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ルヴァンカップ決勝(10月26日)、ミシャ采配「夢をありがとう」

19・10・29
 上:左側写真/前半10分、右サイドから札幌MF白井のクロスを相手がクリアミス、そのボールに走り込んだ菅(4番)が右足を振り抜いて先制ゴールを決める。ピッチに座り込んでいるのは右札幌MF鈴木(9番)、左川崎DF谷口(5番)

 上:右側写真/前半10分、先制ゴールを決めた札幌MF菅(4番)に走り寄るFWジェイ(48番)

  (写真はいずれも10月26日、埼玉スタジアム2002、撮影・石井一弘)


「ブラボー川崎」ルヴァンカップ初制覇

 埼玉スタジアム2002で行われた2019YBCルヴァンカップ決勝は、10月26日、北海道コンサドーレ札幌と川崎フロンターレ戦が行われた。

 札幌は未知での世界の初挑戦、川崎は5度目の挑戦で直近は2017年に決勝で敗退した。会場は埼玉と決まっており今年は4万8千119人もの観衆が浦和レッズのホームグラウンドを埋め尽くした。明治安田生命J1リーグでは、8位の札幌と同6位の川崎という中位同士の対戦で、多いと言われている浦和の平均入場者数を、アウエーの両チームが集めたという今回は正月の定番「天皇杯」並みの注目度だった。

 我が「北のサッカーアンビシャス」も、大一番に向け10月25日のWeb版で急きょ応援掲載した。見応え満点の試合内容でカップの重みが「良かった」と思えるように「微笑んで」くれた大会になったようだ。

 ペトロビッチ監督が札幌に赴任して2年目。愛称の「ミシャ」は、一昨年までの浦和で「ルヴァンカップ優勝」を2016年に1度達成した。最初のサンフレッチェ広島(06年−11年)で、札幌と同じ準優勝(2010年)を成し遂げている。広島は、多大な貢献をして飛び立ち、浦和は「口うるさい輩」に追い出された格好だ。でも調宮(つきのみや)神社と友人はたくさんいる。

 受け入れてくれた札幌では「生まれ故郷のような風土」と気に入っている。広島でも、この日埼玉スタジアムに「視察?」に来ていたJAPANの森保一監督に広島時代に残したものは大きい。当時コーチだった「ぽいち」がJ1リーグ2連覇と合わせて3度ビクトリーを味わっている。

 さて10月26日のキックオフは午後1時10分。台風被災地への黙とうなどのセレモニーで約7分が遅れた。荒木友輔主審(33=東京都出身2018年からJFAプロ契約)のホイッスルで川崎がキックオフ。ベンチから見て右に川崎サポーター、左ネット裏はコンサドーレ応援団が赤黒とビジターの白レプリカユニホームを着た集団で陣取った。午後1時過ぎの天空は晴れ、気温25.4度、湿度70パーセントで過ぎ行くスポーツの秋の風情だった。

 札幌はジェイをトップに、右は鈴木武蔵、左に3週間ぶりチャナティップ。GKは菅野孝憲からク・ソンユンに代わり、3バックは左から福森晃斗。中央にキム・ミンテ、右に進藤亮佑。中央の4人は、ウイングバック(WB)が左は菅大輝(U−21=指定選手)、右に白井康介。中央に深井一希と荒野拓馬。3−4−2−1の布陣。一方の川崎はGK新井章太。4バックは登里享平、山村和也、谷口彰悟、車屋紳太郎。MFはボランチ2人に3人のオフェンス。トップはFWレアンドロ・ダミアン。背番号41の家長昭博は右の攻撃的MFに入った。

 試合は前半10分、なんと札幌の背番号4、注目の菅(東京五輪候補)が先制点。右WBの白井からのロングボールを相手DFがクリアミスをした先にいた菅がペナルティーエリアの外から直接シュート。右足のボレーキックはゴールバーの下側に当たりGKの背中辺りに当たり、ゴール内に入った。菅の今季初ゴール。

 10月18日の札幌ドームJリーグ第29戦セレッソ大阪戦で「前へ」を展開、WBながらゴールポストの脇まで「突っ込む」様を目前でカメラに収めた(Photo・Jun=10月号)。この時「菅の心意気を感じた」。

