サッカーアラカルチョ
一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『スペインが世界の覇者に!!』
24・07・17
スペインが再び世界を制覇するのか? 大英帝国に伍して世界を制覇していたスペイン連合軍がトラファルガー海戦で英国ネルソン提督に敗れたのが1805年、以来スペインが世界の覇者として君臨することはなかった。
以来200年以上、歴史は英国の時代となっている。果たして再びスペインの時代が来るのであろうか? 7月14日、2大スポーツの決勝戦がスペインを巡って行われた。
まずフットボールのユーロ2024決勝に先立ち、午後2時、ウインブルドンテニスの男子決勝戦が英国ロンドンで行われた。結果優勝したのはスペインの新星若干21歳アルカラス。昨年の大会でも過去7回優勝の王者ジョコビッチを3−0と圧倒、若さあふれる試合を展開、2年連続栄冠を獲得した。
表彰式には英国王室のプリンセス オブ ウエールズのケイト王妃が長期ガン治療から復帰し観戦、優勝したアルカラスにカップを進呈し満員のスタジアムを魅了した。アルカラスも優勝インタビューで「今晩のユーロ決勝戦スペインに期待している」とコメント、満員の観衆を沸かせた。
そして午後8時、場所はドイツのベルリンにあるオリンピックスタジアムでユーロ2024の決勝戦がキックオフ。決勝に進んだのは予選から圧倒的に勝ち続けたスペイン。そして1966年以来国際大会での優勝の栄誉を勝ち取ったことがないが、今年こそはと意気込むイングランドとの戦いとなった。
決勝戦の前に準々決勝からの試合の経過を振り返ってみよう。準々決勝戦に進出したのは、スペイン対ドイツ、ポルトガル対フランス、イングランド対スイス、そしてオランダ対トルコであった。
有力視されていたベルギーはフランスとのベスト16の戦いに0−1と破れゴールデン・ジェネレーションのストライカー、ルカクそして欧州一のプレーメーカーの名にふさわしいデ・ブルイネを擁していたにもかかわらず結果を出せず敗退、小国の憂き目を被った。
このベスト8での戦いのハイライトはスペイン対ドイツ戦であろうか。ドイツは先の2022カタールW杯で日本にも負け、選手の新旧交代時期でもあったが、地元だけに初戦スコットランドに5−1と快勝。あわよくば地元優勝の復活劇を期待したが、スペインに延長戦の末1−2と敗退、地元優勝の夢はついえた。
ポルトガルもキャプテン・ロナウド(39歳)をリーダーとし、ベスト8戦をフランスと戦ったが、延長戦でも決着つかず0−0。結局PK戦で3−5とフランスに名をなさしめた結果となった。ロナウドはポルトガル代表から引退を表明した。
優勝候補の一角と予想されたフランスは至宝エムバペが初戦のオーストリア戦、鼻骨骨折のけがで退場。その後の試合ではフェースマスクを着用しプレーしたが本来のスピードを生かした突破力が消え、得点マシーンの活躍は出来ず。準決勝戦の対スペインでは2点を献上し1点返したが1−2で破れ姿を消した。
そしてイングランドはベスト8でスイスと当たり、1点献上したが80分サカが決め同点とし、PK戦に持ち込み5人全員がPKを決め、5−3の勝利で準決に進んだ。
オランダもしぶとくベスト8へ進み、トルコと対戦2−1と勝ちイングランドと準決勝を戦うことになった。準決勝イングランド対オランダ戦は劇的な幕切れでイングランドが決勝に進んだ。
試合は前半7分、オランダが先制したが18分にイングランドはPKを取りキャプテン、ケーンが決め同点とする。そして79分不調のケーンに代わってアストンビラのストライカー・ワトキンスが入り、終了間際の90分に途中交代のチェルシーのストライカー・パーマーのセットアップから、ワトキンスが値千金のシュートを決め劇的な逆転劇となった。
決勝戦、イングランドにとっては1966年のW杯地元優勝以来の国際大会優勝を目指しての戦い。一方、スペインは2012年以来のヨーロッパ制覇がかかった一戦。
昨年の女子W杯(オーストラリア)での決勝もイングランド対スペインであったが、準決勝でイングランド選手の退場もあり、スペインが1−0で勝ち優勝した経緯もありどちらも負けられない試合となった。
観客数7万5千人、スペインの赤、イングランドの白が入り乱れてのサポーターのチャントはベルリン中に鳴り響く。入場券も1枚5千ポンド(約百万円)とも言われ、英国民2千3百万人がテレビで観戦したとも言われるほど。試合が始まった頃(20時)はロンドンの街から人影が消えた。
結果は前半は両者譲らず0−0。だが後半早々47分にスペインのウイング・ウイリアムスが17歳になったばかりのスペインの新星ヤマルからのパスを決めて1−0とリード。そしてイングランドも73分途中交代で入ったパーマーがシュートを決め1−1とする。
しかしボールポゼッションに長けたスペインは80分、途中交代で入ったオヤルバザルが左サイドのククレジャからのパスをスライデイングシュートで決め2−1とした。イングランドの58年間待ちに待った国際大会での栄光は次の2026年のW杯まで待たねばならなくなった。
筆者も長年W杯・ユーロ大会を取材していたが、毎回新たなヒーローが生まれ育ち試合内容もスピード化し、フットボールがコンパクトとなり一歩の差、瞬間の判断が求められる高度なスポーツに変革しており、次の2026年W杯アメリカ・カナダ・メキシコ大会も大いに期待される。
追記となるがこのユーロで、カリスマストライカーのC.ロナウドがポルトガル代表を辞した。コパ・アメリカもアルゼンチンがコロンビアを破り優勝したが、メッシも37歳となり次の国際大会へ出場出来るのか、その中でスペインの17歳ヤマルがどう成長するか楽しみである。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−94:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
