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J1第31節(10月1日)、川崎相手に聖地・厚別で4−3の逆転勝利

22・10・05
 上:上段写真/前列左からMF小柏、ルーカス・フェルナンデス、FWガブリエル・シャビエル、MF駒井、荒野、後列左からGK菅野、DF田中駿(2番)、MF高嶺、青木、金子、DF岡村

 上:下段写真/前半25分、札幌MF荒野(27番)が負傷した痛さと悔しさに顔をしかめながら、「後は任せろ!」と言わんばかりの笑顔を見せるFW興梠(23番)と交代する、右FWガブリエル・シャビエル、中央奥にペトロビッチ監督


(写真は10月1日、札幌厚別公園競技場、撮影・石井一弘)



 苦手・川崎から1勝「聖地・厚別」に名残

  8日福岡戦・札幌ドームへ変更は誰の仕業


 札幌がJリーグに加盟した1998年は、川崎は富士通サッカー部。1999年にホームタウンを神奈川県川崎市として、Jリーグに加盟した。ホームグラウンドが、ラグビーで有名な「等々力陸上競技場」。これで整いました。

 コンサドーレ札幌と対戦し始めたのは1999年。互いにJ2リーグに所属し札幌はまだ「聖地・厚別」が主会場。室蘭・函館などとアウエーでリーグを戦っていたが、2002年日韓W杯が札幌での開催に合わせ札幌ドームが2001年開業。その後の対戦を見て、札幌開催分を集約すると(厚別と札幌ドーム)では、4分け9敗。2022年10月1日が初勝利。川崎フロンターレが、札幌の地で「初めてずたずたにやられた」といっても過言ではない。

 試合開始は16時03分。4基の照明塔に照明がつき、珍しく無風。バックスタンドの「掲揚塔」の3基の旗はだらりと垂れ下がる。こんな日は珍しい札幌厚別公園陸上競技場で明治安田生命J1リーグ第31節、北海道コンサドーレ札幌対川崎フロンターレの今季2戦目が行われた。初戦は6月18日J1第17節アウエーで2−5で川崎の勝ち。

 審判団はベテランの岡部拓人主審(40、福島県出身、国際審判は退いたもののJリーグは300試合出場が目標)。副審は木川田博信、淺田武士。第4の審判は清野裕介。VAR中村太(主審格)、AVAR五十嵐泰之。

 札幌厚別公園陸上競技場には9千774人の入場者。赤黒のコンサドーレ組がぐるりと場内を取り囲む中、西側のスタンド約百人のアウエー席には、富士通グループのブルーノの応援団約百人での賑わい。

 ミハイロ・ペトロビッチ監督(64、セルビア出身、オーストリア国籍)率いる札幌のスタメンは、キャプテン宮澤裕樹、CKとFKの名手・福森晃斗らを抜いた「苦肉の策」。フォーメーションは3−4−2−1の1トップ2シャドー。GK菅野孝憲、DF田中駿汰、岡村大八、高嶺朋樹、WB右に金子拓郎、左はルーカス・フェルナンデス、大切なかじ取り役は荒野拓馬、オールマイティーの駒井善成。2シャドーは小柏剛とこのところFWで活躍する青木亮太が前後左右をフォローする「シャドー役」。1トップはガブリエル・シャビエル。得点はシャビエルと小柏に任せ、左のルーカス・中央の青木・右の金子で押し上げ「ハイプレス」は5人。ブロック陣は荒野と・駒井と3バック。ミシャの理想とする「ハイライン・ハイプレス」の若返りイレブンが出来上がった。サブはGK大谷幸輝、DF西大伍、中村桐耶、MF田中宏武、FW興梠慎三、ミラン・トゥチッチ、キム・ゴンヒ。

 現在2位の川崎のスタメンは、GKチョン・ソンリョン、4バックは佐々木旭、ジェジエウ、車屋紳太郎、登里享平、ジョアン・シミッチ、ミッドフィルダーが脇坂泰斗、橘田健人、3トップは家長昭博、マルシーニョ、知念慶。サブはGK丹野研太、DF谷口彰悟、山根視来、MF瀬古樹、FW小林悠、遠野大弥、宮城天。札幌に在籍していたタイのチャナティップはサブからも外れている。