 「これでコンサドーレも行けるぞ」。

 試合は前半45+3分、今度は川崎がCKから阿部浩之が同点ゲット。1−1で前半を終わる。後半は川崎の勢いが勝る。中村憲剛、小林悠を投入、右の家長がトップ近くに浮き上がり、3人のトライアングルを築く。後半43分小林がゲットし1−2と逆転する。

 札幌もジェイからアンデルソン・ロペス、白井がルーカス・フェルナンデスに代わり攻防が続く。後半45分でアディショナルタイム5分。札幌がCKを得る。キッカーはお決まりの福森。川崎ゴール前は、GKクも加わり赤黒とクの黄色しか筆者には見えない。赤黒の横4人の中央にいた札幌・深井のヘディングがネットを揺らした。2−2の同点。

 15分ハーフの延長30分に入った。延長前半3分、ペナルティーエリア手前でチャナティップが川崎DF谷口に後方から倒される。フリーキックだ。福森がFKの用意。主審がVAR(審判によるビデオ判定=ルヴァンカップでは採用)判定。「イエローよりさらにきつい判定」でレッドカード。背番号5谷口が退場。

 福森のFK再開。川崎ゴール前に敵味方の人柱(選手が並んで防御の壁)。左側に札幌の2人の姿が見える。福森の左足から放たれたボールは、この同僚の頭上を越えて、左から右への弧を描いてゴール左、川崎GK新井が右側に飛びついても届かないところを過ぎて、ネットを揺らした。延長前半9分、3−2と札幌が逆転した。

 延長前半終了まであと時間は6分、逃げるだけでは済まされない。延長後半に入り、福森が石川直樹に代わった。そして4分(109分)、川崎がCKを得る。キッカーは背番号14中村。ゴール前を過ぎファーサイドへと見えたが、守りに入った札幌の武蔵のクリアが、DF山村のところへ。山村はシュートを打ったがボールは逆サイドにいたエース小林の前に転がりゲット。GKクと荒野が「オフサイド」を強調するが3−3の三度目の同点。この後2回ほどのCKを札幌は得るが、ルーカスが蹴っても得点には結びつかなかった。ミシャが3−2になり、延長後半の入れ代わりの時に福森交代に踏み切ったのが「理解に苦しむ」。

 PK戦の札幌は「練習不足」。PKは川崎の先行。川崎は4人目が札幌より先に失敗。札幌は4人目は成功。3対4に5人目が川崎成功、札幌失敗で、4−4。6人目に入り、川崎は成功。札幌失敗で4−5で川崎がPK勝ちした。札幌のキッカーは(背番号)11番、9番、8番、7番、2番、3番の6人でした。


 上写真/前半追加タイム3分、川崎左CKからFWレアンドロ・ダミアンがヘッドでつないで、MF阿部(右端の8番)が左足で決めて同点とする。左端札幌GKク・ソンユン、中央札幌MF菅、その右荒野(27番)


 上写真/前半追加タイム3分、川崎MF阿部(8番)に同点ゴールを決められ、けげんな表情の札幌の選手たち、左からMF荒野、鈴木(9番)、白井(19番)、その後方FWジェイ、DF福森、右でDF進藤(3番)が手を挙げて盛んに抗議していた

■北海道コンサドーレ札幌の進藤亮佑選手のコメント
 「(最後の場面について)やっぱり緊張感は当然ありました。キッカーは自信があるやつが蹴れという感じだったので、自信があるというか決勝という舞台でPKを蹴ることは人生に1回あるかないかだと思うので、そこは強い気持ちで、蹴る瞬間に関してはプレッシャーがありながらも責任感を持って蹴ったつもりです」

 「(試合内容について)強いチームに対して、チームとしては十分に可能性があった。勝てるかもという瞬間は何回もあったと思いますし、そういうところまではチームとしてきていると思う。そこはチームに自信を持っていいと思います。

 ただ、やっぱり最後はPKで1点差だと思うけど、そこの差というのはその1点以上に大きかったと思います。僕らが悪い時間帯に相手のシュートがポストに当たったシーンもあったし、後半にもショートカウンターから失点してもおかしくないシーンもあった。結果は同点でしたけど、相手次第では点差が開いていく可能性があったゲームだと思うので、そこはもっと反省して精度を上げていかないといけない。自分たちのミスからのピンチは延長戦にもあった。個人としても札幌というチームは勝利に値しなかったと思う。僕も勝者に値するプレーはできなかったと思います」


