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J1第28節(11月21日)、Aロペスありがとう 清水に5−1で勝利

20・11・25
 上:上段写真/前半5分、清水DFファン・ソッコ(右から2人目)が先制ゴールを決め、MF竹内(6番)と喜ぶ、右端FW後藤(14番)、左端DF立田(2番)、その右FWカルリーニョス・ジュニオ(10番)、手前札幌FWジェイ(48番)はぼう然

 上:下段写真/前半10分、札幌MF荒野(27番)が清水ゴール前に迫るも清水MFヘナト・アウグスト(22番)にタックルされた瞬間、荒野の左足首が異様に曲がっているように見える。開始早々に先制された上、主力の荒野が負傷退場となり暗雲が立ち込める・・・

   (写真はいずれも11月21日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)


 A・ロペスありがとう

  宿敵・清水から5得点

 ミシャ監督が「ハイプレス」に加え「ビルドアップ」を考案した。得点を取るための「逆算だ」。素早く言うと、この選手は止めてからシュート、来たボールをダイレクト、ヘディングシュート、反転シュート、ドリブル・シュート、さらにシャペウ、また抜き、etc。

 この癖を見抜いて「逆算して」起点に立って攻めの体制を作る。この先陣に選ばれたのが、キャプテン宮澤裕樹と荒野拓馬だ。札幌ドームでサポーターに見てもらえる今季の最後2試合だ。得点力がイマイチで、点取り屋を探していた。FWのジェイ、アンデルソン・ロペス、ドゥグラス・オリベイラ。もう一人の外国人にウーゴ・ヴィエイラ(32=ポルトガル出身、178センチ、7キロ、A型)。2017年、18年と横浜F・マリノスに所属、2年間でJ1では59試合で23得点、ルヴァンカップ戦では15試合8得点、天皇杯8試合9得点。2年間で40得点を挙げた。

 マリノスは17年のJ1リーグで5位、18年12位だったが翌年の19年4度目の優勝を飾った。ルヴァンカップは18年準優勝、天皇杯は17年準優勝の成績を収めている。記者仲間ではヴィエイラは小柄で「ひょっこりと現れる」と、トップからの展開も期待できる。A型がいいネ。

 FW鈴木武蔵の去った後の期待もあるが、どちらかというとポストプレーが得意で「キラーパスは最終的なビルドアップ」。新型コロナウイルス陽性から立ち直った左のFW菅大輝、藤村怜、チャナティップら。さらに金子拓郎、ルーカス・フェルナンデスらが「ビルドアップを引き出しながら、前線に立ってほしい」。

 狙いどおりの展開ができれば、と期待が大きかったが、11月21日札幌ドームで行われた2020明治安田生命J1リーグ第28節の北海道コンサドーレ札幌と清水エスパルス戦で札幌のMF荒野拓馬が「先陣を受けて立っていた」が、前半10分、相手タックルで大けが「左足首骨折の恐れがある」との診断で、今季の復帰は、今のところ「不可能」。痛々しく担架で運ばれピッチを去った。

 試合の方は午後2時3分、中村太主審(42=埼玉県出身)の笛で札幌がキックオフした。札幌ドームは気温21.1度、湿度50パーセント、5千220人の観衆(アウエー席には100人ほど)が、拍手と太鼓の音で試合を盛り上げた。

 札幌は14日の先発メンバーからFWのDオリヴェイラとAロペスが外れ、GK菅野孝憲、DF田中駿汰−キム・ミンテ−福森晃斗。右ワイドに金子拓郎、左にルーカス・フェルナンデス。ボランチは宮澤裕樹と高嶺朋樹。トップ下に駒井善成と荒野でトップにはジェイが入った。陣形は3−4−2−1のペトロビッチ監督の得意の形。

 控えにはGKカウィン、DF石川直樹、MF白井康介・深井一希と菅大輝、FWアンデルソン・ロペスと新加入のウーゴ・ヴィエイラが入った。

 清水は3試合前にピーター・クラモフスキー監督(オーストラリア)を更迭、コーチの平岡宏章氏(51=静岡市(旧清水市)清水商高−順天堂大出身)が昇格し就任。平岡監督は1996年コンサドーレ札幌のDFとして7試合に出場した。その後アルビレックス新潟などでもプレーしていた。

 チームはGK2年目の梅田透吾(20)、DFエウシーニョ−ヴァウド−立田悠悟−ファン・ソッコ、MFに西澤健太−ヘナト・アウグスト−竹内涼−中村慶太、FWは後藤優介−カルリーニョス・ジュニオ。控えにはMF宮本航汰、西村恭史、金子翔太、FWティーラシン・デーンダーと鈴木唯人。布陣は4−4−2だが、3−4−2−1のミラーにしたい意向。監督が代わり3試合目。ヴィッセル神戸とセレッソ大阪に勝ち2連勝で、古巣コンサドーレと対戦する。

 開始5分、清水が先手を取る。ピッチの左側からDFファン・ソッコが抜け出しFWジュニオに渡し、ペナルティーエリア内の後藤へ。丁寧に落とされたボールをファン・ソッコが右足のシュート。GK菅野が中央に立ちっぱなしで(ブラインドになったか)見送り、ゴール左下に入った。札幌はあっけにとられた形だった。

 続く11分、荒野の悲劇が起きる。清水MFアウグストのタックルを受けた荒野が足を押さえて倒れ込む。主審が医療員を呼び、担架を入れる。荒野は足を押さえて担架で運び出される。気丈な荒野だがこの時ばかりは、ぐったり寝たままスタンド下に消えていった。

 このアクシデントで13分、荒野OUT→ロペスIN。悲劇はここで終了。清水ゴール前、左の札幌・福森がシュート。エリア内で清水DFの防御。「手に当たった」とアピール。バックスタンド側の線審と中村主審が「PK」と判断。荒野に代わったロペスが、ジェイと言葉を交わしたが、ロペスに任された。ロペスはGKの動きを見ながら左足で決めた。これで1−1の同点(24分飲水タイム)。

 札幌のFWは、ジェイとロペス。長身の2人が前後左右にボールを動かし、ワイドのルーカス(左)と逆の金子にボールを預ける。36分、均衡が崩れた。金子が右エンドラインぎりぎりから反対のルーカスへ。ルーカスのリターンはちょろっとジェイの前に。ゴール中央にいたロペスにジェイから浮き球。難なくロペスが2点目。清水はぼうぜんとゴール前に立ち尽くした。

 40分、福森に左CKの番が来た。一度ははじかれたが、ボールは福森の前に。逆のファー・サイドにはキム・ミンテ。福森が右に蹴り込み、清水DFが触ったボールをミンテはそのままゴールに叩き込んだ。いつになく福森のキックの正確さが光った。3−1で札幌優位のままアディショナルタイムは3分が過ぎる。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「ビルドアップの精度を上げていこう」、「コミュニケーションを取ってはっきりプレーしよう」

■清水エスパルスの平岡宏章監督のコメント
 「守備の時、引いて受けないこと」、「シンプルにペナルティエリア内に人もボールも入れていくこと」、「あと45分、逆転してチームの力を見せよう!」


 後半は清水の選手交代から。FW後藤がFW鈴木と交代。互いにゴールを脅かすが、得点に結びつかない。目的を持っていたのは宮澤。「ビルドアップ」が気にかかったか、DFセンターのキム・ミンテと交互に前進・後退を繰り返す。ボランチの片方を高嶺に任せていたが、高嶺もボールに触りたい。鬼のいぬ間に金子や田中の前まで遠征。がっちり清水の中盤をかけまわる。

 19分ジェイの出番だ。左の福森が同サイドのルーカスへ清水の守りの頭上を打ち抜くようなボールの遊泳。ルーカスは中央にボールを入れる。エリア内に走り込んだのはジェイ。左足に乗せたようなボレーシュートが清水ゴールの右下に決まる。ロペス2得点、キム・ミンテ1得点、ジェイ1得点の4得点目。

 札幌も交代ラッシュ。ジェイと新参者の顔見せヴィエイラ。金子と元気になったMF菅(24分飲水タイム)。清水もMF竹内からMF西村へ。MF西澤とFWティーラシン。互いにニューフェイスは勢いがある。

 28分、清水ペナルティーエリア手前で札幌がFKを得る。30メートルぐらいか。福森がボールをこねる。今季はFKゴールがない。ふと思い出した。CK崩れのキム・ミンテへのファーへのボール。昨季まではあそこへ背番号3進藤亮佑がいた。ファーへカーブするキックが少ないのか「気が乗らないのか」。

 さて、福森のFKが始まる。左45度だ。左足でキックされたボールが浮いて曲がって落ちる。GKの伸ばした手を超え、「美しい軌道を描いてゴールネットを揺らした」。フリーキック職人福森にはちょうどよい距離だった。悪夢のスタートから一転、とどめの5得点目で快勝を飾った。

 次の2020明治安田生命J1リーグ第30節は11月28日午後2時から、北海道コンサドーレ札幌(13位)とサンフレッチェ広島(8位)がエディオンスタジアム広島で対戦する。


 上:上段写真/前半17分、札幌DF福森のシュートを清水DFエウシーニョがハンドの判定でPK、負傷退場の荒野に代わって急遽途中出場したMFアンデルソン・ロぺスがPKを決め同点とする、後方右端高嶺

 上:下段写真/前半17分、同点となるPKを決めチームメイトに祝福され笑顔を見せる札幌FWアンデルソン・ロペス(左端)、右へMFルーカス・フェルナンデス、FWジェイ、MF宮澤

■北海道コンサドーレ札幌のアンデルソン・ロペス選手のコメント
 「非常に良い内容の試合だったと思う。守備も堅く、攻撃も良い形ができていた。その中で5得点できたので、非常に良い勝利だった。得点のところは、PKは得意だし、蹴るつもりでいたが、ジェイも僕が蹴るように促してくれたので自分が蹴った。うまく決めることができた。2得点目は時間帯として相手に圧をかける状況で、その中で落ち着いて胸トラップをして決めることができた。この2ゴールをタクマ(前半にけがをして退場した荒野選手)に捧げたい。札幌ドームの雰囲気が良いので、そうした環境の中で戦ったことが勝利につながったとも感じている」

 上:上段写真/前半36分、逆転ゴールを決めた札幌MFアンデルソン・ロペスがよっぽど嬉しかったのか、アシストしたFWジェイ(48番)を抱き上げる、右DF田中(32番)。

 上:下段写真/前半36分、逆転ゴールを決め両手を突き上げてサポーターにアピールする札幌MFアンデルソン・ロペス(11番)、右へアシストしたFWジェイ、起点となったMFルーカス・フェルナンデス(7番)、右端清水DF立田(2番)


 上:左側写真/前半39分、札幌DF福森の左CKからの流れで札幌への加入後の初ゴールを決め、DF田中(32番)とタッチして喜ぶキム・ミンテ

 上:右側写真/前半39分、札幌加入後初ゴールを決めポーズするDFキム・ミンテ


 上写真/後半13分、札幌MF駒井(14番)が清水MFヘナト・アウグスト(22番)、MF鈴木(37番)に挟まれながらも懸命にボールをキープ、右端MF宮澤、左端清水DF立田(2番)


 上:上段写真/後半19分、札幌DF福森のタテパスを後ろ向きのまま中央へパスを出して、FWジェイのゴールをアシストするMFルーカス・フェルナンデス。手前清水DFヴァウド(5番)、左DFエウシーニョ(18番)

 上:中段写真/後半19分、札幌FWジェイ(48番)がゴールを決め、アシストして倒れたままのMFルーカス・フェルナンデス(右)の所に走り寄っていく、その左MFアンデルソン・ロペス(11番)。清水の20歳のGK梅田は苦笑いするしかない、左端DFヴァウド

 上:下段写真/後半19分、4点目を決めた札幌FWジェイ(中央)が倒れていたアシストのMFルーカス・フェルナンデス(左)を引っ張り上げ笑顔がはじける、右のアンデルソン・ロペスもうれしそう


