北海道コンサドーレ札幌の王道と遍歴2020年2月号

天下泰平
「てんかたいへい」とは平和な世界
ドイツ語でFRIEDEN IM GANGEN LAND北海道コンサドーレ札幌が戦う目標
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の心
選手とスタッフが全て前年と同じで
タイ強化合宿を終えて「機運上昇」
   
J1リーグは昨年は10位で終わる
得点54は4位で失点49は11位
この現象を取り戻すのがハイプレス
攻撃陣のボールポゼッションが必要
得点を狙って敵陣深くまで展開する
欧州の各国リーグが変身しつつある

ハイプレスの根幹は選手の相互理解
相手チームゴール前でポゼッション
FWプレーヤーWBが加わって回す
最近の欧州リーグでは得手と不得手
監督や選手サポーターの好き嫌いも
何か奥深いものがさ迷っていそうだ

ミシャ監督の決断は「元日決戦」か
新国立競技場でヴィッセル神戸に花
鹿島アントラーズに2−0で天皇杯前半は左のイニエスタがハイプレス
後半は右の西大伍のポゼッションだ
日本の空にハイプレスの手本を見た
コンサドーレ札幌の王道と遍歴
 1月11日開催の「キックオフ2020」で今季の抱負を熱く語るペトロビッチ監督。札幌市豊平区の北海きたえーる、撮影・石井一弘
コンサドーレの王道を拓く
監督の予言「ハイプレス」で進歩の予感
 NHKの「チコちゃんに叱られる」―じゃないけど、合宿後半になって北海道コンサドーレ札幌のプレーヤーの「本音」が垣間見られる。毎年の「決まり文句」だが今年は、監督が「ハイプレス」。三上GMは「北海道から、世界へ」。運営会社の社長は「違う世界を見たい」。ファン・サポーターは「涙が出る試合(勝っても負けても)が見たい」。キャプテンは「あと一歩」。GMがFWとGKに新外国人を1人ずつ加えた。「良いと思う」と筆者賛同。識者の「ご意見」を参考に2020年のコンサドーレを立ち上げてみよう。
ミシャ監督の「ハイプレス」
 3年目を迎えるミハイロ・ペトロビッチ監督(62=愛称・ミシャ)。J1リーグ3年連続残留とは、四方田修平ヘッドコーチ(46=2017年J1昇格時監督)の17年、J1キープは18、19年と、続投のミシャ監督がコンサドの記録を伸ばしつつある。
 当然ベスト3狙いと、五輪イヤーの代表確保、後のカタールW杯・JAPANを見据え、代表監督の森保一監督の「育ての親」としての「応援」も忘れない。
 ミシャ監督は毎年「課題」を持ってチームを指導している。今年はタイ合宿の後の会見で、チーム全体で高い位置でのパス回しを強調「ハイプレス」を選んだ。ピッチを3等分して、相手方のペナルティーエリア先端からゴールまでの間のスペースで、いかに長い時間ボールキープが出来、よしんば得点に結び付けるかを、『狙い1』にしている。さらにFW鈴木武蔵がタイ合宿終了時のインタビューで「今季の課題、前線からのプレスをかける形を磨きたい」も「ハイプレス」の『狙い2』の部類に入るか。
 この「ハイプレス」は、欧州リーグで数年前から取り入れられているが、深く追及すると、個の力を得点に結びつける「個性」のあるチームは不得手。パス回しの多いチームは得手と言えるだろう。
 日本でも、昨年J1優勝の横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督(54=オーストラリア)が、とことんパス回しに執着している。「攻撃の始まりはGKから」と言うほどで、練習中でも「1、2から6、7」と数えるほどで、パス&パスを強調している。アグレッシブな攻撃は「ハイプレス」の根源だろう。右DFに昨年、レノファ山口から移籍した道産子・前貴之(26=札幌U−18出)が、頑張っていた。起点になる選手の可能性を秘めている。
FW陣の強化がカギだ
 2月3日の沖縄キャンプから、ブラジルのFWドゥグラス・オリベイラ(25)が練習に参加した。188センチ、88キロの体格はジェイ(37=190センチ、89キロ)並みの巨漢。三上大勝GMの話では「長身でスピードとパワーがある。技術はまだ荒いところはあるが、何かやると感じている」。オリベイラは「早くチームに慣れて、貢献出来る選手になりたい」。練習に入った後では「不安はない。挑戦したい」と言い、2007年から2年間コンサドで背番号10を背負ったダヴィ(35=ブラジル)に似ている。ダビィは2年間で33得点、J1復帰を果たして、名古屋グランパスに移籍した。
 オリベイラの加入は、FWに今季から入る菅大輝をはじめ、鈴木、ジェイ、アンデルソン・ロペス、藤村怜の5人プラス1で、6人。鈴木武蔵、菅大輝、進藤亮佑やタイのチャナティップのW杯候補を抱えての「うれしいやりくり」でもある。
