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ルヴァンカップ第4節(4月28日)、福岡に終了間際で追いつかれ、札幌は痛い引き分け

21・05・01
 上:上段写真/過密日程の中で注目された札幌の先発メンバー、どうやら勝ちに行ったようなメンバーだ。左からキャプテンマークを巻いたDF福森(5番)、田中(2番)、MF菅(4番)、高嶺(6番)、駒井(14番)、FWジェイ、GK大谷(22番)、DF岡村(50番)、MF小柏、金子、ドゥグラス・オリヴェイラ(33番)。

 上:下段写真/前半10分、札幌MF金子(9番)が福岡DFカルロス・グティエレス(4番)をかわして右サイドからシュートするが、GKの正面ではじかれCKに逃げられる、左端福岡DF輪湖(22番)、その右宮(5番)。


 ミシャは「バイロンのごとく」

  「事実は小説より奇なり」だ


 イギリスの詩人バイロンの言葉に「事実は小説より奇なり」という名言がある。まさに4月28日の2021年JリーグYBCルヴァンカップの北海道コンサドーレ札幌とアビスパ福岡の1−1の同点劇は、終盤も終盤、84分から90+4分の出来事だった。

 札幌のペトロビッチ監督(愛称・ミシャ)と福岡の長谷部茂利監督も「思いもよらぬ結末」を、見たのでは。やや「福岡に奇があり、ミシャには現実」を突き付けたのではないか。

 試合は札幌ドームで19時3分、西村雄一主審(49=東京都出身)のホイッスルで始まった。コロナ禍の「4次制限」が、ゴールデンウイークを見据えて通達された折から、福岡応援席は30人程度。全体では4千446人の手拍子と太鼓の音頭。ドーム内は20.9度、湿度39パーセント。コンディションは上々。

 キックオフは札幌で、J1第11節(4月24日・札幌厚別競技場)で2−1の決勝点を挙げたジェイ。中3日の対戦だったが、ルヴァンカップAグループの2位札幌(勝ち点6)、3位福岡(勝ち点3)の対戦とあって、札幌は前節から7人の選手を変え、このゲームでベスト2(勝ち点9)を狙い「ベストメンバー」を組んできた。福岡は、札幌に勝てば「勝ち点6」で並び、「焦点が見えてくる」が、前節との入れ替えは1人。ホーム札幌の「武者震いすら」感じられた。

 札幌は、GK大谷幸輝、3バックは岡村大八−田中駿汰−福森晃斗、MFの右ワイドは金子拓郎−左に菅大輝。かじ取り役のボランチには駒井善成と高嶺朋樹が入る。ジェイをトップに、得点を狙う役者に小柏剛と攻守のドゥグラス・オリヴェイラ。控えにはGK阿波加俊太、DF柳貴博、MFチャナティップ・荒野拓馬・青木亮太・小野伸二。現在J1得点王アンデルソン・ロペス(J1リーグで9得点)が、18人のメンバーに入っている。

 一方、福岡はFW渡大生が外れてFW城後寿(35=17年目のバンディエラ)が登場する。福岡はJ2所属期間が長く、今季J1に昇格、18歳からのキャリアは4回目のJ1を楽しんでいる。J1所属チーム対象のルヴァンカップも4回目で、3月3日のホームでのルヴァンカップでは、2−3で札幌に負けたが、背番号10を背負ってフル出場、88分(後半43分)に1得点を挙げていた。

 こんな見どころを抱えて、ゲームはスタート。これまでのJ1・J2、Jリーグカップの対戦成績は札幌の15勝7分け13敗。前半は、札幌9番金子、福岡10番城後が気になる。

 札幌が両サイドの金子と菅の切込みと、相手のチェックで反則が多い。2分福岡のDF輪湖直樹のタックルが反則でイエローカード。最初の札幌チャンスだったが金子のシュートはゴール左上に外れた。ここから25分の飲水タイムまで、フリーキック、コーナーキックの度に福森登場。Dオリヴェイラ、金子、駒井らが、ゴールを狙うがGK永石拓海に止められる。福岡は再三の札幌の攻撃を4−4−2体系でことごとく阻止した。

 アディショナルタイムは3分。47分に福岡がFKで、48分に札幌が小柏の突っ込みでチャンスを迎えるが、いずれも得点には結びつかなかった。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「つなぎの部分の精度を上げていこう」、「チャンスは作れている」、「立ち上がりから集中してゴールを奪おう」

■アビスパ福岡の長谷部茂利監督のコメントはチーム発表なし


 後半は、福岡がキックオフから仕掛ける。札幌はGK大谷まで下げた体制からの展開が増える。福岡はFWフアンマを走らせるロングボール。大雑把なやり取りが収まらない。10分、先に札幌が動いた。DオリヴェイラとFWのAロペスが交代。小柏OUTチャナティップIN。駒井OUT荒野INの3枚替え。福岡もMF森山公弥OUT、MF前寛之IN。DF輪湖OUT、DFエミル・サロモンソンIN。MF吉岡雅和OUT、MF金森健志IN。