 キックオフは札幌で、キャプテンマークは札幌・荒野、川崎・脇坂。札幌は「負けられない」、川崎は「1位の横浜F・マリノスに離されたくない」。がっぷり四つの前半と見て取れたが川崎のJAPAN欧州遠征メンバーだった選手は「先発を控えていたようだ」。

 23分、荒野が足を押さえてピッチに座り込んだ。25分、荒野OUT興梠IN.キャプテンマークは駒井に。札幌ポジション取りにちょっとスキが―。26分、川崎が札幌陣内で得点を狙った縦パスが続く。28分、札幌ペナルティーエリア内に走りこんだ川崎の背番号8橘田が札幌DF岡村に倒されPKを獲得。

 30分、PKキッカーは川崎FW家長。左足で札幌GK菅野の左上ネット側を狙いゴールゲット。気を取り直した札幌は31分、相手陣内で「プレス展開」。一時は逆襲を食らうが33分、札幌の背番号9金子が川崎のパスをインターセプトしカウンターで仕掛ける。ボールは中央を走るMFルーカスを経由し左サイドペナルティーエリア内の興梠に。エリア内中央へ上げたボールは一度川崎DFに防がれるが、こぼれたボールをルーカスが右足で決め1−1の振り出しとする。

 35分、札幌DF田中駿にイエローカード(マルシーニョに危険なプレー)。ここから両チームに「エキサイティング」なプレー。37分、札幌MF青木が相手からボールを奪うと、左サイドのルーカスにパスし、ペナルティーエリア手前中央のシャビエルに渡す。左足で放ったボールはゴールネットに突き刺さりゴールかと思われたが、川崎DFライン上にいた札幌MF青木がシュートコースに入っていたため川崎GKのブラインドになったとしてオフサイド判定。岡部主審のVARチェック後も判定変わらず、1−1のまま39分、プレー再開。両軍ともプレーが「落ち着かない」。

 40分、自陣内でボールを奪った札幌はカウンター発動。FW小柏がキープし、FWシャビエルに預け、前を走るMFルーカスへ絶妙なパス。スピードを落とさずにペナルティーエリアへドリブル突破を試みたルーカスを川崎DF佐々木が倒しPK判定。

 41分、ボールサイドにはキッカーFW興梠が立っていた。右足でゴール左を狙い、川崎GKチョン・ソンリョンの逆をついた。2−1で札幌が逆転。

 これで興梠慎三(36、宮崎県出身、2005年鹿島アントラーズを振り出しに鹿島8年―浦和9年−札幌8か月)は現役選手としてJ1リーグ歴代単独2位の162得点を記録した(1位は大久保嘉人氏=40、福岡県出身、2001年セレッソ大阪入団、海外クラブや川崎などで活躍し2021年セレッソ大阪で引退=191得点。3位は佐藤寿人氏=40、埼玉県出身、ジェフユナイテッド市原、広島、名古屋などで活躍し2020年ジェフユナイテッド千葉で引退=161得点)。

 アディショナルタイムは5分あったが、札幌が2−1とリードのまま前半終了。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「守備の優先順位を考えよう」、「中途半端なプレーはしないこと。必ずやりきろう」、「ボールを支配して、必ず勝つぞ」

■川崎フロンターレの鬼木達監督のコメント
 「守備はコンパクトに連動すること」、「必要以上にスピードを上げず、慌てずにいこう」、「強気に続けて、絶対に逆転しよう」


 後半は、川崎キックオフ。交代は川崎DF佐々木OUT山根INから始まり、12分シミッチOUT小林IN、ジェジエウOUT谷口IN。さらに脇坂は交代しないがキャプテンマークを谷口に。不思議に思ったが、13分脇坂にイエローカード。監督の「ダメ出しか?」

 次のプレー15分、脇坂が札幌ゴール前へ突っ込む。小林らも加わってGK菅野の前で混戦。ボールがゴールラインを「越えたかどうか」。主審がVARの判断を待つ。19分になってやっと結論。川崎のゴールが認められ2−2の同点に追いついた。

