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J1第21節(7月4日)、聖地厚別で徳島相手に1−0で勝利

21・07・11
 上写真/前半12分、華麗なステップを見せていた札幌MFチャナティップ(右)が、徳島DF福岡と競り合う、左奥MF岩尾(8番)


  (写真はいずれも7月4日、札幌厚別公園競技場、撮影・石井一弘)


 「駒井が空気投げ」で1得点

  ミシャ監督「三船十段知らない」


 縁の下の力持ち「駒井善成」が、虎の子の1得点をあげた。Jリーグの徳島ヴォルティスに勝った。徳島には、これで今季2連勝。5月9日のアウエーが2−1。7月4日のホーム「厚別運動公園競技場」(人は聖地と呼ぶ)は、1−0だった。

 この札幌の「得点がすごい」。本人は「敵ゴール前に突っ込んだ」。ディフェンスが2人とGKがいた。いつの間にか、「ゴール」。主審はVARを何度か確かめての「宣言」。しかし、テレビのインタビューで駒井は「僕は触っていなかった」と、語った。試合のアディショナルタイムは6分で終了した。訂正は「無かった」。

 この日の審判団はVAR審判を含め、6人の「判定団」。山本雄大主審(38、京都府出身=09年から主審)だった。

 7月4日午後1時8分、2021明治安田生命J1第21節北海道コンサドーレ札幌対徳島ヴォルティスの今季2度目の対戦が札幌市厚別公園競技場で行われた。観衆は4千444人で、今季初めての入り。アウエー応援席は入場禁止になっていた。好天に恵まれ気温24度、湿度40パーセント。絶好のコンディションながら東風が、やや強い。トスで勝った徳島が東側の追い風を受けてのスタート。

 札幌のメンバーは、前節からトップの荒野拓馬の代わりにけがで2週間のブランクがあった小柏剛が代わって入った。前節はアウエーの鹿島アントラーズ戦で0−4の大敗。「駒鼠のように走り回る小柏」に賭けたようだ。徳島は15位ながら「勝ち点」が欲しい位置。

 徳島も前節からの選手交代は2人で、4−2−3−1の「攻守のメリハリ」をはっきりした布陣。最近の5試合は札幌が3勝1分け1敗と好調。徳島は0勝2分け3敗と「どん底から這い上がりたい心境」。

 札幌はGK菅野孝憲、3バックは田中駿汰−キャプテン宮澤裕樹−福森晃斗。両ウィングバックは右ルーカス・フェルナンデス、左・青木亮太でボランチが駒井と高嶺朋樹。FWは小柏でシャドーに金子拓郎とチャナティップ。小柏のスピードを生かした「速攻」を期待した布陣で、「横より縦の突っ込み」を期待したい。

 徳島は今季からスペイン出身のダニエル・ポヤトス監督に代わり、「折角のJ1昇格」をものにしたいところだ。ブラジル、セルビア、アルゼンチンから「なにかを持った」選手がきた。さらにSSS、コンサドーレと進んだ札幌出身の藤田征也もおり、見どころの多いゲームになりそう。

 札幌のキックオフで始まり、やはり右側のルーカスが攻撃の口火になる。7分に最初のFKを得て福森がゴールを狙うが、枠を外れる。18分、ルーカスが左サイドの青木まで、長いボールを放つが、わずかに合わない。

 徳島は、風上からGK上福元直人のキッキングで両サイドから攻めるが、形にならない。17分FW垣田裕暉、21分DFジエゴにイエローカード。

 23分飲水タイムが終わると札幌の攻めが目立つ。シャドーに入っている金子がキープする回数が増え、ルーカスを含め、際どいシュート回数が増えるが、徳島守備陣のヘディングやキックで跳ね返される。41分福森にイエローカード。アディショナルタイムは3分。札幌が押し気味に前半を終わる。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「少しビルドアップが不安定になっている」、「周りを見て落ち着いてプレーしよう」、「ここからが勝負だギアを上げていこう」

■ヴォルティス徳島のダニエル・ポヤトス監督のコメント
「まずは中盤でボールを落ち着かせること」、「守備は連動していくこと」、「スペースを見つけてチャンスをつくりだそう」


