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ヨーロッパフットボール回廊『ヨーロッパ・シーズン終了、ユーロ2024の行方』

24・06・17
 
 ヨーロッパの各国リーグは幕を閉じた。プレミアリーグは、最終戦でアーセナル逆転優勝の可能性もあったが、結局マンチェスター・シティ(以下MC)がホームでの対ウエストハムに3−1と勝利し優勝を飾った。アーセナルは2003年度シーズン以来の優勝のチャンスを逃した。MCは2020年優勝からの4連覇を達成した。グアルディオラ監督の偉業でもある。しかし今シーズン3冠を狙うThe FA カップ決勝戦では永年の宿敵マンチェスターユナイテッド(以下MU)に1−2で敗戦し2冠に終わった。

 これから夏にかけ各クラブは新たな挑戦を目指し人心の一新を行う移籍騒ぎが始まる。

 注目は今シーズンプレミア8位という不名誉な成績を残したMUの改革である。テン・ハグ監督の更迭か残留か、フットボール部門のトップとなったラットクリフは元バイエルン・ミュンヘンのツシェル、更にチェルシーを更迭されたポチェティーノ監督、そしてイングランド代表監督のサウスゲートにも触手を伸ばし新監督にと交渉を図った。しかし3人からは辞退され、結局FAカップを優勝した事で現監督テン・ハグの続投が決まった。

 この監督残留の結果、チーム内の選手にも不協和音が発生している。テン・ハグ監督から練習禁止の措置をされ、古巣のボルシア・ドルトムンドにローンで移籍したサンチョは監督との確執から復帰は難しくなった。ブラジル代表のカセミロも移籍候補、FWラッシュフォードもイングランド代表を外され移籍を希望、スペインにローンで貸し出されているグリーンウッドのユベンタスへの放出も決定し、ほぼ10人の選手がMUを去ることになるようだ。

 大幅なリシャッフルとなるMUは、伝統であったイングランド育ち、マンチェスター育ちのイングランド選手を主体に、ホームグロウン選手で人気を高め、優勝を勝ち取っていた伝統が崩れるのは惜しい事だ。ちなみにテン・ハグの続投となったが今までの監督(Manager)が選手の移籍、獲得に関わっていたことが選手間の不協和音を醸し出したとし、ラットクリフ代表は来シーズンからテン・ハグの立場をHead Coachとするとしている。高額な選手を監督が管理し、選手の去就をも決定する権限は新たに任命するSport Directorの仕事とし、Head Coachは日常のトレーニング、そして試合の現場での指揮に限るとする方向に転換することになった。

 一方、優勝したMCのグアルディオラ監督もあと1年指揮しMCを去りたいと表明、リバプールの監督クロップの引退もあり、今シーズンプレミアは選手だけではなく監督も大幅に変わる気配濃厚である。アレックス・ファーガソン元MU監督のように、カリスマ性と若手を育てて優勝させる手腕より、現存する高額選手を試合ごとのコーチングで勝たせられるHead Coachが今後求められるようだ。


 さて4年に一度、W杯の合間の年に行われるユーロ2024が6月14日からドイツを舞台にスタートした。開幕戦はホストのドイツ対スコットランド戦がミュンヘンで行われた。結果は5−1と地元ドイツの圧勝であった。今年のユーロの優勝杯を獲得するのはどこか? そして活躍する選手は誰か、この1か月予断を許さない厳しい試合が続く。

 英国のOPTA(英国スポーツ分析会社)によるスーパー・コンピューターの優勝確立予測は下記の通りである。
1.イングランド:19.9%
2.フランス  :19.1%
3.ドイツ   :12.4%
4.スペイン  : 9.6%
5.ポルトガル : 9.2%
6.オランダ  : 5.1%
7.イタリア  : 5.0%
8.ベルギー  : 4.7%
9.デンマーク : 2.2%
10.クロアチア : 2.0%

 組み合わせから筆者が大胆な予想をすると、準々決勝は、スペイン対ドイツ、ポルトガル対オランダ、ベルギー対フランス、イングランド対イタリアとなると予想してみます。

 どの試合も甲乙つけがたい強豪ぞろい。退場者の影響、PK戦の勝者、また圧倒的なストライカーを擁する国が優勝することは確実だろう。フランスはエムバペを擁し優勝候補であることは確かであり、イングランドはハリー・ケーンが好調であれば決勝へ進めるのではないかと予想している。

 しかし練習試合でアイスランドに0−1で敗れ、さらにセンターバックのマグアイアーが故障で離脱、パートナーのストーンズも足の指のけがで果たして試合に間に合うかの難題もあり、予想とは異なり途中敗退というイングランドサポーターにとっては屈辱的な結果に終わる可能性もあり予断を許さない。

 地元ドイツも昨今のW杯等では優勝を飾るまでの選手がそろわず敗退しているが、今大会は地元であり準決を乗り越えればファイナルで奇跡を起こせるかもしれない。しかしやはりスーパースター、エムバペを擁するフランスが覇権を取ることの確率は高い。

 各国代表選手に長期のシーズン後の大会であり、多くのけが人が出場出来ない場合もあり厳しい試合の展開も予想される。「ユーロこそ世界一の質と量の大会で在りW杯を凌駕する大会である」とも言われており興味は尽きない。

 筆者が過去のユーロで一番印象に残っているのは1992年スウェーデンで行われた大会でデンマークがドイツに勝ち優勝した時です。

 当時、ユーゴ紛争がありユーゴの代わりにデンマークが急遽大会に出場、あれよあれよという間に決勝戦でドイツに快勝した大会です。デンマークではGKシュマイケルが守り、優勝に導いた。

 優勝会見では「なぜ優勝できたか? そりゃー我々は予選で敗退し、選手はそれぞれ皆休暇に行っていた。そこへユーゴが参加できないというのでデンマークが急遽選ばれた。選手はみな日焼けしピッチに戻ってきた。決勝で対戦したドイツはブンデスリーガが終了後、選手は休むことなくこのユーロに馳せ参じた。シーズンの疲れもたまったまま激しい大会の決勝に上がってきた。Fresh(はつらつ)対Fatigue(疲労困憊)の闘いは我々に分があった。負けて元々、ふんだんに家族と休暇を楽しんだ後に参加して楽しんで優勝出来た」と語り、スポーツには鍛錬と同時にリラックスが必須であることを証明する大会でもあった。

 フットボールファンにとってはこのユーロが世界一レベルの高い激しい凛とした大会であることを忘れてはならない。皆様もどの国が覇者となるか予想してみてください。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)

伊藤 庸夫