サッカーアラカルチョ
一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『コロナ禍を超えた新シーズン開幕の話題』
22・08・14
英国では7月30日、満員のウエンブレースタジアムで前年度リーグ優勝のマンチェスターシテイ(MC)とFAカップ優勝のリバプールが開幕の前哨戦として「コミュニティ・シールド」戦が行われた。コロナ禍を乗り越えたシーズンの幕開けである。結果はリバプールが3−1とMCを圧倒してシールド(盾)を獲得した。
翌日の31日にも、ウエンブレースタジアムに87,192人の大観衆を集め、1966年以来のイングランド対ドイツの「女子ユーロ2022」の決勝が行われた。このUEFA EURO杯は1968年W杯イングランド大会での決勝を思い起こすエポックでもあった。男子がW杯優勝して以来、タイトルに縁がないイングランドが、ウエンブレイの地で女子が宿敵ドイツに2−1と勝利したのである。男子がダメなら女子もあるという『ジョンブル=イングリッシュ(英国人の誇り)』の面目躍如の一戦であった。今年秋に行われる男子カタールW杯にイングランドが優勝すれば、正しく男女共にフットボールでの世界の覇者になると期待されている。
そして8月5日、アーセナル対クリスタルパレス戦がプレミアの開幕試合となった。結果はアーセナルがアウエーで2−0の勝利をおさめ、昨シーズン開幕時低迷していた悪夢を払拭する試合であった。
注目度の強いクラブ、移籍選手の話題、トピックスを集めてみよう。
1)マンチェスターユナイテッド(MU)
新監督テン・ハフが就任し、新たなチーム作りを目指したが、初戦昨シーズンに0−4と敗れたブライトンとホームで対戦、今年は期待するサポーターがオールドトラフォードへ詰めかけたが、結果は1−2の敗戦となった。心臓手術後ブレントフォードでプレーしたデンマーク代表のエリクセンをNo.9ポジションに置く苦肉のシステムは全く機能せず、話題のロナウドもベンチスタートし、前半に2点を取られ完敗。怒ったサポーターは「ブレイザー(アメリカ人オーナー)OUT」と叫び、今年も苦難な道を歩むのではと予想される開幕戦となった。
注目のロナウド(37歳)は途中出場したがマッチフィットせず得点に絡めなかった。ロナウドは、チャンピオンズリーグに出られないMUから他ヨーロッパクラブへの移籍を希望しているが、夏の移籍ウインドーが閉まる9月1日までに引き受けるクラブが出てくるか注目である。またサポーターは、次のホームゲームではスタジアムへは入らず、ボイコットするキャンペーンを展開すると現経営陣へ強い抗議を示している。MUは今年も低迷するのか?
2)リバプール
マネそして南野を移籍で失ったリバプールは、コミュニティ・シールドは勝ち取ったが、開幕戦フラムとロンドンで対戦。やはりFW陣の手薄感は否めず2−2と引き分け、毎年最終戦まで勝ち点1を争う激烈なリーグ戦での初戦引き分けは痛い出足となった。
3)マンチェスターシテイ(MC)
昨年までは攻撃陣にいわゆるストライカーを固定せずシャドーNo.9を日替わりに替えるシステムで優勝を導いたが今年は違う。新ストライカーのアーリング・ハーランドをドイツのドルトムンドより52.2百万ポンド(約83.5億円)で獲得、待望のNo.9センターフォワードのストライカーを補強出来、得点を量産するものと期待されている。初戦のコミュニティ・シールド戦ではシュートを放つもブロックされ無得点に終わったが、プレミア開幕戦の対ウエストハムでは、本領発揮。PKを決めプレミア初ゴール、続いて2点目を入れ、試合も2−0と快勝、ブンデスリーガのドルトムント在籍時で91試合89点の得点マシーンぶりをお披露目し、今シーズン期待が膨らむデビューであった。彼は父親がMCの選手であったため、追いかけていたMUの袖を振ってMCに移籍した逸材。期待しよう。
4)チェルシー
オーナーだったアブラノビッチがロシア人富豪として制裁の対象となり、アメリカ人ロサンジェルス・ドジャーズのオーナーでもあったトッド・ベリー氏が4.24ビリオンポンド(約6,800億円)で買収し注目を浴びている。移籍選手としては、元々ロンドン育ちのMCのフォワード、スターリングを獲得、新たな攻めを監督トーマス・トッフェルは模索している。今年もプレミアの台風の目になることであろう。
5)飲水タイムの導入
昨今の夏場気温上昇に伴い、プレミアリーグでも飲水タイムを導入することになった。前後半の中間時間に、主審の指示によりそれぞれプレーを休止し水を取ることができることになった。今年の夏は気温30度を超すことが多く、選手の健康面を配慮しての措置である。この措置はコロナでリーグが暑い6月まで延長された時以来である。
6)移籍交渉中
1.MU:ロナウドの去就は現在不透明。ネックは彼のサラリー350,000ポンド/週を支払えるクラブがあるか。
2.MU:バルサのオランダ代表MFデ・ヨングを獲得したいと交渉しているが、バルサが彼のサラリー17百万ポンドを未払いの為、移籍が困難となっており、今後どうなるか注目である。
3.一方ではチェルシーが未払金を肩代わりし獲得に乗り出しているという。バルサの経営問題は深刻な状況になっており、今後クラブが経営をどう立て直すのか注目である。
