サッカーアラカルチョ

一覧に戻る

オーストラリア戦に見る日本の課題

09・02・19
 2010年ワールドカップ南アフリカ大会、アジア最終予選のA組日本−オーストラリア戦は、2月11日に横浜の日産スタジアムでグループ首位の座を賭け行われた。
 
 ピッチは全面良芝、気温7.3度、ホームに6万5千人を超える観衆。この時点で岡田武史監督の理想とする海外組のメンバーも揃え、万全の状態で臨んだ日本。対するオーストラリアは、メンバーの大半が所属する欧州主要国のリーグがシーズン中ということもあり直前の来日。当然、オーストラリアはコンディションも考えアウエーの戦い方に徹し、0−0の狙い通りの引き分けにピム監督もほくそ笑んだ。
 
 ボール支配率は、日本が62.4%、オーストラリアが37.6%。シュートは11本対3本。この数字からも分かるとおり、たしかにボールを支配していたのは日本だが、それは長い時間ボールを保持していたに過ぎない。欧州主要国でほとんどがプレーするオーストラリアのメンバーは、その状況に一切慌てることなく対応。むしろ狙い通りの展開に余裕すら感じられた。
 
 その中で、日本の決定機といえるのは、前半4分、右サイドから田中が低く早いクロスをニアに入れ、玉田が合わせたシーン。後半23分、交代で入った大久保が中村からのふわりとした縦パスを右足のトラップで反転し、左足でシュート。後半25分、遠藤のサイドチェンジから右の内田にパス、遠藤がそのリターンを中央フリーで受けミドルシュート。後半34分、左の長友からのクロスに、玉田がヘディング。終了間際の41分、カウンターから人数をかけ、内田からファーでフリーになっていた長谷部がボレーシュートの5回。しかし枠に飛んだのは遠藤と大久保の2本のみだった。
 
 これは長らく、いや日本では釜本邦茂以後、必ず取り上げられている「決定力不足」というワンフレーズで片付けてはいけないだろう。この試合で最もクローズアップされるのは、ペナルティーエリア付近(得点を奪える場所)でも、選手たちのプレーのファーストチョイス(最初の選択肢)が、シュートを打ち、ゴールを奪うためのプレーではなく、外の安全な選手へボールを展開してしまうことにあるのではないか。
 
 その結果、長身で屈強なオーストラリアに対し、何度となく高めのセンターリングを入れ、跳ね返されるシーンを見続けることとなった。確かに、玉田に2回、長谷部に1回サイドからのクロスでチャンスにはなったが、まるでパターン化されたような日本の攻撃に迫力はなかった。
 
 あえて極端な例を挙げれば、ルーニー、メッシ、C・ロナウド、F・トーレス、ビジャなど世界の名だたるアタッカーたちがゴールを予感させる場所で、ゴールに直結する以外のプレーをファーストチョイスにしているだろうか?
 
 日本代表クラスの選手でも、自分のところでボールを失いたくはないだろうが、サッカーファンやそうではない人々も、リスクを冒さないプレーを優先し続けるサッカーは見たくはないだろう。その中で、現在日本のアタッカーで最も期待できるのは、型にはまらない大久保の存在か。また、世界を肌で感じている海外組がそれぞれ課題を口にしていたことに、チームの変化を期待したい。
 
 もはや、ワールドカップに出場することが必然となった昨今、いかに世界のトップクラスと渡り合える選手を揃えることができるか、言い換えれば、世界に通用する選手を育成できるかにかかっている。今までの育成の結果がこの試合に表れているのは、真摯に受け止めなければならない。
 
 3月28日、ホームのバーレーン戦は、その進むべき2010年に向けて、ターニングポイントの1戦となるのは間違いない。
 
矢田 からす