サッカーアラカルチョ

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シリアで教えある記 『怖い話』

09・08・11
 「パスを出すときは、出し手も受け手も声なりジェスチャーなり、目で合図するなりしてタイミングを計ろう!何にもしないで勝手に蹴るってのだけはやめてね〜」
「パスはバシッと強く蹴ろう!」
 
 シリアから戻ってきて2ヵ月ほどが経った。今ではすっかり日本に溶け込み(!?)シリアに行く前の生活に戻って何の違和感もない。 はず・・・だと思っていた。
 
 冒頭のセリフは、今回ひょんなことからたまたま指導することになったある中学校サッカー部の1年生のミニゲームに交じりながら連発して発していた私のセリフである。
始まってからビックリしたのが、誰も声を発しない。「バシッ ザザザザー」とボールを蹴る音と足音しか聞こえない!(↓気持ちワル↓)
 当然、ミスパスがつづく・・・というか、そもそも、出し手と受け手が何らかのコミュニケーションを取り、出されるのをパスの定義とするのなら、彼らが黙って何となく蹴っているのは、最早『パス』とは呼べない。
 
 だから、そんな『パスのようなもの』は当然、味方に渡ることはなく同様に相手チームもまた同じ要領!?で『パスみたいの』を出すからお互いに通るわけもない。
 こうやって、誰のボールになることもないスーパールーズボールがただ偶然にゴールの方に行ったときだけシュートチャンスになるが、これまたちっともゴールに吸い込まれることはない。
 
 その後も、私の声だけが響き渡り、何とな〜く蹴りあう綱渡りのような展開がつづくなか、私にかなりの時差とズレを伴ったノールックパスが飛んできた! しかも、彼にはその前のタイミングで声をかけたにもかかわらず残念ながらシカト。。。ドリブル突破を試みようとしたのかどうかは知らないけれど、こっちに出す素振りは一切なかった。その一瞬遅れで、ズレズレのよわ〜い『パスみたいの』がこっちに向かって飛んできた。勿論、ボールは私のところまで届くはずもなく虚しくも相手にこずかれてしまった。
 
 私はアラビア語でしゃべっていないのに、なんで通じないの!?なんで、コミュニケーション取ってくれないの!?
 最後にみんなを集めて再度コミュニケーションをとることの大切さを話したけれど、わかってくれたかな〜。
 今回アラビア語は全く使っていない! はず・・・
もしかしたら日本人の気づきのレベルが低下しているのかも・・・。
背筋も凍りつく『怖い話』でした・・・
ロベルト・屋良っティーニ