サッカーアラカルチョ
一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『ヨーロッパフットボール再開へ』
20・06・14
今年の3月から『コロナCovid−19』が中国から蔓延、まずヨーロッパを総なめにし、現在は北米、南米、アフリカへと感染地が移動、この6月現在いまだに最終的な収束には至っていない。しかし各国ともそれぞれ、『Lockdown封鎖対策』を講じたことで感染者、死者共に減少傾向にあり、徐々に封鎖を段階的に緩和、解除してきている。
ヨーロッパでも鎖国状態が続いていたが一部往来を認め、封鎖解除を段階的に行っており、スポーツも再開を認める方向に進んできている。ヨーロッパ国民的スポーツのフットボールの再開はどうなっているのか、既に再開したドイツブンデスリーグ、そして今週17日に再開するイングランドの状況をみてみよう。
◆ドイツブンデスリーグ
先月5月の時点ではまず、5月16日ドルトムント対シャルケなど6試合を皮切りに再開。翌日にはユニオン・ベルリン対バイエルン・ミュンヘンなど2試合、18日にはブレーメン対レヴァークーゼンを行い第26節分を消化した。もちろん無観客試合である。スタジアムへは両軍、選手、役員、審判など関係者合わせて213名しか入れない。選手、監督、コーチ陣、審判、ボールボーイを合わせて98名がピッチサイドに入れる。選手はマスク着用、体温検査をしたうえで入場、消毒済みボールを使用。
スタンドには警備員、報道陣及び医療関係者合わせて115名が体温検査を義務付けての完全保護下での公式試合となった。
選手交代は5名まで許され、そして結果は観客を入れた試合と大きな違いが出てきた。
まず実質実働時間が増加したのである。通常90分の試合時間のうち、実質実働時間は60分前後と言われているが、この無観客試合では70分を超える実働時間となった。ゴールしてもセレブレーションは自粛でロスタイムが減り、審判への執拗な抗議もなくなり、淡々と試合が流れていくことになった結果である。ロスタイムの多くはサポーターへのアピールからであったことが判明したようだ。
また、ホームで勝ちアウエーで負けない、引き分けるというチーム戦略も無観客試合では通じないことが判明した。再開後最初の2週間27試合でホームチームの勝ちは5試合のみ、アウエーチームの勝ちは11試合、あとは引き分けという結果が出てきている。ホームアドバンテージという概念は無くなってしまったようだ。サポーターはテレビの放映で憂さを晴らすしかないだけに、早く人間味のある生の試合の復帰が待たれる。
◆イングランドプレミアリーグ
プレミアリーグの再開はドイツから遅れること1か月、6月17日に行われることとなった。対応はドイツと同じような下記の条件のもと無観客で行われる。
*交代は5人までベンチ入りは9人
*マルチボール採用
*VARシステム採用
*両軍選手スタッフ、医療関係者など合わせて300名がスタジアムに入場出来る、などなどである。
初戦はマンチェスターシティ対アーセナル及びアストンビラ対シェフィールドユナイテッドの2試合である。ホームアンドアウエー方式は変わらないが、無観客とはいえ、熱狂的なサポーターがホームスタジアム近辺へ多数押し掛け、『Social Distancing』をとらず騒ぐことでのコロナ感染を回避するため、地方警察、UKフットボール警察ユニットからの指導で、メインの試合のうち次の6試合は中立のスタジアムで行うこととなった。
・マンチェスターシティ対リバプール、
・マンチェスターユナイテッド対シェフィールドユナイテッド
・マンチェスターシティ対ニューキャッスル
・ニューキャッスル対リバプール
・エヴァートン対リバプール
・その他、リバプールが優勝を決める試合のスタジアムをどこにするかは、まだ決まっていない。
また、無観客試合によるサポーターへのサービスとしてスカイ、BT、BBC、及びAmazonの4社が生放送で放映することとなった。従来BT、スカイ、Amazonは有料テレビであったが今シーズンだけは無料とすることとなった。BBCはプレミアリーグが始まった1992年以来の生放送での放映を行うことになった。
更にホームチームは雰囲気を出すため、ドイツでも行っている観客の声援を放送で流すとか、スタジアム駐車場にドライブスルーの観客席を設けるとか、雰囲気を高める方法を模索している。
やっと帰ってきたフットボール。さらにスペインが6月11日に再開し、セビリアが2−0でレアルベテスに勝利。これからイタリアも6月20日にセリアAが再開する。それに先立ちコッパイタリア準決勝が6月12日に行われ、ユ−ベのロナウドのPK失敗にもかかわらず、0−0とACミランに引き分け、ユベンタスが決勝に進んだ。
しかし無観客でのスポーツ、特にプロスポーツの無観客試合は果たして行うべきなのか大きな疑問であろう。この『Crowdless(無観客)』、『Noiseless(無声援)』、『Passionless(無感情)』がスポーツと言えるのであろうか?
