サッカーアラカルチョ

一覧に戻る

ヨーロッパサッカー回廊『スポーツ・ポリテイクス(スポーツ政治力)』

09・10・11
 2016年のオリンピック開催地にブラジルのリオ・デ・ジャネイロが選ばれた。開催地候補の一つとして立候補していた東京は2回目の投票で敗退した。東京が何故負けたのかは明白である。言葉で言えば世界のインターナショナル・スポーツ・ポリテイクス(国際スポーツ政治力)に無力であった事に尽きるのである。
 
 何故ワールドカップ2002年の共同開催の教訓を生かせなかったのか。2002年のワールドカップ開催地は1996年5月30日FIFAの理事会で投票はせず、FIFAの提示した「日韓共同開催」をJFAが受け、決定された。
 
 もしその時、決戦投票を行っていたらどうなっていたのであろうか。日本では経済力、スタジアム計画、スポーツイベント実行力で韓国を圧倒しているから日本の単独開催は当然であろうと楽観していたのではないか。しかし結果は投票せず共同開催となった。多分投票したら韓国の単独開催となると読んだFIFAの助け舟が共同開催となったのである。
 
 当時韓国は現代コンチェルンのチョン・モンジュ氏がFIFA副会長として、その財力と国際人としての人脈でFIFAの23名の理事の囲い込みを図り、南米票3、アフリカ票3、ヨーロッパ票5、そしてアジア票2、そしていつも勝ち馬に乗るといわれる中南米票を勝ち取り14〜15票持っていたといわれている。何故票が取れたのか、一説には利権もあると指摘されている。現代重工の販売権を与えたとかである。
 
 このような国際的な競争においてはただ単なるスポーツにおけるメリットだけでは勝てない。資金力と政治力そして国際ビジネス(通訳無しで交渉できる)に長け、人間的にも魅力あるトップリーダーが必要であることが必須条件である。
 
 東京が破れたのも果たして東京にそのような仁が居たのか、結果を見れば居なかったという結論になるのであろう。
 
 さて2012年はロンドンオリンピック、14年ブラジルワールドカップ、16年リオ・オリンピックが決まった。では2018年、22年のワールドカップはどこになるのか。巷の賭けでは18年はイングランドが有力とされている。FIFAは今後のワールドカップのメーンスタジアムは9万人以上であるべしとしている(日本は東京オリンピックが実現せず現段階では横浜の72,000人が最大)。イングランドはウエンブレイを改修し9万人の近代的なスタジアムを擁しており、かつ経済的にも質的にも世界一のプレミアリーグが存在、また66年以来52年振りのフットボール母国での大会として最有力視されている。
 
 しかるにまたまた、トリニダード・トバゴのFIFA副会長、ジャック・ワーナー氏が「イングランドのワールドカップ推進者(The FAの会長トリスマン氏を中心に組織)は軽量級(Lightweight)である」とコメントし「ヨーロッパならスペインかポルトガルまたはロシアが有力」とコメント、英国の関係者は一斉に軽量級という言葉に反発しだした。更にワーナー氏は「ベッカムとかクイーンがキャンペナーなら話を聞くが・・・」「セバスチャン・コー(英国の2012年オリンピックのキャンペンナー)とかベッケンバウアー(ドイツ)が来ればFIFAの理事は喜んで会うだろうが・・・」とあたかも現在のトリスマン会長を揶揄している。
 
 もう少し政治的にかつ利権を持った仁が取り仕切ったらという警告ではないかと英国ジャーナリストは分析している。
 
 ともあれこの種のキャンペーンには顔(スポーツエリート)と力(資金力、政治力)が絶対的に必要であり、Internationalなという形容詞は不可欠な要素である。東京オリンピック開催失敗を踏まえ、経済的にもスタジアムの要件からもそして、スポーツ政治力からして、日本のワールドカップ2018、22年開催は可能なのだろうか。
 
伊藤 庸夫