 後半は徳島の右サイドDFジエゴと背番号22藤田征也が交代。今季、浦和レッズに加入した西大伍らと1年違いの「札幌出てから10年目?」。スタンドからは、「拍手」が沸いた。札幌ユース出身の征也と大伍と荒野は、2010年の1年だけ一緒、西は2006年から09年までだから、征也と大伍は4年間一緒だった。2人とも、最初の移動チームはアルビレックス新潟。2004年の「中越地震」の見舞いに翌05年にアルビレックスの社長(現・取締役会長)と当「北のサッカーアンビシャス」の柴田勗代表の「インタビュー」を記事にして「北国交流」を図った。なぜかしら「新潟」を目指す選手が多かった。

 横道にずれてしまった。試合の方は、サポーターのいる西向きの攻撃。ピッチには強い風が吹く。2分金子が浮き球でシュート、GK上福元が処理。4分ボランチの高嶺がMF岸本武流にレイトタックル。高嶺にイエローカード。14分から20分まで徳島は2組の交代(23分飲水タイム)。徳島は30分にも2組が交代した。この後、札幌は33分に3組の選手交代。ルーカスOUT岡村大八IN。高嶺OUT荒野IN、青木OUT菅IN。全く違うチームが戦っているような「選手交代」。38分引き気味のチャナティップから大柄なFWドゥグラス・オリヴェイラ(188センチ、88キロ)を入れた。

 ベンチ前のペトロビッチ監督と四方田HCと通訳兼コーチの杉浦大輔コーチの「会談成立」、アディショナルタイム+残り5分「得点狙いタイム」に入る。

 猛攻の始まりは40分の左CK。キッカーは福森。左足のクロスは中央で相手に当たって出て、今度は右CK。41分、福森のキックは相手選手にはじき出される。待っていたのは、左ウイングバックの菅。左足の強烈なシュートを放つが、ゴール右に外れた。

 試合を決めたのは43分、左サイドでDオリヴェイラが後ろにいた宮澤にパス。宮澤はペナルティエリアへボールを送り、走りこんだ菅がゴール前へ早いグラウンダークロスを蹴り込む。ボールは徳島GKと徳島DF2人の間に入り、飛び込んだ駒井はシュート態勢に。ゴール前は敵味方4人だけ。

 その瞬間、「まるで時間が止まった」感じでゴールネットが揺れた。私見・「駒井に当たって入った」と思った。

 ふと、講道館柔道の一人者・三船久蔵十段(1883年〜1965年81歳で没)の「空気投げ」を思い出した。小柄(159センチ55キロ)の体躯で、大男を投げ飛ばす。大男に背負い投げを食らうが、軽量の三船十段が、背中で2度ほど三船の体が動くと下の大男は上の三船十段の体を離し2、3回転して畳に這いつくばった。

 完全に相手の力を利用した勝ち方だった。終戦後の昭和30年ごろ、埼玉県浦和市の埼玉会館で見た「三船十段」の「空気投げ」だった。

 まさに、駒井の得点は「あの時の空気投げ」に似て、異なものであった。

 この試合の主審は、「オウンゴール」に訂正した。放映は2社ほどだったが、訂正は入らなかった。

 シュート数は、札11−徳3 CK札5−徳5 FK13−徳13 PKなし。


 上:上段写真/前半28分、徳島右CKからの攻撃でDF福岡(20番)と競り合う札幌DF福森(中央)、左へGK菅野、MF駒井(14番)、チャナティップ(18番)、右端高嶺(6番)、左端徳島FW垣田(19番)、背を向けているのはMF杉森(45番)

 上:下段写真/前半37分、徳島MFクリスティアン・バトッキオ(中央左)を囲むように守備する札幌の選手たち、左からMF宮澤(10番)、駒井、チャナティップ(18番)、高嶺、しかし守り切れず左サイド奥にパスを出される


 上:上段写真(連続1)/前半37分、徳島MF杉森(45番)が中央へ走りこむ岩尾へ絶妙のクロスを出す、札幌の選手は左からMF高嶺(6番)、DF福森、田中

 上:中段写真(連続2)/前半37分、徳島左サイドからMF杉森のクロスに岩尾(8番)が札幌MF宮澤をかわしてシュート、札幌GK菅野は「やられたー」と観念した様子

 上:下段写真(連続3)/前半37分、徳島MF岩尾のシュートに札幌GK菅野(左)も見送ることしか出来ずに失点を覚悟。その瞬間、全力(神出鬼没?の危機察知能力)で帰陣していた青木がゴールラインぎりぎりでクリア、窮地を救った

