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弊紙発刊の書籍がリニューアル版で絶賛販売中【一部抜粋し紹介】

23・03・11
 Amazon初登場時にカテゴリー別4位となった「100万円も借りられなかったNPOが、街クラブ日本一の施設を造った奇跡の物語」(出版元:北のサッカーアンビシャス)が、全国のサッカー関係者から注目を集め、この度「クラブ40周年記念誌同梱版」としてリニューアル発売となった。

 こちらの特装版は、数量限定で現在Amazonでのみ取り扱い中。地域スポーツ関係者には関心の高いクラブ運営や、あっと驚く施設の作り方も実例を基に紹介。ご興味のある方は是非どうぞ。

 本紙では、本の中身を少しずつではあるが紹介している。今回は第十九の巻「社会起業家として生きる」の章を抜粋し、紹介したい(登場人物の年齢、所属、役職などは2017年通常版出版時のものとなります)。


【以下書籍より一部抜粋】

第十九の巻「社会起業家として生きる」

 社会起業家という言葉をご存知の方もいるだろうが、特命チームの3人が学生時代の1990年代には、全く浸透していなかった。この社会起業家の概念を簡単に説明すると、社会の問題解決や、社会貢献を目的とする事業体を起業、もしくは社会的企業に身を置き活動する者といえよう。現在は、事業型NPOなどがイメージしやすいが、市民グループや、その他の業態でも可能であると認識されている。

 柴田は大学4年生時に、学生サッカーリーグが終わった翌日から、自分の出身クラブであるSSSで本格的にボランティアコーチとして携わることになる。その当時、SSSは規模的にも財政的にも厳しい局面を迎えており、柴田と入れ替わる形で2人の正職員が退職していった。

 小さな組織で同時に2人の離脱は、本来であればクラブ存続の危機でもあったが、スポーツビジネスに将来の可能性を見いだしていた柴田は、「“火中の栗”も良い加減に焼けていれば食べられる! マイナス(−)とマイナス(−)を角度をずらし合わせて書いてしまえばプラス(+)に変換出来る! 自分がボランティアで2人分働けば、給与も2人分浮く。これでクラブを立て直せる!」と、強引にピンチをチャンスに変えていった。

 今のSSSを見れば簡単に物事が進んでいったかのように見えるが、小さな事業体に安定など無い。この時、がむしゃらになってクラブを何とかしたいという一心でかかわり、今日に至っている。

 そして様々な経緯と苦境を乗り越え、2002年にNPO法人化がなされる。主な設立目的は「スポーツを通じての青少年の健全な育成と、地域社会貢献活動を行う」。この目的を明確にし、NPO化を推し進めたのも当時29歳の柴田だった。「提案した私が全責任を負うためにも、事務局長職を置き、私が全てやります。どなたか異論はありますか?」と、役員、職員の前で宣言した。「SSSをNPOに転換すると言った時の“またこいつは何言っているんだ?”という雰囲気は忘れられません。当時の上部役員の反発も強かったですからね」。

 現在は、認知されてきたといえる社会起業家、もしくは社会的企業の職員であるが、当時は、NPOという事業体の正職員として生活出来る環境は多くは無かった。医療や福祉関係では広がりを見せてはいたが、スポーツ関連ではほぼ無かったといえよう。そこで北海道では初となるサッカークラブのNPO化である。ただでさえ安定的とはいえない業態で、大きな変革を行ったのだ。

 「欧米では優秀な人材ほど、大企業や公務員を目指すのではなく、ベンチャー企業家や、社会起業家を志す者も多いと聞いていた。さらにクラウドファンディングなどの寄付文化も併せ、日本にもいずれはその流れが出来るのではと考えていた。でも当時はスポーツ系NPO法人で生活出来ると思っていた人はほぼ皆無でした」。