 ここから川崎の主力、小林―家長のパス回しと動きが変わった。川崎の決定打が来そうだ。小林をケアすれば、家長へ。3点目はこんな雰囲気の中でやられた。「強い」。24分、小林がマルシーニョとのパス交換から右足でゴール左に放ったシュートがネットを揺らした。

 三度(みたび)VARとの交信。2−3で逆転。川崎の締めの交代が始まる。知念OUT遠野IN。札幌は33分に金子OUTキムIN。さらに川崎は5人目の交代。車屋OUT瀬古IN。この後札幌はCKを得るが「福森」は居ない。ルーカスがほとんど「ゴールの中央まで」がやっと。変化がない。

 だが、来たぞ38分。青木がドリブルで仕掛けルーカスへ。センタリングをシャビエルがバックヘッドでゴールを決めた。3−3の上出来の引き分けと思いきや、39分川崎の橘田が札幌FWシャビエルに後ろから強烈タックル。レッドカードで一発退場。アディショナルタイムは12分。50分には札幌の興梠OUT中村IN。

 このあたりからFWキム、後発の中村らが生き生き。不発だった小柏に「最後の力」が見られた。57分DF田中駿が敵陣中央にロングボール。大柄なキムが受けて、駆け抜ける中村をおとりにセンターへ。小柏が抜け出して左足でシュート。4−3の大逆転勝利は小柏の「休暇中の恩返し」。群馬から駆け付けた両親の前でヒーローインタビュー。何かやる男。何か持ってる男。ほめ過ぎかなー。

 シュート数は、札12−12川、CK札5−2川、FK札13−11川、PK札1−1川。

 明治安田生命J1リーグ第32節北海道コンサドーレ札幌VSアビスパ福岡戦は、10月8日午後2時から札幌ドームで行われる。


 上:上段写真/前半28分、川崎の攻撃でDF登里(2番)の絶妙なヒールパスを受けたMF橘田(登里の奥で倒れている)がペナルティーエリア内に突入、たまらず札幌DF岡村(50番)が倒してしまいPKを与える。左へMF駒井(14番)、GK菅野、左端MF高嶺(6番)、右端川崎MF脇坂(14番)


 上:下段写真/前半30分、川崎MF橘田が倒されて得たPKをFW家長(右端41番)が、GK菅野(左端)の動きを見てゴール右上に決め先制する。左へDF車屋(7番)、登里(2番)、札幌FWガブリエル・シャビエル(18番)


 上写真/前半33分、札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)が、左サイドからFW興梠のクロスを川崎DF車屋に当たってこぼれたボールを見逃さず、ゴール左へ蹴り込んで同点として吠える、右金子(9番)、後方で先制点を入れた川崎FW家長が悔しそう


 上:上段写真/前半41分、札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)がFWガブリエル・シャビエルのタテパスを受け、ペナルティーエリア内に入った所で川崎DF佐々木に倒されてPKを得る、右DF車屋(7番)

 上:下段写真/前半41分、札幌FW興梠(23番)がMFルーカス・フェルナンデスが得たPKを決めて逆転する、その後方川崎DFジェジエウ(4番)、左へ札幌MF高嶺(6番)、川崎MF脇坂、札幌MF小柏(19番)。興梠はこのゴールでJ1通算162点として歴代単独2位となった


■北海道コンサドーレ札幌の興梠慎三選手のコメント
 「川崎Fも優勝するために負けられない試合で、僕たちも残留のために落とせない試合。お互いが勝たなければいけない状況の中、難しい試合だったが勝って良かった。荒野(拓馬)のケガで前半から出場してのPKで、今季はチームとしてPKが入っていなかったので「今度は蹴ってくれ」と言われていたので、決められて良かった。残り試合はすべて勝つつもりでいるし、サポーターもそれを期待していると思う。4連勝できるようにやっていきたい。通算162点となり、名を刻めたことはうれしい。自分で仕掛けて得点するタイプではなく、パスを受けてシュートするタイプなので、これまで携わってくれた人たちに感謝したい」