以来200年以上、歴史は英国の時代となっている。果たして再びスペインの時代が来るのであろうか? 7月14日、2大スポーツの決勝戦がスペインを巡って行われた。
まずフットボールのユーロ2024決勝に先立ち、午後2時、ウインブルドンテニスの男子決勝戦が英国ロンドンで行われた。結果優勝したのはスペインの新星若干21歳アルカラス。昨年の大会でも過去7回優勝の王者ジョコビッチを3−0と圧倒、若さあふれる試合を展開、2年連続栄冠を獲得した。
表彰式には英国王室のプリンセス オブ ウエールズのケイト王妃が長期ガン治療から復帰し観戦、優勝したアルカラスにカップを進呈し満員のスタジアムを魅了した。アルカラスも優勝インタビューで「今晩のユーロ決勝戦スペインに期待している」とコメント、満員の観衆を沸かせた。
そして午後8時、場所はドイツのベルリンにあるオリンピックスタジアムでユーロ2024の決勝戦がキックオフ。決勝に進んだのは予選から圧倒的に勝ち続けたスペイン。そして1966年以来国際大会での優勝の栄誉を勝ち取ったことがないが、今年こそはと意気込むイングランドとの戦いとなった。
決勝戦の前に準々決勝からの試合の経過を振り返ってみよう。準々決勝戦に進出したのは、スペイン対ドイツ、ポルトガル対フランス、イングランド対スイス、そしてオランダ対トルコであった。
有力視されていたベルギーはフランスとのベスト16の戦いに0−1と破れゴールデン・ジェネレーションのストライカー、ルカクそして欧州一のプレーメーカーの名にふさわしいデ・ブルイネを擁していたにもかかわらず結果を出せず敗退、小国の憂き目を被った。
このベスト8での戦いのハイライトはスペイン対ドイツ戦であろうか。ドイツは先の2022カタールW杯で日本にも負け、選手の新旧交代時期でもあったが、地元だけに初戦スコットランドに5−1と快勝。あわよくば地元優勝の復活劇を期待したが、スペインに延長戦の末1−2と敗退、地元優勝の夢はついえた。
ポルトガルもキャプテン・ロナウド(39歳)をリーダーとし、ベスト8戦をフランスと戦ったが、延長戦でも決着つかず0−0。結局PK戦で3−5とフランスに名をなさしめた結果となった。ロナウドはポルトガル代表から引退を表明した。
優勝候補の一角と予想されたフランスは至宝エムバペが初戦のオーストリア戦、鼻骨骨折のけがで退場。その後の試合ではフェースマスクを着用しプレーしたが本来のスピードを生かした突破力が消え、得点マシーンの活躍は出来ず。準決勝戦の対スペインでは2点を献上し1点返したが1−2で破れ姿を消した。
そしてイングランドはベスト8でスイスと当たり、1点献上したが80分サカが決め同点とし、PK戦に持ち込み5人全員がPKを決め、5−3の勝利で準決に進んだ。
オランダもしぶとくベスト8へ進み、トルコと対戦2−1と勝ちイングランドと準決勝を戦うことになった。準決勝イングランド対オランダ戦は劇的な幕切れでイングランドが決勝に進んだ。
試合は前半7分、オランダが先制したが18分にイングランドはPKを取りキャプテン、ケーンが決め同点とする。そして79分不調のケーンに代わってアストンビラのストライカー・ワトキンスが入り、終了間際の90分に途中交代のチェルシーのストライカー・パーマーのセットアップから、ワトキンスが値千金のシュートを決め劇的な逆転劇となった。
決勝戦、イングランドにとっては1966年のW杯地元優勝以来の国際大会優勝を目指しての戦い。一方、スペインは2012年以来のヨーロッパ制覇がかかった一戦。
昨年の女子W杯(オーストラリア)での決勝もイングランド対スペインであったが、準決勝でイングランド選手の退場もあり、スペインが1−0で勝ち優勝した経緯もありどちらも負けられない試合となった。
観客数7万5千人、スペインの赤、イングランドの白が入り乱れてのサポーターのチャントはベルリン中に鳴り響く。入場券も1枚5千ポンド(約百万円)とも言われ、英国民2千3百万人がテレビで観戦したとも言われるほど。試合が始まった頃(20時)はロンドンの街から人影が消えた。
結果は前半は両者譲らず0−0。だが後半早々47分にスペインのウイング・ウイリアムスが17歳になったばかりのスペインの新星ヤマルからのパスを決めて1−0とリード。そしてイングランドも73分途中交代で入ったパーマーがシュートを決め1−1とする。
しかしボールポゼッションに長けたスペインは80分、途中交代で入ったオヤルバザルが左サイドのククレジャからのパスをスライデイングシュートで決め2−1とした。イングランドの58年間待ちに待った国際大会での栄光は次の2026年のW杯まで待たねばならなくなった。
筆者も長年W杯・ユーロ大会を取材していたが、毎回新たなヒーローが生まれ育ち試合内容もスピード化し、フットボールがコンパクトとなり一歩の差、瞬間の判断が求められる高度なスポーツに変革しており、次の2026年W杯アメリカ・カナダ・メキシコ大会も大いに期待される。
追記となるがこのユーロで、カリスマストライカーのC.ロナウドがポルトガル代表を辞した。コパ・アメリカもアルゼンチンがコロンビアを破り優勝したが、メッシも37歳となり次の国際大会へ出場出来るのか、その中でスペインの17歳ヤマルがどう成長するか楽しみである。
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−94:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