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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『予定は未定!?』

19・05・14
 上写真/今季FCウランバートルはまだ波に乗り切れていない状況だが表情は明るい。こちら向きでハイタッチしているのが大津選手


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは大津です。気が付けば、初めて記事を奇稿させて頂いてから半年が経ちました。元号も平成から令和へ変わり、新たな時代に突入しましたね。私自身もオリジナルなサッカー選手像を目指し、これからのフットボールライフもエンジョイし続けていきたいと思う次第です。

 今季、私がプレーしているモンゴルリーグは、2019年4月13日から開幕。この記事を執筆している5月10日現在、既にリーグ戦4試合を消化しています。私の所属チームであるFCウランバートル(昨年は2位)は、2勝2敗の5位。優勝を目指すにあたり、良いスタートを切ったとは言いがたい結果です。しかし、ここから巻き返せるようにチーム一丸となって、これからの試合も挑んでいきます。

 さて今回はシーズンが開幕する前に起きた、モンゴルのチームらしいエピソードをお伝えします。

 まず日本のJリーグのチームは、必ずシーズン前に開幕へ向けて、トレーニングキャンプを行うと思います。今シーズンの北海道コンサドーレ札幌は、タイ、沖縄、熊本と三次キャンプまで行い、シーズン開幕に備えていました。事前準備がしっかりしていて、本当に素晴らしいと思います。コンサドーレをはじめ、Jリーグの各チームは、トレーニングキャンプの日程が事前にしっかり企画され、計画通りにスケジュールが進み、選手がサッカーに専念できる環境が整っているのは、日本の皆様からすると当たり前と感じるかもしれません。

 ですが、私がプレーしてきた国々(特にアジア)では、当たり前ではないことの方が多いです。今シーズンの前に私とチームマネジャーが交わした会話が、我がチームのドタバタ劇を物語っております。では時系列を追ってご紹介します。

開幕8日前
マネジャー「中国へキャンプにいくぞ!」
大津「開幕8日前だよ!? 疲れが溜まるから海外遠征はキツいな・・・」

開幕7日前
マネジャー「やっぱりトレーニングキャンプは無しだ!」
大津「そうだよね。その判断がベターだよ」

開幕6日前
マネジャー「気が変わった! 明日から国内でミニキャンプをするぞ!」
大津「ズっズコー! やっぱりやるんかーい!!」

 と、コントのような流れで、開幕戦を6日前に控えている中、急遽3泊4日の国内キャンプが行われました。日本では考えられない予定の組まれ方です。しかし、今年で海外生活5年目となる私にとっては、これも想定内の出来事です(体調を崩すことなく、涼しい顔でキャンプを乗り越えたこともお伝えしておきます。ドヤ顔でどやー!)。

 国内キャンプを行った場所は、チーム本拠地の首都ウランバートルから車で約1時間離れた場所にある、トゥブ県の『ゾーンモド』と呼ばれる町。キャンプ地へ向かう道中、私の目に飛び込んできたものは、大自然が広がる大地の中を、優雅にのんびりと暮らしている羊や馬などの動物たち。そしてゲル(モンゴルの遊牧民が使用する、伝統的な移動式住居のこと。白くて丸い形をしたテントのようなもの)。まさに、絵に描いたようなモンゴルの景色が広がっておりました。

 「こんな大自然が広がる中、果たしてサッカーグラウンドは存在するのか・・・。もしかして、草原の中で練習するのかな? そもそも普通のホテルは存在するのか? まさか、ゲルで宿泊することにはならないよな?」

 沢山の不安が私の脳裏をよぎる中、広い大地の中にぽつんと浮かんで見えるグラウンドが、バスの窓越しに見えてきました(少し安心)。キャンプ中に使用したこのグラウンドは、昨年に完成したばかりの、真新しい人工芝タイプのグラウンドです。モンゴル代表の国内強化合宿などにも使用できるように作られたそうです。

 真冬の時期にはマイナス30度にもなるモンゴルでは、天然芝が育ちません。ですので、正規のサッカーコートの広さが確保できる人工芝グラウンドは、大変貴重な存在です。大自然の中にあるので、空気も美味しく、練習に専念できる環境が整っておりました。また、宿泊先はゲルではなく普通のホテル(ここでも一安心)。まだまだ寒い4月のモンゴルで、シャワーのお湯が出なかったのは中々辛い思い出となりましたが、そこはご愛嬌です(笑)。

 また、トレーニングキャンプ最終日はチーム全員で毎年の行事である、お寺での御参りにも行きました(日本の必勝祈願のような行事)。場所は、ウランバートルから北東方向に車で2時間ほど離れた『テレルジ』というところです。ここは、現地のモンゴル人や外国人旅行者が多数訪れる、なだらかな山や森林に囲まれた自然豊かな保養地です。モンゴル旅行の際は、絶対に訪れるべき場所と言えるでしょう。

 そして、テレルジ内に存在する『アリヤバル寺院』にて、毎年チーム全員で御参りをします。このお寺は、チベット仏教を表向き禁止していた社会主義時代が崩壊した後の1990年以降に作られた、比較的新しいお寺です。この神聖な場所で、FCウランバートルは必ず必勝祈願を行います。お寺自体は、小高い丘を登り、最後は108段の階段を登り終えた先に存在します。頂上のお寺まで到達するだけでも息切れがするので、とても良いトレーニングにもなります。

 と言うことで、3泊4日のトレーニングキャンプは、私の予想を大きく上回る環境の中でサッカーに集中することができました。キャンプが始まる前は、ドタバタしていて心配しましたが、トレーニングをするには特に大きな問題が無い環境が整っておりました。また、チームメイトとの結束を高めるという視点で考えてみても、トレーニングキャンプを実施して良かったと思います。ただ、「もう少し早めに計画を立てて欲しい!」ということが、きっちりとしたマジメな日本人の本音であることは包み隠さずお伝えしておきます。


 上:上段写真/モンゴルの大自然の中に整備された人工芝サッカーグラウンド
 上:下段写真/テレルジにある『アリヤバル寺院』の様子


 上写真/アリヤバル寺院で毎年恒例の必勝祈願をするFCウランバートルのメンバー


◆大津一貴プロフィル◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年はFCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。

大津 一貴