 札幌は元気のよいチャナティップの動きにFWのエース、Aロペスが走る。21分やっと落ち着くと思ったら、福岡のFWフアンマが札幌DF田中駿汰の顔にひじをぶつける。イエローカードが出た。福岡から見ると、札幌の金子のマークとチャナティップが要注意だろう。右DF湯澤聖人と後発のエミル・サロモンソンが左右交代してのマークになった(28分給水タイム)。

 34分、札幌は高嶺と小野伸二が交代、福森のCK、FKに疲れが見える。38分、菅にイエローカード。相手のサロモンソンを後ろから引っ張った。

 39分に札幌待望の得点。やはりAロペスだった。左の菅からペナルティーエリア内にいたジェイにボールが入った。ジェイがヘッドで落とす。Aロペスが拾い、DFをかわして左足で決めた。やっと得点。1−0と待望のリード。

 アディショナルタイムは5分。47分福岡がCKを得る。GK永石も札幌ゴール前に忍び寄る。CKは失敗、急いでリターン、GK永石のスライディングでマイボール。FWフアンマから背番号10の城後に出た。エリア内で城後のシュートは、クロスバーにはじき返される。ラッキーマンはFWジョン・マリ。いつ入ったか? 後半28分、MF北島祐二と交代していた。バーに跳ね返ったボールをダイビングヘッドでネットを揺らした。札幌は終了間際で同点にされ1−1でタイムアップ。

 ペトロビッチ監督とコーチ陣に、お願い「J1で仙台に勝った。まぐれではない。トップ3はAロペス、ジェイ、Dオリヴェイラだ。ハイプレスはこの3人で」。

 シュート数は、札12−福岡15、CK札12−福岡3、FK札9−福岡15。PKなし。

 次の試合は5月2日、2021明治安田生命J1第12節北海道コンサドーレ札幌対湘南ベルマーレ戦は、午後3時から神奈川県レモンガススタジアム平塚で行われる。

 2021年YBCルヴァンカップ第5節は、5月5日午後2時から北海道コンサドーレ札幌対サガン鳥栖戦が札幌ドームで行われる。


◆JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ順位表(第4節終了時)

◇Aグループ
       勝点  勝  分  負  得点  失点 得失点差
1位 鹿島  10  3  1  0  13   3   10
2位 札幌   7  2  1  1   9   7    2
3位 福岡   4  1  1  2   5   9   −4
4位 鳥栖   1  0  1  3   3  11   −8

◇Bグループ
       勝点  勝  分  負  得点  失点 得失点差
1位 F東京  10  3  1  0   5   1    4
2位 神戸   4  1  1  2   3   4   −1
2位 徳島   4  1  1  2   2   3   −1
2位 大分   4  1  1  2   2   4   −2

◇Cグループ
       勝点  勝  分  負  得点  失点 得失点差
1位 横浜C  6  2  0  2   4   3    1
1位 湘南   6  1  3  0   2   1    1
3位 浦和   5  1  2  1   2   2    0
4位 柏    4  1  1  2   2   4   −2

◇Dグループ
       勝点  勝  分  負  得点  失点 得失点差
1位 横浜FM 10  3  1  0  11   2    9
2位 清水   5  1  2  1   2   2    0
3位 広島   4  1  1  2   2   7   −5
4位 仙台   3  1  0  3   3   7   −4


 上:上段写真/後半16分、この直前に札幌FWジェイ(左)が福岡DFカルロス・グティエレス(4番)と激突、しばらく立ち上がれなかったが、お互い笑顔を交し合った

 上:下段写真/後半21分、札幌MF荒野(右)と福岡MF前(6番)が競い合う、前は古巣対決、二人はともにコンサドーレのアカデミー出身だ


 上:上段写真/後半22分、中盤の混戦から札幌MFチャナティップ(18番)が荒野(27番)にボールをつなぐ、左端福岡FW城後(10番)、チャナティップの右、福岡MFカウエ(15番)

 上:下段写真/後半32分、押せ押せムードの札幌、DF田中(2番)がペナルティーエリアまで上り、DF岡村からのボールをいったん後方のMF荒野へパスを出す。左手前FWジェイ(48番)、右手前福岡MFカウエ(15番)


 上写真/後半34分、福岡MF前(中央右)が札幌のエースFWアンデルソン・ロペス(11番)と激しくボールを奪い合う。左は途中出場の札幌MF小野(44番)、右奥荒野、札幌出身の前は福岡でキャプテンを務めるほどに成長していた

 上:下段写真/後半37分、途中出場した福岡FWジョン・マリ(30番)が右からのFKのボールにヘッドで合わせるが、札幌GK大谷の正面となる、左端札幌DF岡村(50番)、中央5番は福森、右端田中。ジョン・マリは試合終了直前同点ゴールを決め実力を見せた