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−04:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08 :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
ヨーロッパでも鎖国状態が続いていたが一部往来を認め、封鎖解除を段階的に行っており、スポーツも再開を認める方向に進んできている。ヨーロッパ国民的スポーツのフットボールの再開はどうなっているのか、既に再開したドイツブンデスリーグ、そして今週17日に再開するイングランドの状況をみてみよう。
◆ドイツブンデスリーグ
先月5月の時点ではまず、5月16日ドルトムント対シャルケなど6試合を皮切りに再開。翌日にはユニオン・ベルリン対バイエルン・ミュンヘンなど2試合、18日にはブレーメン対レヴァークーゼンを行い第26節分を消化した。もちろん無観客試合である。スタジアムへは両軍、選手、役員、審判など関係者合わせて213名しか入れない。選手、監督、コーチ陣、審判、ボールボーイを合わせて98名がピッチサイドに入れる。選手はマスク着用、体温検査をしたうえで入場、消毒済みボールを使用。
スタンドには警備員、報道陣及び医療関係者合わせて115名が体温検査を義務付けての完全保護下での公式試合となった。
選手交代は5名まで許され、そして結果は観客を入れた試合と大きな違いが出てきた。
まず実質実働時間が増加したのである。通常90分の試合時間のうち、実質実働時間は60分前後と言われているが、この無観客試合では70分を超える実働時間となった。ゴールしてもセレブレーションは自粛でロスタイムが減り、審判への執拗な抗議もなくなり、淡々と試合が流れていくことになった結果である。ロスタイムの多くはサポーターへのアピールからであったことが判明したようだ。
また、ホームで勝ちアウエーで負けない、引き分けるというチーム戦略も無観客試合では通じないことが判明した。再開後最初の2週間27試合でホームチームの勝ちは5試合のみ、アウエーチームの勝ちは11試合、あとは引き分けという結果が出てきている。ホームアドバンテージという概念は無くなってしまったようだ。サポーターはテレビの放映で憂さを晴らすしかないだけに、早く人間味のある生の試合の復帰が待たれる。
◆イングランドプレミアリーグ
プレミアリーグの再開はドイツから遅れること1か月、6月17日に行われることとなった。対応はドイツと同じような下記の条件のもと無観客で行われる。
*交代は5人までベンチ入りは9人
*マルチボール採用
*VARシステム採用
*両軍選手スタッフ、医療関係者など合わせて300名がスタジアムに入場出来る、などなどである。
初戦はマンチェスターシティ対アーセナル及びアストンビラ対シェフィールドユナイテッドの2試合である。ホームアンドアウエー方式は変わらないが、無観客とはいえ、熱狂的なサポーターがホームスタジアム近辺へ多数押し掛け、『Social Distancing』をとらず騒ぐことでのコロナ感染を回避するため、地方警察、UKフットボール警察ユニットからの指導で、メインの試合のうち次の6試合は中立のスタジアムで行うこととなった。
・マンチェスターシティ対リバプール、
・マンチェスターユナイテッド対シェフィールドユナイテッド
・マンチェスターシティ対ニューキャッスル
・ニューキャッスル対リバプール
・エヴァートン対リバプール
・その他、リバプールが優勝を決める試合のスタジアムをどこにするかは、まだ決まっていない。
また、無観客試合によるサポーターへのサービスとしてスカイ、BT、BBC、及びAmazonの4社が生放送で放映することとなった。従来BT、スカイ、Amazonは有料テレビであったが今シーズンだけは無料とすることとなった。BBCはプレミアリーグが始まった1992年以来の生放送での放映を行うことになった。
更にホームチームは雰囲気を出すため、ドイツでも行っている観客の声援を放送で流すとか、スタジアム駐車場にドライブスルーの観客席を設けるとか、雰囲気を高める方法を模索している。
やっと帰ってきたフットボール。さらにスペインが6月11日に再開し、セビリアが2−0でレアルベテスに勝利。これからイタリアも6月20日にセリアAが再開する。それに先立ちコッパイタリア準決勝が6月12日に行われ、ユ−ベのロナウドのPK失敗にもかかわらず、0−0とACミランに引き分け、ユベンタスが決勝に進んだ。
しかし無観客でのスポーツ、特にプロスポーツの無観客試合は果たして行うべきなのか大きな疑問であろう。この『Crowdless(無観客)』、『Noiseless(無声援)』、『Passionless(無感情)』がスポーツと言えるのであろうか?
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−04:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08 :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