これから選手たちは自クラブのレギュラーを取り、11月のW杯に代表選手として出場するため熾烈な競争が行われることになり、世界のトップ選手が集まるプレミアリーグは一段と激しい試合を展開することになろう。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−04:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
翌日の31日にも、ウエンブレースタジアムに87,192人の大観衆を集め、1966年以来のイングランド対ドイツの「女子ユーロ2022」の決勝が行われた。このUEFA EURO杯は1968年W杯イングランド大会での決勝を思い起こすエポックでもあった。男子がW杯優勝して以来、タイトルに縁がないイングランドが、ウエンブレイの地で女子が宿敵ドイツに2−1と勝利したのである。男子がダメなら女子もあるという『ジョンブル=イングリッシュ(英国人の誇り)』の面目躍如の一戦であった。今年秋に行われる男子カタールW杯にイングランドが優勝すれば、正しく男女共にフットボールでの世界の覇者になると期待されている。
そして8月5日、アーセナル対クリスタルパレス戦がプレミアの開幕試合となった。結果はアーセナルがアウエーで2−0の勝利をおさめ、昨シーズン開幕時低迷していた悪夢を払拭する試合であった。
注目度の強いクラブ、移籍選手の話題、トピックスを集めてみよう。
1)マンチェスターユナイテッド(MU)
新監督テン・ハフが就任し、新たなチーム作りを目指したが、初戦昨シーズンに0−4と敗れたブライトンとホームで対戦、今年は期待するサポーターがオールドトラフォードへ詰めかけたが、結果は1−2の敗戦となった。心臓手術後ブレントフォードでプレーしたデンマーク代表のエリクセンをNo.9ポジションに置く苦肉のシステムは全く機能せず、話題のロナウドもベンチスタートし、前半に2点を取られ完敗。怒ったサポーターは「ブレイザー(アメリカ人オーナー)OUT」と叫び、今年も苦難な道を歩むのではと予想される開幕戦となった。
注目のロナウド(37歳)は途中出場したがマッチフィットせず得点に絡めなかった。ロナウドは、チャンピオンズリーグに出られないMUから他ヨーロッパクラブへの移籍を希望しているが、夏の移籍ウインドーが閉まる9月1日までに引き受けるクラブが出てくるか注目である。またサポーターは、次のホームゲームではスタジアムへは入らず、ボイコットするキャンペーンを展開すると現経営陣へ強い抗議を示している。MUは今年も低迷するのか?
2)リバプール
マネそして南野を移籍で失ったリバプールは、コミュニティ・シールドは勝ち取ったが、開幕戦フラムとロンドンで対戦。やはりFW陣の手薄感は否めず2−2と引き分け、毎年最終戦まで勝ち点1を争う激烈なリーグ戦での初戦引き分けは痛い出足となった。
3)マンチェスターシテイ(MC)
昨年までは攻撃陣にいわゆるストライカーを固定せずシャドーNo.9を日替わりに替えるシステムで優勝を導いたが今年は違う。新ストライカーのアーリング・ハーランドをドイツのドルトムンドより52.2百万ポンド(約83.5億円)で獲得、待望のNo.9センターフォワードのストライカーを補強出来、得点を量産するものと期待されている。初戦のコミュニティ・シールド戦ではシュートを放つもブロックされ無得点に終わったが、プレミア開幕戦の対ウエストハムでは、本領発揮。PKを決めプレミア初ゴール、続いて2点目を入れ、試合も2−0と快勝、ブンデスリーガのドルトムント在籍時で91試合89点の得点マシーンぶりをお披露目し、今シーズン期待が膨らむデビューであった。彼は父親がMCの選手であったため、追いかけていたMUの袖を振ってMCに移籍した逸材。期待しよう。
4)チェルシー
オーナーだったアブラノビッチがロシア人富豪として制裁の対象となり、アメリカ人ロサンジェルス・ドジャーズのオーナーでもあったトッド・ベリー氏が4.24ビリオンポンド(約6,800億円)で買収し注目を浴びている。移籍選手としては、元々ロンドン育ちのMCのフォワード、スターリングを獲得、新たな攻めを監督トーマス・トッフェルは模索している。今年もプレミアの台風の目になることであろう。
5)飲水タイムの導入
昨今の夏場気温上昇に伴い、プレミアリーグでも飲水タイムを導入することになった。前後半の中間時間に、主審の指示によりそれぞれプレーを休止し水を取ることができることになった。今年の夏は気温30度を超すことが多く、選手の健康面を配慮しての措置である。この措置はコロナでリーグが暑い6月まで延長された時以来である。
6)移籍交渉中
1.MU:ロナウドの去就は現在不透明。ネックは彼のサラリー350,000ポンド/週を支払えるクラブがあるか。
2.MU:バルサのオランダ代表MFデ・ヨングを獲得したいと交渉しているが、バルサが彼のサラリー17百万ポンドを未払いの為、移籍が困難となっており、今後どうなるか注目である。
3.一方ではチェルシーが未払金を肩代わりし獲得に乗り出しているという。バルサの経営問題は深刻な状況になっており、今後クラブが経営をどう立て直すのか注目である。
これから選手たちは自クラブのレギュラーを取り、11月のW杯に代表選手として出場するため熾烈な競争が行われることになり、世界のトップ選手が集まるプレミアリーグは一段と激しい試合を展開することになろう。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−04:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