サッカーアラカルチョ

一覧に戻る

クラブワールドカップから世界の技を!

09・01・17
 期待通りのマンチェスター・ユナイテッド優勝に沸いた「FIFAクラブワールドカップジャパン2008」。アジア代表のガンバ大阪も3位に入り、日本のサッカーファンも大いに喜んだ。
 
 今回は、準決勝ガンバ対マンUの一戦から、日頃サッカーのレベルアップに励む子どもたちに、参考となるプレーを紹介したい。
 
 試合は、前半マンU2−0ガンバ、後半3−3の計5−3という打ち合いでマンUが勝利した。注目したいのは、勝負がまだ決まっていなかった前半28分と45分(ロスタイム)のマンUのゴールシーン。2つのゴールともCKからヘディングでのゴールとなったが、その一瞬を振り返りたい。
 
 まず、1点目はマンUのヴィディッチがガンバの山口に競り勝って決めたシーン。マークをしていた山口は国内では有数のヘディングの強さを誇る選手だが、ヴィディッチに自分の間合いで完全にミートされてしまった。
 
 次に、2点目のC・ロナウドのヘディングでのゴールシーン。この時のマーカーは、国内でのボール奪取能力が非常に高いガンバの明神。しかし、こちらもロナウドにヘディングで完璧に合わせられた。
 
 事前のポジショニングはもちろんだが、ここでは、密着した相手とのより瞬間的なプレーに着目したい。それは、世界の一流プレーヤーが意識せずとも身に付けている、巧みな腕の使い方だ。
 
 この2つのゴールシーンでは、詰め寄るマーカーに対し、腕で相手のバランスをほんの一瞬崩してから、自分の間合いでヘディングを行っている。この腕の使い方は、ファールにならない非常に巧みなアームワークだった。しかし、子どもたちに、決して間違えて欲しくないのは、腕を使ったファール(プッシングなど)とは違うということ。
 
 これはガンバの選手たちも国内やアジアのレベルでは味わえない、一瞬で勝負を決める世界トップレベルの駆け引きだったのだろう。
 
 その一方で、決勝戦での南米代表リガ・デ・キトとの試合も興味深かった。同じようなヘディングでの競り合いのシーン。バランスを崩したのはそのロナウドだった。ここでも南米選手特有の駆け引きの上手さを見ることができた。
 
 腕だけの使い方ではないが、小柄なマンUのテベス(アルゼンチン代表)のボールキープの仕方も見事。また、マンUのパク・チ・ソンもJリーグ所属時にくらべ、格段に腕の使い方、間合いの作り方が巧みになっていた。これは、同じアジア人として、テベス以上に参考にすべきであろう。
 
 このことからも、日本が世界と戦うことを視野に入れていく場合、もはやフィジカルの差を敗因の上位に挙げることはできないのではないか。
 
 それよりも、まずは国内で見本となるべきJリーグで、1対1の競り合いの強さを引き出すためのジャッジングも必要であり、底辺となる育成の現場でも足技だけが1対1ではないことも指導する必要があるだろう。
矢田 からす