サッカーアラカルチョ
一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『今後のW杯の行方は? 欧州なしで開催するのか?』
26・08・17
7月19日、2026北中米ワールドカップは決勝に残ったスペイン対アルゼンチン戦がニューヨーク郊外ニューヨーク・ニュージャージースタジアムで行われ幕を下ろした。
結果は皆様ご承知のごとく、激闘というよりつかみ合い殴り合いの村同士が対抗する古代フットボールの再来を思わせる展開の中、冷静なスペインが延長106分にフェラン・トーレスのシュートが決まり1−0で勝利。前回カタール大会の覇者アルゼンチンに有無を言わせずFIFAワールドカップトロフィー(旧称ジュール・リメ杯)を獲得した。
この試合はキックオフからアルゼンチン選手がスペイン選手に強烈なファールを重ねエンゾー・フェルナンデスのイエローカード2枚でレッドカードが提示され退場。更にロメロ、マルチネス、マックアリスター、パレデス、そして監督スカローニの計7枚のイエローが出され「Dirty Argentina!」の汚名が課せられるほどであった。
更に、試合後にもアルゼンチンのコーチも加わりスペイン選手へ暴行を加えるなどもあり荒れた決勝戦になった。FIFAの規律委員会はこれらの行為に対し処分をすると宣言していたが、1か月たった現在でもまだ『おとがめなし』の状況である。
この決勝戦に先立ち、3位決定戦がマイアミ・スタジアムで行われ、準決勝戦でスペインに0−2と敗れたフランスと、アルゼンチンに先行しながら1−2と逆転負けしたイングランドと、いわば敗者同士の緊張感の無い試合が行われた。
しかしこの試合こそ真のワールドカップ戦ともいうべき内容であったといえよう。結果は、前半圧倒的に攻めたイングランドが3分ライス(アーセナル)、18分CKからのコンサ(アストンヴィラ)のヘディングシュート、37分サカ(アーセナル)、更に45+1分にサカがこの試合2点目をラッシュフォード(マンチェスターユナイテッド)のアシストでゴール、前半を4−0とフランスを圧倒した。
フランス監督デシャンはこの試合で代表監督を辞任することを明言していたため、このまま引き下がれないと後半に入り、センターフォワード、エムバペ(レアルマドリッド)が48分、そして54分にバルコラ(パリ・サンジェルマン)が2点目を返し4−2とし、66分に再びエムバペがオリーセ(バイエルン・ミュンヘン)のパスからシュートを決め4−3と迫り64,478人の大観衆を沸かした。
しかし、イングランドはサカがPKを決め5−3とし、ほぼ3位の座を確保したかに見えたが、90+6分にデンベレ(パリ・サンジェルマン)が決め5−4と迫り大観衆はフランスを後押ししたが、90+8分にイングランド将来のキャプテン候補ベリンガム(レアルマドリッド)が独走し、フランスディフェンス陣をダミーでかわし勝利の得点を挙げ、6−4とし、イングランドは3位確保。合計10点のスペクタクルな試合を終えた。次代のヒーローたるエムバペとベリンガムの競演のエキサイテイングな試合は今大会の華ともいえる試合であった。
一方、アメリカのトランプ大統領とFIFA会長インファンチーノとの蜜月の大会は終了したがその直後世界のフットボール界を揺るがせる大問題が発生した。
1)インファンチーノ会長が独断でFIFAのワールドカップW杯(男女シニア)及びU20 W杯(男女)、並びにFIFA クラブW杯の3大W杯の主催権の20%を新設の『FIFA Forward Enterprice(FFE)』に投資し、FIFAの子会社として設立させ、W杯ブランドの営業権を拡大する案を提示したのである。しかもその代表出資者にトランプ大統領の娘の義弟ジョシュア・クシュナー氏を充てFFEによるW杯ブランドを拡大する案を提示したのだ。
2)この案が英国経済新聞Financial Timesに掲載され、あっというまに世界中のフットボール界に激震が起こったのである。その設立資金には10Billionドル=1.6兆円をあて、上げた利益をFIFA211加盟国FAへ1か国当たり20百万ドル=30億円を還元するといものであった。
3)この案が発表されるや否や世界のフットボール協会は一斉に反対の意を示し、特に一番先に反応したのはUEFA(ヨーロッパフットボール連盟)である。FIFA加盟国のうち55か国加盟のUEFAは名実ともに世界のフットボールの根源として『紳士のスポーツ、公正な運営、社会との綿密なコーデイネーション、ルールの順守、倫理感ある英国起源のスポーツ』組織であり、独立した私的企業体ではないとこのFFEの正しくアメリカンスタイルの私企業の利益優先の組織とは相いれない」としFIFA案に反対を表明した。
4)この処置に対し、UEFA加盟国55か国は
*FFEの構想に反対
*並びにFIFA会長インファンチーノの不信任案と更迭を宣言
*今後のFIFA大会(W杯、クラブW杯)への参加拒否
を提唱した。UEFAは加盟国55か国がこの案に賛同している。
5)一方、世界的に見ればインファンチーノ案に反対している協会はCONCACAF(北中米カリブ海連盟:41か国)並びにAFC(アジア連盟:47か国)であり、その総数はFIFAの総数211か国の143か国に上っている。しかし2002年の日韓共同開催時の最終的票読みでは抜け駆け国も多発したこともあり予断を許さない状況となっている。
現実にはAFCアジア連盟でも既にインドネシア、モンゴル、ブータン、レバノン、UAE,カタール、クウエート、フィリピン、スリランカがインファンチーノ信任を表明。CONCACAFでもメキシコが現会長支持と必ずしも一筋縄で測れないフットボール業界であり今後の推移をみる必要ある。
6)8月5日、FIFAはモロッコで理事の緊急会合を開き、とりあえず彼が提示したFFEを取り下げた。その結果とりあえず会長職を保ったが参加したのはFIFA委員だけであり世界の相違を得たわけではない。
インファンチーノの去就は、次期FIFA総会にて決定されるがそれは2027年3月18日にモロッコのラバトで開かれ、新会長が誕生するのか注目である。ただ今日から来年3月までにもFIFAの大会はある。
FIFAカレンダーとしては9月5日より女子U20のW杯がポーランドで行われる。それまでに果たしてすべてのFIFA大会をインファンチーノ会長が辞任しない限り参加しないと表明しているUEFAがこのW杯をボイコットするのか、まだ不明であり近々その結果が出てくるものと思われる。
日本の女子もエントリーされているがJFAの態度はどうなのであろうか?
スポーツ政治に疎い日本の出方もAFCの中での立ち位置、FIFAでの発言力(対AFCも含めて)も含めて注目されるがどうであろうか?
そして今後の世界のフットボール界の動向にも注目したい。8月はヨーロッパ各国のFootball Seasonが開幕される。
珍しく英国も毎日30度前後。雨無し英国の38度の高温で枯れ果て茶色になっている芝で開幕か??
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−94:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫











