サッカーアラカルチョ

一覧に戻る

ヨーロッパフットボール回廊『ヨーロッパ・チャンピオンズリーグの行方』

20・08・18
 ヨーロッパ各国のリーグはコロナ感染のため大幅に遅れて7月下旬に終了した。残すはヨーロッパ・チャンピオンズリーグ(ECL)とヨーロッパリーグ(EL)である。

 通常であればこの8月はオフシーズンとなり、ちょうど今頃よりトレーニングを開始、フレンドリーマッチを行う時期である。

 今年は異例な日程での再開となったが、今後ともコロナ感染の収束がいつかにかかっていることは確かである。オックスフォード大とアストラ・ゼニカ製薬会社との共同研究のワクチン開発は現在治験中であり、ワクチン供与は早くてこの10月、遅ければ来年中頃までかかると言われており、今後のプロスポーツの日程はアドホックにならざるを得ず、いつ始まり、いつ終わるのか誰も読めない状況下にある。

 その中で現在行われているのがヨーロッパ・チャンピオンズリーグであり、ベスト8が出そろいポルトガルリスボン市で準々決勝戦以降が行われている。UEFAは当初決勝戦をトルコのイスタンブールで行う予定であったがコロナ蔓延下、運営方式を変更、ホーム・アンド・アウエー方式をやめ、一か所一発勝負方式に変更し行うことにした。

 その試合形式はコロナ対策第一で次のような厳格な運営方法で行うことにしている。

1.選手スタッフはリスボンの指定されたホテルから外出出来ない。する場合は許可が必要。
 
2.選手スタッフはホテル内の移動経路が限定され、食事はプライベートルームで配膳はチームスタッフが行う(外部者による感染を防止するためと意図を持った行いを防止するため)。
 
3.洗濯はチームスタッフのみが出来る(外部者の排除)。
 
4.コロナのテストはまず自国で行う(すでにアトレチコ・マドリッドは2名の感染者が出ておりチームに帯同出来ない)。
 
5.更に試合前日にもリスボンでテストを行う。結果はキックオフの6時間前に通告する。
 
6.テストで陽性となった選手は試合に出場出来ない。
 
7.試合出場出来るのは各チーム13人のあらかじめ登録した選手とGKのみ。陽性者が出た場合はその人数分補充出来る。
 
8.コロナのテストと同時にドラッグテストも併せて行う。
 
9.小便を採取する際はソーシャルデスタンスを取るため医師が監視し、鏡に向かって小便を採取する(ごまかさない為)。

10.利用航空機、バスは完全消毒する。選手は一般人との接触を避ける為ダイレクトにVIPエリアに到着する。

11.バスからの降車は運転席傍からではなく中ほどの出口から降りる。

12.選手は試合のシャツを交換することは出来ない。

13.ペナント交換だけは試合前キャプテンにより出来る。

14.ホテル及び練習場は指定される。

15.試合場に入れるのはスタッフと選手のみ。無観客で行う。

 上記規定に基づき、次の通り行われることとなった。
  8月12日(水)A:アタランタ(伊)対PSG
  8月13日(木)B:ライプチッヒ(独)対アトレチコ・マドリッド
  8月14日(金)C:バロセロナ 対 バイエルン・ミュンヘン
  8月15日(土)D:マンチェスター・シティ対リヨン
  8月18日、19日 準決勝
  8月23日     決勝

 ちなみに試合前の掛け率は、
バイエルン・ミュンヘン3:1、バロセロナ7:1、アテレチコ・マドリッド8:1、マンチェスター・シティ9:1、PSG11:2、アタランタ12:1、ライプチッヒ20:1、リヨン40:1となっていた。

 しかし既に準々決勝4試合は行なわれ、
アタランタ1−2PSG、ライプチッヒ2−1アトレチコ・マドリッド、バロセロナ2−8バイエルンミュンヘン、マンチェスターシティ1−3リヨンの結果となった。

 この4試合番狂わせがなかったのはPSG(パリサンジェルマン)だけであった。

 メッシ、スアレスを擁するバロセロナがドイツの覇者バイエルンに8点も献上し敗退してしまった。5月ドイツブンデスリーグ戦再開後の戦績で9戦9勝無敗であったバイエルンの強さはストライカー、レワンドフスキー1点、そしてベテラン、ムーラーの2得点も含めバルサの守備陣を無力化、圧勝した。

 またライプチッヒもスペイン、アトレチコに2−1と快勝、ドイツ勢の勢いは止まらない。

 ドイツはコロナ感染症対策にも成功しており、コロナを制する者はヨーロッパも制するのか、バイエルンとライプチッヒは準決勝でパリサンジェルマンと掛け率ボトムのリヨンのフレンチ勢と覇を競うことになる。

 観客無しの静けさの中で、熱い戦いを期待しよう。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08   :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