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一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『英国皇太子Williamフットボール解説者に?』
25・04・15
フットボールの世界ではその国のトップがパトロン(Patron=支援者)となっていることが多い。
イングランドThe FAのパトロンは現在『Prince of Wales』であるWilliam皇太子がその任を担っている。故エリザベス女王も1966年ワールドカップ優勝時カップをキャプテン、ボビー・モアへ授与した歴史もあり、国民スポーツの長としてThe FAの歴代のパトロンは王室から任命されている。
William皇太子はパブリックスクールのイートン校時代からフットボールをプレーし、また熱烈なアストン・ビラのサポーターとして知られている。イートン校時代多くの学友がマンチェスター・ユナイテッド(MU)とかチェルシーのサポーターであったことに反発し、なぜかアストン・ビラのサポーターとなり、以来本拠地バーミンガムにサポーターとして事ある度に応援に行っている。
そのWilliam皇太子が4月9日、UEFAチャンピオンズリーグ、準々決勝第1戦目、アウエーでのフランス、パリ・サンジェルマン(PSG)との試合にパリまで応援に馳せ参じたのである。
それだけではなく、驚きは何と当日テレビ実況放映していたTNTスポーツ局のゲスト解説者として登場したのだ。試合は皇太子の応援にもかかわらず残念ながら1−3でPSGに敗戦。しかし皇太子の解説はPSGの戦術、ゲームプラン、応援するアストン・ビラのエメリー監督の戦術まで素人離れしたコメントを披歴し、同席していた解説者の元MUのセンターバック、リオ・ファーデナンドも“I could be out of Job”(自分の仕事を奪わないでね)“と念を押す程であった。
このWilliam皇太子の飛び入り解説は反響を呼び、次のアストン・ビラのホーム試合、4月19日対ニューキャッスル戦、及び4月26日のThe FAカップ準決勝、対クリスタル・パレス戦を放映するスカイスポーツは解説者として登場して欲しいと熱望。果たしてWilliam解説者が誕生するのか、そして出演した場合、そのギャラはいくらになるのか興味は尽きない。
ちなみに英国テレビ局、マスコミ界には王室を取り上げるコメディー番組は数多くあり国民も王室もこのような一般社会との交流を喜ぶ傾向があり、今後ともWilliam皇太子の解説が行われる可能性はあるのではないかと思われる。日本ではありえない光景であろうか。
さて、このUEFAチャンピオンズリーグは現在ベスト8チームが残り、準々決勝戦2回戦が4月15日、16日に行われる。
▪4月15日(火)
アストン・ビラ vs PSG(1回戦1−3)
バロセロナ vs ボルシア・ドルトムンド(1回戦4−0)
▪4月16日(水)
バイエルン・ミュンヘン vs インターミラン(1回戦1−2)
アーセナル vs レアル・マドリッド(1回戦3−0)
アストン・ビラはホームで1回戦1−3の敗戦ハンデをどう挽回するのか。MUからの期限付き移籍で入団したラッシュフォードが水を得た魚のごとく、アストン・ビラの攻撃陣のキーマンとして生き返った勢いがあり、ホームでの逆転勝ちにサポーターは期待を寄せている。William皇太子が応援に来るのかも注目されている。一方、アーセナルもホームでレアル・マドリッドに3−0と圧勝、アウエーで守り切れば準決勝へ進出出来る。
イングランド、ドイツ、スペイン各2チーム、イタリア、フランス勢各1チームでのチャンピオンズリーグを制するチームはどこか? 注目である。
さてこのチャンピオンズリーグの各国リーグからの参加チーム数が来シーズンからポイント制に変更されることとなった。
従来、イングランドからはプレミアリーグから上位4チームが参加出来たが、来シーズンは国のランクによって参加クラブの数が決められることになった。それによればイングランドは現時点で1チーム加算され、来シーズンはUEFAチャンピオンズリーグにプレミアリーグトップ5チームが選ばれることに決まった。
4月14日現在、出場可能性大の5チームはプレミアリーグの順位、1位リバプール、2位アーセナル、3位ノッチンガム・フォレスト、4位ニューキャッスル、5位マンチェスター・シティとなっている。また、6位のチェルシーと7位アストン・ビラは、現在もこの位置をキープできればUEFAヨーロッパリーグへの参加が可能となる。
今後、今シーズンプレミアで低迷しているMU(現在14位)スパーズ(15位)もヨーロッパリーグに参戦しているが、優勝すれば来シーズンのチャンピオンズリーグへの参加もあり得ることになる。現在MUはヨーロッパリーグ3位、スパーズは6位であり、可能性がないことはないが厳しい状況下にある。
あと2か月のシーズンを見据えて、各チームは資金源である上記UEFAリーグへの参加を賭けリーグでの上位進出を狙っている。今シーズンあと残すは6試合のプレミアリーグは熾烈な順位争いを繰り広げている。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−94:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