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大津一貴のエンジョイフットボールライフ「モンゴルリーグがついに開幕!」

21・08・11
 上写真/間隔を空けて並ぶ試合前のFCウランバートル集合写真

(写真はいずれもモンゴル・ナショナルプレミアリーグ公式Facebookページより)


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。私が所属するモンゴルリーグは、新型コロナウイルスの影響を大きく受けていましたが、ようやく2021年8月1日から開幕することが出来ました。そこで、今回のコラムでは、2021年のモンゴルリーグについてご紹介します。


●開幕までの経緯

 2021年のモンゴルリーグは、当初の予定だと「4月開幕−10月終了」を目安に、スケジュールが組まれていました。しかし、2020年11月頃から、現地では新型コロナウイルスの流行が猛威を振るい始め、この記事を執筆している2021年8月現在も新規感染数が増え続けています。

 前述の影響を踏まえて、政府は厳しい規制を発表。その結果、サッカーを始めとする国内のスポーツリーグは、開催することが出来ないまま夏を迎えました。しかし、モンゴルサッカー協会は万全のコロナ対策を施すことを条件に、リーグ戦の開催希望を政府に提案。その申請が政府から許可されたことにより、2021年のモンゴルリーグは、ようやく8月に開幕を迎えることが出来ました。

 しかし、極寒の地として知られるモンゴルの夏はとても短く、9月下旬−10月上旬には雪が降り始める地域です。そのため、リーグ戦は「8月開幕−10月終了」を予定しています。その結果、10月までにリーグ戦を消化するには、毎週2試合を行う必要があり、試合と試合の間隔は2日、3日間で、それを2か月間戦い続けるというスケジュール。当然、選手にとっては肉体的にも精神的にも過酷なシーズンとなります。


●2021年・モンゴルリーグの基本情報

 今季のモンゴルリーグについて、基本的な情報をお伝えします。

 カテゴリーは「1部−3部」のリーグに分かれています。日本のJリーグと同様ですね。1部リーグは全10チームで構成されており、下位2チームは自動降格、2部の上位2チームが自動昇格です(2部・3部も同様)。

 また、1部リーグ優勝クラブは、翌年のAFCカップという国際大会への出場権が与えられます。この大会は、日本のJリーグクラブが出場するACL(AFCチャンピオンズリーグ)の、1つ下のカテゴリーに位置付けされており、アジア諸国のクラブチームが出場出来る大会です。FIFAランクが決して高くはないモンゴルからでも、国際大会への舞台につながっているのです。

 次に、試合会場についてご紹介します。首都のウランバートルに人口が集中していることが影響し、サッカークラブも9割のチームがウランバートルを本拠地とするクラブです。その為、首都の中心部にある「MFFフットボールセンター・スタジアム」にて、リーグ戦は集中開催されています。

 MFF(モンゴリア・フットボール・フェデレーション)に隣接されたサッカー専用スタジアムは、ピッチの芝が人工芝であり、多少の雪が降ってもプレーすることが可能です(寒いことは変わりありませんが…)。また、使用頻度は少ないですが、MFFに隣接している「モンゴル・ナショナルスタジアム」でも数試合の開催が予定されています。こちらのスタジアムも人工芝のピッチです。

 残念ながら、試合は「無観客」で開催されています。昨年も開幕当初は無観客でしたが、シーズンの途中から観戦が可能になりました。観客の有無は、コロナ禍の状況によって変化があるかもしれません。選手入場や、試合前の写真撮影も、ソーシャル・ディスタンシングを保つように工夫されています。


 下写真/試合入場時もコロナ対策を施す様子(BCHライオンズ 対 ハンガリットFC)
●外国人選手について

 最後は、外国人選手についてご紹介します。

 昨年(2020年)のモンゴルリーグでは、私を含めた多くの外国人選手が、チームと契約を結んでいるにも関わらず、厳しい渡航制限によって現地に入国することが出来ないまま、シーズンが終わってしまいました。しかし、今年(2021年)は渡航制限の内容が若干緩和されたことから、数名の外国人選手が現地でプレーしています。

 一番多い国籍の選手は、私を含めた日本人です。モンゴルリーグでは、2010年代後半から一気に日本人選手の需要が増えており、毎年多くの日本人選手が活躍の場をモンゴルに移しています。また、日本国籍パスポートの信頼度が高いことも、現在の情勢と大きく影響しているでしょう。「日本人選手の需要があること」+「他の国籍の選手より入国のハードルが低いこと」、この2点が主な理由として、日本人選手がリーグ全体で約10人プレーしています。

 その他には、ロシア人選手、アフリカ系の選手もプレーしています。外国人選手の人数は、コロナ禍以前より少なくなっていますが、入国制限のハードルを超えることが出来た選手は、モンゴル現地でプレーしています。

 ちなみに、リーグの規定は1クラブに登録出来る外国人選手4名(外国籍選手3人+アジア枠1人)で、試合に出場出来る人数も同様です。昨年2部から昇格してきたクラブは、この外国人選手枠を、全員日本人で固めています。それだけ、日本人選手に対する期待が高いリーグと言えるでしょう。


●まとめ

 様々なコロナ対策を施して、開催にたどり着いた2021年のモンゴルリーグ。私自身も、ようやく現地に渡航することが出来ました。コロナ禍によって遮断されていたサッカーライフですが、約1年10か月振りのピッチに立つまで、あともう少し。プロサッカー選手として様々なプレッシャーもありますが、今はとにかく楽しみです。


 下写真/無観客の中で開催されている試合中の様子(デレンFC対SPファルコンズ)
◆大津一貴プロフィル◆
 少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。
2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)
2015年FCウランバートル(モンゴル)
2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)
2017年カンペーンペットFC(タイ)
2018年からは再度FCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
2019−21年もFCウランバートル所属
大津 一貴