宮澤キャップの「あと一歩」
 強化合宿が沖縄に移動して、テストマッチが増えてきた。報道陣の試合後の出来栄えや、監督の「これでいいんだ」との成長過程を「分析」したコメントが、ちょっとずつの食い違いがある。ここで「チコちゃんが登場」、「ボーッと生きてんじゃねーよ」になるが、プレーヤーの「スタメンが取りたい」、「試合にたくさん出たい」、けがで練習出来ないが3、4人束になる。名指しで報道されるが、本誌は「いつもの仮病」と耳を貸さない。不調のタイ代表もやっと「やるしかない」と前を向いた。5年目のキャプテン宮澤裕樹が昨シーズンから「気にしている」のが、ルヴァンカップ準優勝と、リーグ終盤に来ての、ガンバ大阪0−5、セレッソ大阪0−1、横浜F・マリノス2−4、ジュビロ磐田1−2、川崎フロンターレ1−2の札幌ドームが、多分繰り返してはいけない「あと一歩」だろう。
ボールポゼッションの研究
 サッカーの試合は45分ハーフの前後半90分が、Jリーグの決まりである。今は機械で空中から各チームの、はたまた個人のキープ量まで出る。しかし、本物なのだろうか。ワンタッチやドリブルして、その先は誰に「チームに貢献した」パス、キープ、ドリブル、ヘッド、胸パス、ヒールパス、ボールをまたいだスルーパス、などなど。
 サッカーの専門誌やノウハウものを書いている西部謙司氏(57=東京都出身)は著書やスピーチの中でプロの選手らの「1人が1試合にボールに触れている時間は2分程度」と、言っているのを思い出した。1960年代の東京教育大・球技研究室の「卒論」にそれらしきものがあった。現・筑波大の研究室で、JFAの田嶋幸三会長もここの教授を務めたこともある。
 この「ボールポゼッションの論文」は多和健雄教授のもとで、当時の蹴球部の卒業生がまとめ上げたもの。5、6人の「共著」で、当時、かかわったアシスタントは、多いときは20人以上。地震計のような記録用紙に、試合中の選手を、1選手を1人が担当してボールタッチのタイムを計った。その平均が「2分」だった。サッカーに携わった選手とアシスタントだったので、機械よりも「確実」だろう。
 そうなると、11人×2チーム×2分では44分。試合時間の半分は選手がボール扱いをしているが、後の半分は、ボールデッド。空中を飛んでいるか、アウトオブバウンズか、コーナーキック、フリーキック、など。選手にしてみれば「カラッパシリ」こそ「位置取り」での優位さを出す。スタッフとプレーヤーが「目標を見据えた」ゲーム展開を一つにして戦う「システマティック」になるのだろう。
 「ハイプレス」を選んだ監督・選手、それにサポーターに幸あれ。
FUJI XEROXで開幕
PK戦双方9人が連続NOゴール
 2月8日、早くも2019年Jリーグ覇者の横浜F・マリノスと2020年元旦決戦・天皇杯優勝のヴィッセル神戸が、トッププロ決定戦の「FUJI XEROX SUPER CUP 2020」で対戦した。午後1時35分から埼玉スタジアム2002で気温12.3度、湿度37パーセントの中で行われた。観衆は約5万1千397人。近隣のマリノスのファンが多いようだった。試合は90分で3−3のままPK戦が行われた。先蹴りはマリノス、連続2人が決め2対2。ここからが波乱、マリノス5人が外し、神戸は4人が外し(いずれもGKブロックを含む)。最後に決めたのは神戸・山口蛍。Jリーグの新記録を作って決着した。
 神戸GKの飯倉大樹はマリノス一筋に14年のベテランで昨季から神戸のゴールマウスを守った。神戸はこれで令和2年のオリンピックイヤーに早くも2連勝を飾った。札幌は、2019年J1リーグで神戸にはホーム2−1、アウエー3−2で2連勝している。マリノスには1勝1敗。
 PK戦を見ていて、ルヴァンカップ決勝戦を思い出した。「あと1人が決めれば優勝」のプレッシャーは、あんなに強力なものか。PKは魔物だ。
 2月16日にルヴァンカップが始まる。サガン鳥栖とのアウエーだ。宮澤キャプテンは「忘れられない」と思うが、一戦一戦の積み重ねだ。まだ先を見ても仕方がない。当面の相手を研究して「チームのまとまり」を指揮しよう。
VARシステムの導入
 注目のビデオアシスタント・レフェリー(VAR)が、Jリーグでも採用が決定した。会場の掲示ボードにも結果も映し出す。FUJI XEROX戦でも公開されたが、「理解に苦しんだ」。「誰かの一言」が欲しい。審判アセッサーはいかがするのか―。
                                                    (池田 淳)