■北海道コンサドーレ札幌の青木亮太選手のコメント
 「前半に自分がゴール前でクリアをした場面があったが、押し込まれた中で、自分はマークする選手がいなかったので、ファーに来たらしっかりクリアしようと準備をしていました。ただし、後半に自分が得点出来そうなチャンスがあったのですが、それは流し込みたかった。そこについても準備が出来ていれば良かったと思うし、ああいうところでしっかり決められていれば、今日も苦しい試合でしたが、もっと良い形で勝てたと思う。今日は良い形で左サイドを崩せたわけではなかったので、今後は良い崩しが出来るようにやっていきたい」


 上写真/後半14分、札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)と徳島DF福岡(右)が競争、左奥MF金子(9番)


 上写真/後半15分、札幌MF金子(9番)、FW小柏(その右)、青木(28番)が徳島ゴール前に迫る。徳島の選手は左からMF岩尾(8番)、DFカカ、福岡、右端は後半から出場した元札幌のDF藤田征也(22番)


 上写真/後半35分、徳島DF藤田征也の中央右からのFKのボールに札幌MF荒野(27番)と徳島DFカカ(左端)が競り合う、右札幌DF田中(2番)、その左徳島FW垣田(19番)


 上:上段写真/後半43分、札幌MF菅(右)が左サイドから先制点を呼ぶ絶妙なクロスを入れ、徳島DF藤田(22番)と共にボールの行方を追う、左カカ(14番)

 上:下段写真/後半43分、札幌MF菅の左サイドからのクロスに駒井(中央)が徳島DF福岡(左)とMF岸本と競りながらゴール前に突入、岸本がクリアしたボールはDF福岡に当たりオウンゴールとなる


■北海道コンサドーレ札幌の菅大輝選手のコメント
 「試合を通してこちらが攻めることが出来ていたものの得点が取れていなかったので、自分が入ったことでゴールにつながるプレーを増やしたいと思ってピッチに入りました。ベンチから試合を見ているときに、小野(伸二)さんから「何かインパクトを残してこい」と言われていて、自分が得点することは出来ませんでしたが、得点につながるプレーが出来て良かったと思っています。ペナルティーエリア付近に入っていけていたので、後ろを考えるよりは、シュートなどを意識してプレーをしようと思ったので、それが得点につながって良かったと思います」


 上:上段写真/後半43分、札幌MF菅のクロスがオウンゴールを呼び、頭を抱える徳島DF福岡(左)と顔を覆うMF岸本(倒れている)、GK上福元(21番)はぶぜんとした表情、ゴールポストの奥でアシストした札幌MF菅と「触っていない」という駒井が抱き合って喜ぶ、35番はFW小柏

 上:下段写真/後半43分、札幌MF菅(4番)のクロスが先制となるオウンゴールを呼び、喜ぶ駒井(中央左)、菅の頭をなでるDF岡村、左端MF荒野(27番)がベンチ方向へ走り出す


 上:上段写真/1−0でからくも徳島を破って喜び合う札幌の選手たち、左からDF岡村(50番)、MF宮澤、ドウグラス・オリヴェイラ、DF柳、GK菅野、DF福森(5番)、MF荒野(27番)、DF田中、その奥MF金子、菅(4番)

 上:下段写真/徳島を破りサポーターへのあいさつに向かう札幌の選手たちには笑顔が目立つ、左からMF菅(4番)、荒野(27番)、小野、DF田中、MF金子(9番)、GK菅野(1番)、右端MF駒井(14番)


 上:左側写真/後半3分、徳島FW垣田が足首の負傷で試合が中断の間、大きなジェスチャーで選手に指示を出す札幌のペトロビッチ監督

 上:右側写真/後半31分、選手を鼓舞する徳島のダニエル・ボヤトス監督


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント(一部抜粋)
 「厳しい試合になると思っていたが、実際に難しかった。前半は何度かチャンスを作りながらも得点出来ず折り返した。向かい風の中で戦った前半は影響があったが、後半は追い風になってプレッシャーが掛けやすくなり、ビルドアップも落ち着いてやれた。ホームで戦う我々の、何がなんでも勝利をしたいという選手たちの気持ちが得点につながったと思います」


■ヴォルティス徳島のダニエル・ポヤトス監督のコメント(一部抜粋)
 「難しい試合でした。全体的にきっ抗した試合でしたが、前半終了間際に少しリズムが来た中でチャンスを決め切ることが出来ずに、逆に彼らは決め切った試合になりました」


池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影