 柴田は、学生時代に経営学部で学ぶなど、早くから起業家としての道を模索し、独立心も強かった。それは、中学卒業を控えた15歳の段階で海外に渡ったことも影響している。渡航先はサッカー先進国のブラジル。Jリーグも存在しない時代に、サッカーで生活することはイメージし難かったが、現地のプロクラブ(2部)の下部組織に所属し、その後トップチーム入りが認められるなど、本場のプロサッカークラブという組織をじかに体験していた。SSSのクラブハウスの2階観覧室から見える風景は、当時在籍したブラジルのクラブに似せているという。「ですが、SSSは室内からグラウンドを一望出来ますし冷暖房完備で圧倒的に快適だと思います。ブラジルで在籍したクラブは2部ということもあり財政的にも厳しい環境でしたから」。

 ブラジル留学中に同じクラブに在籍していたのは、8歳年上の橋本知典氏(52歳)。現地でプロデビューも果たした橋本氏と1年間ほど一緒にトレーニングすることになる。その経緯もあり、柴田がドリームプロジェクトを立ち上げた時には、詳しく内容も聞かずに賛助会員となり協力は惜しまなかったという。

 「吉徳君が15歳の時にブラジルで初めて会いました。最初はユース以下と自分がいたトップチームで分かれていましたが、1年ぐらいで吉徳君が最年少でトップチームに上がってきました。練習生枠だったとは思いますが、生き残りを懸けて本当に厳しいクラブでしたから、遊びで入れた訳ではなく、ユースからは1人だけでした。確か吉徳君が慣れた頃に、トップの紅白戦で目立ったプレーをしてしまい、その瞬間に反則タックルを食らって一発で足の骨を折られたと記憶しています。ブラジルでは一試合ごとに生活が懸かっているようなものなので、紅白戦でもやるかやられるかの日本では味わえないような緊張感だったと思います。そのような中、疲れ切った練習後にサッカー関連の特許を取るとか、いつも理解に苦しむ変わった話を聞かされていまして、当時から面白いやつだなーと思っていました」。

 橋本氏は昔を思い出しながらにこやかに語り、「そんな吉徳君が始めるプロジェクトなら、だまされても笑い話にはなると思っていました(笑)。ですが、今回SSSにお邪魔したら、素晴らしい施設が出来上がっていて本当にびっくりです! 本州からみたら羨ましい北海道らしい風景の中、子どもたちもイキイキと練習しているようですし、一サッカー人として心から感激しました!」と、自分のことのように喜んだ。

 上:上段写真/2016年3月30日、年度内ギリギリに完成したクラブハウスの全体像

 上:下段写真/おしゃれなラウンジにも見える特別観覧席。海外クラブのクラブハウスをイメージして設計されており、グラウンドを一望出来る。LEDナイター照明点灯時には緑に輝くように見えるグラウンドは見事で、サッカー関係者がうなるというのも納得だ


 ―この続きにご興味のある方は、ぜひ本書でお楽しみください。通常版はAmazonかコーチャンフォー(新川通り店、ミュンヘン大橋店、釧路店、北見店)で、特装版はAmazonでのみ販売しております(Amazonサイト内で、「SSS札幌」、もしくは「SSSサッカー」で検索するとトップページに表示されます)。

 「あなたも奇跡と呼ばれたプロジェクトの証人となる!?」


【書籍情報】
題 名:「100万円も借りられなかったNPOが、
     街クラブ日本一の施設を造った奇跡の物語」

著 者:北のサッカーアンビシャス編集部
    協力SSSドリームプロジェクト特命チーム
    イラスト担当スエリス

発行所:北のサッカーアンビシャス

形 式:A5版300ページ
   (カラー8P、モノクロ292P内イラスト20P)

価 格:クラブ40周年記念誌(カラー20P)付きの特装版は1,210円
    通常版は1,100円(ヤマトDM便での発送)

販売先:特装版はインターネットモールAmazonでのみ取り扱い中
    通常版はAmazonとコーチャンフォーで取り扱い中
(新川通り店、ミュンヘン大橋店、釧路店、北見店。他店舗はお問い合わせ)

 
編集部