 上:上段写真/後半39分、先制ゴールを決めた札幌FWアンデルソン・ロペス(右端)に駆け寄って祝福する選手たち、左へMF荒野、チャナティップら

 上:下段写真/後半39分、先制ゴールを決め、いつものパフォーマンスの後、左手にキスする札幌のFWアンデルソン・ロペス

■北海道コンサドーレ札幌のアンデルソン・ロペス選手のコメント
 「試合に関してはラストの3〜4分までリードをしていて、勝てるかな? と思っていたところで失点をしてしまい、悔しいです。途中出場だったが、監督からは、前の3枚での崩しのところを意識するように指示をされてピッチに入った。得点のところはジェイが落としてくれてのものだったが、あの場面は意思疎通が出来ていました。彼が必ず落としてくれると思っていたし、彼も私が走り込むことを分かっていたと思う。残り2試合勝つことだけを考えてチーム一丸で戦っていきたい」


 上写真/後半追加タイム1分、終盤の福岡の猛攻、MF金森(37番)の突進を止める札幌MF荒野(右)、左端DF田中、GK大谷、荒野の後方に、FWジョン・マリの顔が見える


 上写真/後半追加タイム2分、札幌MF菅(4番)が突進するも福岡GK永石(中央)に止められる、左DFカルロス・グティエレス(4番)、宮(5番)、右奥札幌DF岡村(50番)


 上:上段写真/後半追加タイム4分、福岡FW城後(10番)が正面からシュート、札幌GK大谷(22番)がのけぞるがボールはクロスバーを直撃、この後跳ね返ったボールを途中出場したFWジョン・マリがヘッドで決め同点、城後は“間接アシスト”、中央札幌DF岡村(50番)

 上:下段写真/後半追加タイム4分、福岡FW城後のシュートがクロスバーにあたり、跳ね返ったボールを途中出場したFWジョン・マリ(右から3人目)がヘッドで押し込み同点とし、MF金森(その右)とタッチ。左端は拍手を送るFWフアンマ・デルガド(9番)、右へDF湯澤(2番)、呆然と天を仰ぐ札幌DF柳(3番)、MF菅(4番)、右端DF福森

■アビスパ福岡のジョン・マリ選手のコメント
 (来日2試合目にしての初ゴールの感想は―)
 「自分はいつもどおり勝利のために戦えたことが良かったと思っています。自分がピッチに立ったときは責任を感じてプレーしているので、今日はゴールを決めることができて良かったです」


 上写真/土壇場で同点とされて引き分け、サポーターへのあいさつに迎う札幌の選手たちはまるで敗者のよう、手前左からMF小野(44番)、GK大谷(22番)、DF福森(5番)、MF駒井、FWジェイ、MF荒野(27番)ら

■北海道コンサドーレ札幌の福森晃斗選手のコメント
 「勝てばほぼグループステージ突破が出来る試合になっていたので勝ちたかった。ボールを持つ時間が多く、前半からチャンスを作ることが出来ていたのに1点しか取れていなかったのは試合に出ていた選手の責任だと思う。そして一瞬の隙から失点をしてしまったことも自分たちの甘さ。課題の残った試合だと思う。今日は僕がボールを持ったときにジェイと小柏(剛)が相手の背後を突く動きをしてくれていたので、そこを狙ってはいたが、もっと良い精度のボールを蹴れていれば・・・と反省している」


 上:上段写真/前半32分、FWジェイ(右)に発破をかける札幌にペトロッチ監督

 上:下段写真/前半14分、まるで踊っているように指揮を執る福岡の長谷部茂利監督

■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「前半良い入りができて、多くのチャンスを作れた。本来ならば前半に2点リードしなければいけなかった。だが、決め切れず0−0で折り返すこととなってしまった。後半も比較的良い入りができていたのだが、ケガ明けの選手がやはりまだまだ本調子ではないと見えた。その中で交代を使いながら試合を進めていったが、やはりなかなか勝利に結びつかないというのは、選手がそろわないから、というのが1つ言えるだろう。
 最終的に相手のパワープレーを防ぎ切れなかったが、選手はよくやってくれたと思う。今日の引き分けを前向きに捉えながらやっていきたい。グループステージ突破という目標に向けて今大会は戦っていきたいし、リーグ戦でも良い結果を出せるようにみんなでやっていきたい」

■アビスパ福岡の長谷部茂利監督のコメント(一部抜粋)
 「前半は我々の左サイド、札幌さんの右サイドから崩された場面が何回かあって、危険だったなという思いがあります。ただ、どうにかしのいでという形で、後半の終盤に勝負をもっていけるかなと思いましたが、先に失点してしまい、勝つには難しい状況になってしまいました。ただ最後の最後に追いついて、グループステージが終わらず第5節、6節に望みをつないだ、そんな思いです」

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影