 上:上段写真/後半15分、川崎の猛攻でゴール前混戦となりFW知念(20番)が同点ゴールを決めた、当初FW小林のゴールと思われていたが、長いVAR判定に結果、知念のゴールとなった

 上:中段写真/後半24分、川崎FW小林(左端)は自らドリブルで上がり、一旦左サイドのマルシーニョに出し、その折り返しを右足でゴール左に文句なしに決め逆転する、札幌GK菅野(右端)は一歩も動けず、札幌の選手、左からMF高嶺(6番)、11番は青木、ルーカス・フェルナンデス(7番)

 上:下段写真/後半24分、川崎FW小林に逆転ゴールを決められ、ガックリの札幌GK菅野(1番)とその手前MF高嶺。他の選手左から駒井(14番)、DF田中駿(2番)、右端MF青木(11番)


 上写真/後半38分、札幌FWガブリエル・シャビエル(18番)が同点ゴールを決めMF小柏(右)に祝福され笑顔を見せる、ルーカス・フェルナンデス(7番)も走り寄る、スタンドの観客もバンザイ


 上:上段写真/後半追加タイム12分、逆転の決勝ゴールを決め笑顔でゴール裏サポーターにアピールする札幌MF小柏

 上:下段写真/後半追加タイム12分、逆転の決勝ゴールを決めた札幌MF小柏(右から5人目)を囲み、もみくちゃにして大喜びする選手、コーチ、スタッフたち

■北海道コンサドーレ札幌の小柏剛選手のコメント
 「川崎Fも勝点が必要で、僕らも必要だった。熱い試合になった。その試合で最後、自分が得点して勝つことができたのは、本当にうれしく思っている。3−3になったときに、「もう1点いける」とチーム全体として思っていたと思う。それまで何度かチャンスがありながらも決め切れていなかったが、もう1本チャンスが必ずあると思っていたので、それをしっかり決めることができて良かった。今季はサポーターに悔しい思いをさせていて、それをまだ取り返せていないと思うので、残り試合、しっかり気を引き締めて戦っていきたい」


 上写真/後半追加タイム8分、川崎の攻撃をしのぎボールをキャッチして笑顔見せる札幌のGK菅野(中央)と悔しがる川崎FW小林、左は札幌MF青木(11番)


 上写真/後半追加タイム12分の逆転劇に「厚別が聖地であると勝利で証明しよう」の横断幕を掲げて喜ぶサポーターたちと、それを立派に証明した選手たちが一つになった。選手は左からGK菅野、MF青木、DF西、GK大谷、DF田中駿、MF駒井、MF田中宏、MF高嶺、DF中村


 上:上段写真/後半追加タイム4分、水をとる札幌のFWガブリエル・シャビエル(左)に指示を出すペトロビッチ監督

 上:下段写真/前半35分、1対1になった状況に選手たちに檄を飛ばす川崎の鬼木達監督


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント(一部抜粋)
 「非常にハードなゲームでした。やはり川崎Fは強いチームであり、両チームともに勝点が欲しい状況。お互いの気持ちがぶつかり合いました。選手たちは高いモチベーションで挑んでくれました。セレッソに勝ち、磐田に勝ち、横浜FMに引き分けた。自信を持って自分たちの戦いをプレーしてくれたと思います。スペクタクルで、観る人にとっては面白い試合だったと思います。これはサポーターがともに作り上げてくれた試合だと思いますし、私自身、誇りに思っています。

 私がノーマルではないように、選手たちもノーマルではないのでしょう。今日のような試合があれば、そうではない試合もある。今季は波のある戦いになっています。川崎に勝利できて勝点3が取れたことは素晴らしい結果だったが、われわれはまだ何も手にしていない。次も福岡との厳しい試合が待っている。まだまだ手放しで気持ちを緩めることはできない状況です」


■川崎フロンターレの鬼木達監督のコメント(一部抜粋)
 「前半に関して、攻守にバタバタしたところがあった。後半に入って、選手たちは自分たちのやるべきことを分かってくれたので、そういう意味でも逆転までいけたと思う。勝ち切るところにもってかないといけなかった。自分として、その仕事をやらないといけなかった」


池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影