めは続き、菅のロングシュートや俊足の武蔵、ルーカスが個人技を披露、鳥栖ゴールに迫るが、得点無し。鳥栖も金崎、豊田が札幌ゴールに迫る、GKクの好捕に遭って得点は無かった。

 後半は、鳥栖がDF小林に代えてMF安庸佑を入れた。札幌は動きがなく攻守ともに引き気味。一進一退の攻防が続き、札幌は後半14分殊勲のジェイをA・ロペスに交代。鈴木と2トップ気味の攻撃を仕組んだ。

 後半20分過ぎ、今度は鳥栖が金崎に代えて趙東建を前線に配置、得点を狙う。札幌は26分疲労が見え出したチャナティップに代え荒野拓馬。中央ラインを充実して、前がかりの鳥栖の攻撃を阻む。さらに40分菅から中野嘉大の交代も早めに済ませ、「隙あらば追加点を」が、見え始めた。

 アディショナルタイムは4分。鳥栖は延長1分、エースのクエンカに代えて、切り札の金森健志(鹿島から期限付き移籍)を投入。最後の決戦。

 そして試合を決めたのは札幌。延長4分、ルーカスが右ライン際からゴール前へのクロス。GK高丘陽平が出てきてはじいたボールをFW鈴木武蔵(森保JAPAN5試合出場)がゴールに流し込んだ。武蔵はJリーグ13点目。ベスト4だ。なおジェイは9点目。


■北海道コンサドーレ札幌の鈴木武蔵選手のコメント
 「後半、苦しい時間が続いていて、もう1点取らないとキツいなと思っていたので、もっと早めに取りたかった。ただ、後ろもしっかり耐えてくれて、ロングボールが多い中でも対応してくれていたので良かったと思います。でも、もっと早くに相手の息の根を止めるようなカウンターの精度もそうですし、ゲーム展開にできれば良かった。前節(磐田戦)もこうやって残留争いをしている相手に対してリズムをつかめずに先制されて苦しくなった。失点せずに進めることは意識していたし、それが今回無失点で終えられたのはポジティブな結果」


 この結果、札幌は2−0で勝利し勝ち点46になったが、前節から順位変わらず8位。一方の鳥栖は、勝ち点36のまま14位。ホームに駆け付けたサポーターの前でJ1残留を確定させることが出来なかった。


■サガン鳥栖の豊田陽平選手のコメント
 「(試合開始早々でビハインドを負う入りになったが?)チャンスはあったので、1失点は問題なかった。最後のところで仕留めるとか、仕留めるための精度が足りなかった。その中で2失点目を喫してしまった。挽回できるチャンスは数回あったので、そこまで悲観するというか、もちろん残留は1つの目標にしていたので残念ですが、トライした結果ですし、何もやらずにっていうところではないので、しっかり次につなげないといけない」


 次節のJ1リーグ最終戦(第34節)は12月7日午後2時から、札幌ドームで8位北海道コンサドーレ札幌と4位川崎フロンターレと対戦する。


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「まずは今日、素晴らしいスタジアムの雰囲気の中で試合ができたことをうれしく思います。やはりサッカー専用のスタジアム、そこに多くのサポーターが詰めかけた中で試合ができるのはわれわれにとっては大きな喜びです。

 鳥栖にとっては非常に難しいゲームだったと思います。勝利するか引き分けでポイントを取るかということが残留に求められるタスクの中で戦わなければいけないという非常にプレッシャーのある戦いだったと思います。ただ、反対にわれわれも上位を狙う順位でもなく、残留を争う順位でもない中で、目的意識を探すのが難しいゲームだったと思います。そういう意味でもわれわれは(前々節の)横浜FM戦、(前節の)磐田戦と連敗していたが、もしこの状況の中で3連敗することがあれば、自分たちが今季、積み上げてきた良いシーズンを自分たちで台無しにしてしまいかねないような結果になっていた。しっかりと自分たちの気持ちをもう一度強く持って、自分たちがやってきたことをしっかり出していこうと話をして今日の試合に臨みました。選手たちは立ち上がりからしっかりとゲームをコントロールして、勝利に値するゲームを見せてくれたのではないかなと思っています」


■サガン鳥栖の金明輝監督のコメント
 「まずは1年間ありがとうございました。どんなときもサポーターの皆さんが後押ししてくれたことが、すごく僕自身の力にもチームの力にもなった。この場を借りてお礼を申し上げたい。

 試合に関しては立ち上がり、先制点を相手に与えたことで少し相手の重心が下がって、攻撃の糸口がなかなか見えなかった。後半はメンバーを変更してある程度、形が見え始めたところで、選手たちも自信を持ってしっかりとゴールを目指す形ができた。1年間を通して、良いときもありましたけど、前半に先制点を取られてという状況が多かったので、そこは反省しないといけない。

 次の試合(リーグ最終戦)があるので、みんな顔を上げています。分かりやすい状況になったので、次の清水に勝って、また来年度もJ1でプレーできるよう必ず勝って帰ってきたい」
池田淳