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一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊「FootballにRugby 戦術:イングランドW杯出場欧州一番乗り」
25・10・18
既に10月なかば、フットボールシーズンは序盤戦を終え、2026北中米W杯の大陸別予選及び国際試合日となっている。
今シーズン特徴的な新戦術が各チームに浸透し、従来のPossession FootballからDirect Footballへ転換しつつある傾向が見える。
その例をプレミアリーグチームが実施しているパターンを紹介しよう。皆様も試してみては?
■Kick Offからの攻め
従来攻撃側のKick Offはセンタサークル内に2人が入り、ひとり(A)がもうひとりの味方の選手(B)にパスし、そこから中盤の選手へパスし展開するのが普通のパターンであった。
しかし昨今はラグビー方式を採用し、AからBへショートパスしたボールをBは大きく相手陣営サイドCK方向へいわゆる5ヤードキックで相手スローインとする戦術である。
要は陣地を稼ぎ相手ボールのスローインとはいえ、相手ゴールに近い位置からスタートし相手攻撃の間を稼ぎ、相手ボールを奪えれば即シュートチャンスを生み出せるという戦術である。まさしくラグビーのタッチキックで陣地を稼ぐ戦術である。
■守備側のセンターフォワードが敵陣バックスの裏側(オフサイドポジション)に位置し始動する攻め
守備側が攻め込まれている状況で味方センターフォワード(CF)は通常センターライン上に位置してオフサイドを避け味方の攻撃の始点となっているのが従来の立ち位置であるが、あえて相手陣地内、相手バックスとGKの間(10ヤード程度敵側陣地)に位置し味方からのロングのパントボールのパスを期待する戦術である。
味方が大きな滞空時間の多いパントキックを相手陣地へ蹴った場合、敵側守備陣は帰陣するが、その隙間の瞬間、味方CFはそのパントボールをトラップしオフサイドにならずフリーでシュート出来るという戦術である。マンチェスター・ユナイテッドのCFブームはあえてオフサイドポジションに位置しており、味方中盤の選手が相手ボールを奪い、大きくパントキックを蹴った時点では相手ディフェンスが戻ってきておりオフサイドとなっておらず得点が認められた。オフサイドのタイミングが微妙ながら成功率の高い戦術となっている。
■ロングスロー
前のレポートでも触れたがLong Throughもプレミア各クラブも多用する戦術として定着してきた。その為Long Througher(投げる選手)の養成も各クラブではSet Play Coachをあえて採用任命し、普段の練習メニューへ加えているようになった結果であろう。
■コーナーキック
既に取り上げたアーセナルのお家芸となっているコーナーキックからの得点戦術は今や数種類のパターンを発明し実行している、その為の防御戦術も時間を割いて練習しているのだ。プレミア各クラブは専門のスペシャリストを採用し、その練習方法を編み出し実戦に適用しており、その成果は勝敗を決するまでになってきている。
さて、プレミアリーグは開幕以来7試合を消化、ここ1週間は国際試合日として休みとなっている。
10月6日現在、トップにはアーセナルが抜けてきた。サカがけがから復帰し、トップを走っていたリバプールは10月4日チェルシーに2−1と敗北2位に転落した。低迷しているマンチェスター・ユナイテッドはサンダーランド戦でストライカーのCFブームの得点で勝利し、やっと10位に上がってきたがいつ監督が更迭されてもおかしくない戦績で多くのマンキュニアンの期待を裏切っている。
そしてイングランド代表チームは10月14日、W杯ヨーロッパ予選K組でラトビアと対戦、アウエーながら5対0で勝利し、予選リーグ無敗、無失点の記録で2026年アメリカ、カナダ、メキシコ共同開催の北中米W杯への出場を決めた。UEFA(ヨーロッパ)では現在の所唯一の出場国となりイングリッシュファンは1966年来の優勝杯を期待しているが果たしてどうなるか?。
しかし監督のドイツ人ツッシュルはプレミアリーグから選べる選手数はわずか23%(約110名=1チーム当たり5.5人)しかいない。余りに非イングリッシュ選手が多すぎ選抜可能者数が限られている為、代表に選抜する選手が限られ、引いては戦力不足になっていると不満を漏らしている。現在のプレミアの規則では1チーム最低8人がイングリシュまたは外国人でも所属クラブのユース出身者に限られ、少ないところではわずか5人しか登録出来ず人材不足を嘆いている。今後この国籍限定規約が改正される方向は示されておらず今後の課題となっている。
W杯出場枠48か国中、現時点で決定した28か国は下記の通り。
*ヨーロッパ16か国
イングランド(他15か国が予選中)
*アジア8か国
オーストラリア、イラン、日本、韓国、ウズベキスタン(初参加)、
ヨルダン(初参加)、カタール、サウジアラビア
*オセアニア1か国:ニュージーランド
*南米6か国
アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、ウルグアイ、パラグアイ、
コロンビア
*アフリカ9か国
チュニジア、モロッコ、アルジェリア、エジプト、ガーナ、セネガル、
アイボリーコースト、南アフリカ、ケープ・ヴェルデイ(初出場)
*開催国:アメリカ、カナダ、メキシコ
ヨーロッパはまだこれからのグループ戦での結果でイングランドを除く15か国が今後2026年3月までに決定される。また北中米カリブも11月に行われる3次予選で出場3か国が決まる。そしてヨーロッパ以外の各地区で行われるプレーオフで勝利した国は、2026年3月開催予定の6か国による大陸間プレーオフにまわり、うち2か国が本大会に出場する。
これから冬の陣、クリスマス決戦に向けて突入するが予断を許さない各国リーグが展開されることを期待したい。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−94:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫











