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J1第30節(11月2日)、名古屋相手に深井・武蔵・ルーカスで3得点

19・11・05
9・8・7「事実は小説より奇なり」
深井・武蔵・ルーカスで3得点

 ペトロビッチ監督が北海道コンサドーレ札幌をルヴァンカップ準優勝の「偉大な夢」から見事に立ち直らせた。

 明治安田生命J1リーグ第30節は11月2日午後2時から札幌ドームに名古屋グランパスエイトを迎えての一戦。中7日の通常スケジュールだが、夢に描いたルヴァンカップは、CK(コーナーキック)、FK(フリーキック)でリーグNO.1得点源、DF福森晃斗を90分+15分ハーフの延長前半で交代させざるを得ない疲労に追い込んだほどのコンディショニングが札幌イレブンにのしかかっていた。

 ホームでの名古屋戦、記者会見の冒頭でミシャ監督が触れたのはやはりルヴァンカップの事。中7日でのコーチィングスタッフの疲労回復と個々の「気持ちの在り方」。昔からの「根性」とか「大和魂」だけでは「前向きな気持ちの転換」は出来ない。中身は黙して語らずだが、その効果が出たのがMF深井一希の1点目。福森のCKをカップ戦と同様にゴール中央からヘディングで叩き込んだ。

 試合の方は、トップに鈴木武蔵、右シャドーにアンデルソン・ロペス、左がチャナティップ。ボランチはキャプテンマークを付けた荒野拓馬と深井。ウイングバック(WB)右ルーカス・フェルナンデス、左は菅大輝。3B(スリーバック)はお決まり進藤亮佑、キム・ミンテ、福森でGKはク・ソンユン。

 名古屋は4−3−3で、9月から就任したイタリア出身のマッシモ・フィッカデンティ監督(51)。選手時代はディフェンシブなMFで、2トップ気味のFWの下に攻撃指令を置いている。

 札幌ドームは、赤く光る腕輪を着けたコンサドーレサポーターと名古屋ゴール裏に約5百人が陣取った。観客総数は1万9千9百43人で、山岡良介主審(38=秋田県出身)。午後2時03分札幌の鈴木のキックオフで始まった。

 札幌は低い位置からビルドアップ、名古屋陣内に入るが、引きが早い守備に武蔵―A・ロペスが攻めあぐむ。チャナティップが細かい切り返しからトップに入れるが、封じられる。逆のルーカスはドリブル突破を試みるが、頭を塞がれ、シュートで終われない。名古屋は、2トップが交互に攻めるが、カットされると一目散に守備体制に入る。

 このようなやり取りの中、前半35分に札幌がCKを得る。背番号5福森が左足でゴール中央にアウトサイドに入ってくるボール。キム・ミンテ、武蔵らがダミーで中央を空ける。難なく走り込んだ背番号8深井が豪快にヘディングシュートを決めた。ルヴァンカップ(10月26日)の後半終了間際の50分(追加タイム5分)の敗色濃い1−2を同点に追いついた札幌の深井の一撃を再現したような「深井ヘッド」。走り込んだ深井はノーマークだったように見えたが、福森のボールに食らいつくような美技だった。


【両監督ハーフタイムコメント】  
■札幌・ペトロビッチ監督
「展開を予測してプレーしよう。ビルドアップは慌てずにボールを回そう。後半の入りは特に集中力を高めて入ろう」

■名古屋・フィッカデンティ監督
「チャンスは出来ている。粘り強く闘おう」


 後半が始まる。お互いにサポーターが待ち受けるゴールに向かって攻める。札幌のベンチにはFWジェイ、MF宮澤裕樹、中野嘉大らが待ち受けるが動きはない。名古屋もFWジョーを先頭に前田直輝らが攻めあがって来る。荒野の動きがDFの最終ラインから持ち上がり、中盤のチャナティップらとワンツーのパス交換で攻め上がる。

 後半18分に右CKを名古屋にクリアされた後、ベンチが動き長身のジェイが登場、A・ロペスが交代した。後半19分に再度、札幌が左サイドのCKを得る。福森がスタンバイ、ここは実らなかったが、コンサドーレの攻撃にバリエーションが出た。ジェイ―武蔵のパス交換に18番チャナティップが加わる。今のJリーグトップ3のやり取りでは「最高のパス交換」だろう。

 後半26分ボールはジェイからチャナに渡り鈴木へ。鈴木はペナルティーエリア内に進入、相手DF吉田豊が鈴木の後ろから馬乗りになって襲い掛かった。山岡主審はファールの仕草。やや経ってレッドカードを挙げた(VARを確かめたようにも見えた)。PKはボールを抱えたままだった武蔵が、見事に決めた(Jリーグ10点目「今季は15得点をめざしている」と会見で語った)。

 3点目は、ルーカスの札幌初ゴール。このパスワークが凄い。ミシャのうれしそうな姿。チャナから武蔵、さらにジェイ。ジェイは武蔵の向こう側3線速攻の一番外れに走り込んだルーカスに。右足でオーストラリア代表のGKランゲラックの左に流し込んだ。

 これでコンサドーレ札幌は勝ち点43、7位に順位を上げた。だがベスト3には届かないことが分かってしまった。第31節は11月9日午後2時から3位の横浜F・マリノスとアウエーのニッパツ三ツ沢球技場で対戦する。

   (写真はいずれも11月2日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)


 上写真/前半35分、先制ゴールを決めガッツポーズで喜びを表す札幌MF深井(左から2人目の8番)、MFアンデルソン・ロペス(11番)が走り寄る、右端DF進藤(3番)、左端キム・ミンテ(20番)

■北海道コンサドーレ札幌の深井一希選手のコメント
 「ルヴァンカップを終えたばかりの試合。対戦相手も必死な状況のチームなので、難しい試合になると思っていた。でも、そうした中でもしっかりとボールを動かしながら、自分たちのサッカーを見せることができれば絶対に勝てると思っていた。得点のところは自分へのマークが今日もあまり厳しくなかったので、取れそうな予感はあった。残り試合、1つでも多く勝ってより上位に行きたいし、そしてその前にあるポジション争いを毎日しっかりと勝っていきたい」


 上写真/後半6分、名古屋の右CKからの攻撃を札幌MFアンデルソン・ロペス(11番)がヘディングでクリアする


 上写真/後半10分、名古屋FW前田からのFKの攻撃、チョコンと出したボールをMF長谷川アーリアジャスール(9番)が折り返し、走り込んだ米本(2番)がシュートするが、左ゴールポストに当たり、札幌は一瞬ヒヤリ

■名古屋グランパスの米本拓司選手のコメント
 「試合に敗れてしまって、申し訳ない気持ちがとても強い。たくさんのサポーターが遠くまで応援に来てくれたので……。試合に関しては相手が前がかりになるということで、いろいろな戦術を試して準備をしてきました。基本的には守備ブロックを敷いて、奪ったところで前に出ていこうというやり方だった。ただ後ろに重くなってしまったし、前で奪えた場面もあったが、そうしたところでしっかりと結果につなげることができなかったので、悔しい」


 上写真/後半23分、札幌FW鈴木がゴール前にドリブルで持ち込んだが、名古屋DF吉田に倒されPKを得る、スタンドのサポーターも皆、「PKだ!」といった表情、吉田は一発レッドカードで退場、右端MFルーカス・フェルナンデス(7番)


 上写真/後半23分、札幌FW鈴木(中央)が名古屋DF吉田に倒されPKを獲得、「俺が蹴るぞ」とばかりボールを放さない。左名古屋DF丸山(17番)、右札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)


 上写真/後半26分、札幌FW鈴木(9番)が自ら得たPKを落ち着いて決め追加点を上げる、右端名古屋FW和泉

■北海道コンサドーレ札幌の鈴木武蔵選手のコメント
 「PKを獲得した場面はチャナティップから素晴らしいボールが来たので、良い形で持ち出すことができた。後ろから相手選手が来ているのが分かっていたので、スピードを落としたところでファウルをもらうことができた。その後は、自分がPKを蹴りたかったのでずっとボールを持っていた。今日の得点で二ケタ得点にすることができたが、今季は開幕時から15得点を目標にしていたので、残り試合でそれにたどり着けるように得点を狙っていきたい」


 上写真/後半41分、札幌中央からMFチャナティップ、FW鈴木、ジェイとワンタッチでつないだボールをMFルーカス・フェルナンデス(7番)が決め、嬉しい初ゴール。倒れている名古屋FW和泉を踏まないようジャンプして飛び越える


 上写真/後半41分、初ゴールを決めた札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)がガッツポーズでこの表情、左後方FW鈴木(9番)


 上:左側写真/後半41分、厳しい表情で選手を鼓舞する札幌のペトロビッチ監督

 上:右側写真/前半14分、大きなジェスチャーで選手を鼓舞する名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督

■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「やはりカップ戦決勝をPKまで戦いながら、際どいところで敗戦。われわれにとって厳しい、難しい1週間でした。今日がいかに難しいかということをサポーターは理解してくれていて、われわれを後押ししてくれた。カップをほぼ手にしながら負けた。その敗戦があったとしても、サポーターの皆さんが称えてくれた。彼らの思いというのは、非常に伝わっています。そして北海道の人々だけでなく、日本の多くの人々が、われわれがどういうチームなのかを見てくれたと思っている。

 名古屋は残留を争うチーム。そういう相手との戦いは非常に難しい。そして決勝後の初戦ということもまた難しい。決勝で力を使い切った、そう思われていた方も多いと思う。でも、われわれはサポーターのためにも、何がなんでも勝ちたいという思いがあった。われわれは決勝の舞台だけでなく、常に良い戦いができるということを見せるんだということを選手は示してくれたと思います。立ち上がりから試合をコントロールしてくれましたし、最後までわれわれが勝利に値する戦いを見せてくれたと思っています。選手を褒めたいと思いますし、後押ししてくれたサポーターにも感謝をしたい。いろいろなことを経験してわれわれは強くなっていくのだと思っています。

 忘れてはいけないのは、今日のスタメンは平均が24.7歳。これだけの若いチームは、リーグを見渡しても存在しないでしょう。そんなチームが見せてくれたプレーも素晴らしかったと思います。そして5人の地元出身選手が活躍しました。そのことに関しても誇りに思っています」


■名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督のコメント
 「最初の20分はバランスがとれてました。シュートシーンも多くなく、PKを与えるまでは互角だったと思っています。気持ちの面でどう戦うかという部分はしっかりできていたので、選手を称えたい。あとはチャンスを決めなければいけない。あれだけ作れていたので。

 そして、PKの判定のせいでどうということではないですが、それまではよくやれていたので、そのままの人数で戦わせてあげたかったと思います。来季からはVARが導入され、それは喜ばしいと思っています。審判への文句ではなく、納得がいかなかったというだけです。今季、審判の方もだいぶ批判を受けていて、そういったところを助ける意味でもVARの導入は良いことだと思います」
池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影