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『みんなでエンジョイスポーツ!』健康・メディカルコーナー

21・03・11
 北のサッカーアンビシャスでは、サッカーファミリーの健康維持につながる情報、スポーツ障害や外傷が起きてしまった場合の対処法などの参考事例として、道内で定評のある病院並びにクリニックの専門医、スポーツ現場に関わる専門家と連携し情報を提供していきます。選手やチーム関係者の方などで思い当たる障害や、万が一起きてしまった外傷などのリハビリ、健康維持などの参考としていただければ幸いです。

※特に育成年代の子の障害、外傷は、適切な対応を怠るとその子の将来を左右しかねない場合もあります。けがが長引いたり、不安な場合は、セカンドオピニオンも含め、実績と信頼の置ける医療機関をお選びください。また、弊紙からの提供情報はあくまで参考例として、安易に障害や外傷の断定はせず、ご心配な点があれば、必ず専門医の診断を優先してください。


◆今回担当していただくのは、「社会医療法人社団カレスサッポロ 北光記念クリニック」の佐久間一郎所長です。佐久間所長は、北海道サッカー協会顧問や、北海道スポーツ指導者協議会の会長を歴任されるなど、医療の面からスポーツ活動の支援を広くなされています。

 第1回目となる今回は、日頃のスポーツ活動から注意したい「スポーツ選手で問題となる心疾患や種々の疾患」をご説明していただきます。


1.不整脈

 致死性不整脈:時々新聞などで、「オリンピック候補選手が突然死亡」などという記事を見かけますが、不整脈の中には「心室細動」という、数秒続けば「フラフラ感」、数十秒続けば「失神」、数分続けば「突然死」を起こす悪性の不整脈があります。それを引き起こす病気には、「ブルガダ症候群」という特異な心電図を示し、男性のみが死亡する疾患、「long QT症候群」などがありますが、それらの症状や心電図を有し、親戚に突然死した方がいる選手や患者さんは、入院して検査を行い、「心室細動」が起こるかどうかを調べます。

 もしそのような不整脈があれば、「植込型除細動器」というペースメーカー型の除細動器(心室細動を感知して電気ショックを心臓へ加えて、不整脈を停止させる)を上胸部に植込みます。この「植込型除細動器」で、命を助けることができます。最近は、「完全右脚ブロック」と診断された患者さんで、この「ブルガダ症候群」である患者さんが多いとされています。北海道では、北光記念クリニックが「致死性不整脈」の診断を一番多く行い、系列の北光記念病院がその治療の手術を一番多く行っている病院です。

 心房細動:運動中などに急に脈が不規則に速くなる不整脈に心房細動があります。この不整脈は心臓を酷使している運動選手にも時々認められます。一番の問題点は、半日以上続くと左心房の中に血栓ができ、それが頭に飛ぶと脳梗塞となるのですが、例としては巨人軍の長嶋元監督がこの病気になられました。

 また、この不整脈が起きると、心房と心室が共同して血液を全身に送れなくなるので、運動能力が低下し、一流スポーツ選手が現役引退する原因となります。マラソンの瀬古元監督もそうでした。

 しかし、今は「カテーテルアブレーション」という、心房細動の起点となる肺静脈の部分をレーザーや冷凍法で「焼却」する内科的手術が確立しており、心房細動が治癒し、スポーツ選手も現役復帰が可能となっています。北海道では、北光記念病院が早々にこの手術を開始し、現在まで多くの手術を行っており、プロのスポーツ選手に対してもこの手術を施行しています。

 心室性期外収縮・心房性期外収縮:心室や心房から発生する良性の不整脈です。これらの不整脈自体は、特に治療の必要がない場合が多いのですが、時に脈拍が急に速くなる「発作性上室性頻拍症」を起こすことがあります。その場合は上記と類似した「カテーテルアブレーション」で治癒できます。

 洞徐脈:スポーツのトレーニングを長く行っているとスポーツ選手は脈拍が減少し、脈拍が遅くなる「徐脈」となっているのが普通です。通常は運動をやめると脈拍は徐々に戻りますが、時に「徐脈」が残り、ペースメーカー装着が必要となる場合があります。


2.神経調節性失神

 立っていると、脈が徐々に速くなり、吐き気がしたり、冷や汗が出てきて、その後急に血圧と脈拍が低下して失神してしまう疾患です。運動選手でも起きることがあります。北光記念病院・クリニックではこれを診断する「head−up tilt」試験を行うことができ、この病気を発見・診断し、対処法を指導しています。


3.スポーツ心臓

 スポーツ選手は運動を行っている結果、心臓が大きくなったり、心臓の壁が厚くなったり、心拍数が低下する「スポーツ心臓」になる場合が多く認められます。この状態は、スポーツをやめれば元に戻ることが多いのですが、心肥大が残る選手もいます。


4.マルファン症候群

 腕や指が長く、身長も高いのですが、血管の結合織が弱く、大動脈が破裂して突然死を起こすことのある遺伝性の疾患です。身長が高い患者さんが多いので、バスケットボールやバレーボール選手に時々認められます。大動脈が拡張し、心臓の大動脈弁に閉鎖不全症が起こるようになった場合には手術が必要となります。


5.骨粗鬆症

 女性で運動を続けていると、皮下脂肪が低下し、その結果無月経となり、骨にカルシウムが沈着せず、骨粗鬆症となります。また、体重を減らそうとして、食事制限をすると同じ状態となります。骨粗鬆症は「DEXA」という弱いX線装置で背骨のカルシウムの状態を測って、評価するのが標準的な診断方法ですが、北光記念クリニックにはDEXAがあり、診断・治療を行っています。


6.スポーツ貧血

 女性選手でも、男性選手でも、汗から鉄分が喪失し、運動選手は鉄と亜鉛をしっかりと摂っていないと、容易に貧血になります。鉄や亜鉛は、治療薬があり、またその吸収を促進する薬や投与方法がありますので、比較的容易に治療することができます。


 北光記念クリニックでは、指導者からの要請があれば、佐久間所長が公認スポーツ栄養士と協力し、各種スポーツで、ジュニアからシニアまで、栄養指導、貧血予防・治療を進める体制を整えております。スポーツ指導者の皆様からご依頼いただければ、公認スポーツ栄養士と共に各競技の選手の食事メニューの指導を致しますので、ぜひ御連絡下さい。


 
◆佐久間一郎氏プロフィル◆
・社会医療法人社団カレスサッポロ 北光記念クリニック所長
・公益財団法人 北海道サッカー協会 元医事委員長、現顧問
・北海道スポーツ指導者協議会 会長
・札幌市健康スポーツ医協議会 会長








  
    
―地域のスポーツ活動を応援する北のサッカーアンビシャス連携医療機関―