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屋良っティーニの教えある記『シリア国民の希望』

12・02・11
 2月5日に行われたロンドンオリンピック最終予選、シリアが情勢不安ということで、隣国ヨルダンでの開催となった。

 皆さんもお察しの通り、僕の体は、ブラジル40%、コロンビア20%、エクアドル10%、シリア15%、日本15%(少なっ!!)の配合で出来ていますので、この試合の行方を複雑な面持ちで見守っておりました。。。

 画面でも確認できたように、ピッチはボコボコでハゲているところもあったりで、試合開始から両チームの選手は足をとられる場面も。実は、ハゲていない、一見芝生の生えているように見えているところでも、踏みしめるとデコボコなのがわかる様なピッチは石油産出国でない方の!?アラブでは、よくあること。

 そうなると、日本得意のパス回しをするには、不向きな状況になってしまっていたのは確かかも。ましてや、終わり間際に出てきて、引っかき回すタイプの永井が先発だとそれをめがけてしまうのか「とりあえず蹴っちゃえ〜」みたいになってたように見えたのは、私だけ!?

 一方のシリアは立ち上がりから迷いなく(あれしか出来ないんだけど・・・)、10番アルスーマめがけて蹴り、収まったところを起点に前に前にガンガン攻めてきたね〜。

 その迷いのなさに圧倒されたのか、日本もそれにお付き合いするようにますます雑になっていく。こうなると日本の攻撃に迷いが生じ何をしたいのか見えなくなっていたように感じた。終始、シリア代表の『絶対に負けられない!』をビンビン感じてしまった。

 それもそのはず、皆さんにも多く知られていると思いますが、現在シリアは情勢不安で5千人以上が死亡している。街中を戦車が走ったりしてるくらいだから、もちろん国内リーグも中断中。

 そんななかシリア代表選手は国にほとんど戻ることは無く近隣国で合宿をしてきた。ロンドンオリンピック出場は、シリア国民にとって唯一の希望なんだよね。なのに、何の陰謀か試合当日、シリア国内では、停電のためこの試合を観れなかったそう。

 とにかく、今回は僕の中の15%のシリア人の血が沸きたち、2番のアル・サリフが決勝ゴールを決めた時には、涙してしまいました。。。

 ちなみに、永井にぶっちぎられちまった15番のハサンは僕がシリアA代表コーチの時、一週間招集されてきた子です。立派になりました!


◆筆者プロフィル◆
屋良 充紀(やら みつとし)
現役時代はブラジル、エクアドル、コロンビアでプレー、コロンビアではコーチも兼任。
帰国後、横浜FC泉Jrユースの監督として7年間指導。その後『JFAアジア貢献プロジェクト』で中東のシリアで未来のシリア代表選手を育成するべく、SFA(シリアサッカー協会)フットボールアカデミーを開校しヘッドコーチを務めた。アラビア語で『サッカー指導指針』をつくり、シリアは勿論のこと海を越えてアフリカ・スーダンでも高い評価を得ている。現在は横浜市でブラジルのストリートサッカーをヒントに遊び心をくすぐるサッカースクール、『エスコリーニャFC』に力を注いでいる。
ロベルト・屋良っティーニ