 上写真/後半27分、札幌に加入しチームに合流してわずか5日目のFWウーゴ・ヴィエイラ(9番)がゴール前に迫るが、この後清水MFヘナト・アウグスト(22番)に倒されFKを得る。これが福森の直接FKのゴールにつながった

 上:下段写真/後半28分、札幌DF福森(中央)が新加入のFWウーゴ・ヴィエイラが倒されて得たFKを直接決め今季初得点、「どうだ!」と言わんばかりの表情。コロナ感染から復帰して途中出場したMF菅に祝福される、左清水DFファン・ソッコ(3番)、右MF鈴木(37番)

■北海道コンサドーレ札幌の福森晃斗選手のコメント
 「先制点を奪われたが、自分たちならば逆転できる自信はあった。それを信じて90分戦えたことが、5−1のスコアへとつながったと思っている。自分が得点したFKのところは、距離はあったが、GKが壁寄りに立ってくるという予測ができていたので、ファーサイドに決めることができた。蹴った瞬間はミスしたようにも感じたが、うまく内側に入ってくれた。できれば無失点で終わりたかったが、最後まで戦う姿勢を見せることができたと思っている。勝ち癖をつけたいので、来季を見据えて残りの試合を全勝するため、次節に向けて準備していきたい」

 上:左側写真/前半34分、札幌DF福森(5番)が清水MF西澤を背にボールをキープ、福森はこの試合、札幌5得点の内、自らのFKでの得点を含め4得点にからむ大活躍を見せた

 上:右側写真/前半39分、左CKをける札幌DF福森、このボールははね返されるが、自分の所に戻ってきたボールを再びクロスで入れ、キム・ミンテの初ゴールにつなげる

 上:下段写真/後半28分、新加入のFWウーゴ・ヴィエイラが得たFKを直接決め今季初得点した札幌DF福森(右から2人目)が走り寄るMF駒井(14番)から祝福を受け笑顔を見せる、11番はアンデルソン・ロペス、右奥でペトロビッチ監督は笑いが止まらないといった感じ


 上:上段写真/後半35分、清水左CKからMFヘナト・アウグスト(22番)がヘッドでシュートするが札幌MF宮澤(その奥)が対応して防ぐ。ジャンプする清水DFヴァウド(5番)には初得点したDFキム・ミンテがきっちりマークしていた

 上:下段写真/5−1と完勝し安堵の表情の札幌の選手たち、左から8試合ぶりのMF深井(8番)、FKを直接決めるなど大活躍のDF福森(5番)、DF田中(32番)、GK菅野(1番)、コロナ感染から復帰したMF菅(4番)、MF高嶺、白井、右端チームに合流して5日目で途中出場したFWウーゴ・ヴィエイラ(9番)、初得点したキム・ミンテ(その左)


 上:左側写真/後半19分、札幌の4点目を決めたFWジェイ(48番)を迎え満面の笑みを見せるペトロビッチ監督

 上:右側写真/前半25分、飲水タイムを終えピッチに戻る選手に、さらに指示を出す今季途中からチームを率いる清水の平岡宏章監督


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「(試合の)入りが非常に不安定な中で先制点を許し、難しい展開だった。だが、選手たちは落ち着きを取り戻してゲームをコントロールしていった。その中で逆転できたのは良かった。しかし、荒野(拓馬)のケガはショックだった。チームとしても難しい状況になった。だが、その中でも選手たちは戦ってくれて、勝利に値するプレーをしてくれた」

■清水エスパルスの平岡宏章監督のコメント
 「今週1週間、札幌に勝つために準備をしてきて、非常に良い形で自分たちの狙いどおりの得点を奪えたところまでは良かったと思います。その後、先制点が早かったからか分からないですが、相手の攻撃に身構えてしまったところがあります。2失点目と3失点目の間が4分くらいしかなかったと思いますが、3点目を奪われないで後半に折り返していれば、また変わった展開になったかもしれません。そこが反省点だと思います」

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影