 上写真/後半28分からレアンドロ・ダミアンに代わって途中出場した川崎のキャプテンFW小林(11番)が後半43分、MF田中、大島とつないだボールを左足で押し込み、この試合初めてリードする。札幌GKク・ソンユン(右端)


 上:左側写真/後半追加タイム5分、札幌右CKからMF深井(右から3人目の上の8番)が、ヘディングで延長戦に持ち込む値千金のゴールを土壇場で決める、中央左川崎FW小林(11番)らが守り切れなかった

 上:右側写真/後半追加タイム5分、札幌右CKから同点ゴールを決めたMF深井(右端)に攻撃参加で上がっていたGKク・ソンユンが抱きつくように大喜び、DFキム・ミンテ(20番)、MF荒野(27番)、鈴木らも後を追う、川崎MF家永がピッチ上で仰向けに倒れている


 上写真/延長前半3分、札幌MFチャナティップの中央突破を川崎DF谷口(5番)がファウルで止めたが、これをVARで「得点機会阻止の反則」と判定され、イエローカードから一転、レッドカードで退場の指示。川崎キャプテンFW小林(11番)が猛然と抗議(福森のFK再開まで6分もの長い時間がかかった)


 上:左側写真/延長前半9分、札幌DF福森(5番)が大一番で絶妙のFKを決め、再びリードを奪う。川崎GK新井(左端)が懸命に体を伸ばしたが届かず。新井はMVPに選ばれた選手だ

 上:右側写真/延長前半9分、FKを決めた札幌DF福森(5番)、普段は超地味な男が、ド派手なパフォーマンスを見せた、MFチャナティップ(18番)が駆け寄る、後方はFWアンデルソン・ロペス

■北海道コンサドーレ札幌の福森晃斗選手のコメント
 「負けたのは悔しいけど、ポジティブに捉えると川崎F相手にここまで得点も取れたし、しっかりPK戦までやれた。負けたけどしっかり戦えるというところは見せられたと思う。これでまた札幌が強くなれると思うし、その点は良かったと思う」

 「(FKでのゴールについて)素直にうれしかったし、プロキャリアをスタートさせてもらった川崎Fに対して大舞台でFKは決めたいと思っていた。ああいう場面、良いところでFKをもらってくれて、(VARなどで)蹴るまでには時間がかかったけど、自分は集中していたしプレッシャーも何もなかったので、うまく決められた」

 「(ファーポストを狙ったのは?)自分が狙いたいところに山村(和也)選手だったと思うけど高い選手がいて、ファーサイドに蹴ろうかなと思ったときにポストの延長線上に立っていたのが長谷川(竜也)選手と大島(僚太)選手だったので、それだったらそっちのほうがスピードが出たボールならいけるかなと思った」


 上写真/延長後半4分、川崎FW小林(左端の11番)が、DF山村のシュートのこぼれ球を再度同点となるゴールを左足で決める執念を見せた、中央札幌GKク・ソンユン(25番)

■川崎フロンターレの小林悠選手のコメント
 「自分が(チーム)2点目を取ったときに勝ったと思ったので、さすがにそこから追いつかれて逆転されると思っていなかった。本当に最後の最後までどうなるか分からない試合だったなと思います」


 上写真/PK戦で札幌の6人目DF進藤のキックしたボールを川崎GK新井がキャッチして勝利を決めた瞬間、その新井に向かって駆け出す川崎の選手たちへ札幌の選手が悔しそうに見つめる。後方左から札幌MF鈴木、深井(8番)、DF石川(2番)、MFのLフェルナンデス(7番)、DFキム・ミンテ(20番)、MF中野。前方の走る川崎の選手は、左からMF中村(14番)、DFマギーニョ(26番)、MF長谷川(16番)、DF山村

■川崎フロンターレの中村憲剛選手のコメント
 「(優勝して表彰された気持ちは?)ようやく立てたという感じ。感無量でしたね。(上から)みんなが見えたし、本当に勝ったことでしか味わえない景色だったと思います。それはリーグ戦のときもそうだったけど、ルヴァンカップの上に登るっていうことがずっと憧れていたところがある。個人的にも4回目の挑戦だったし、良かったと思う。最高でしたね」

 「(リーグ優勝との喜びの違いは?)違いましたね。やっぱり一発勝負で勝つか負けるかで3回負けてきたので、下から上をずっと眺めてきて、上でしか分からない光景があるからリーグのときとは全然違った。ただ、札幌の選手もよく見えたし、僕らもずっとそういうふうに負けてきたんだなと。今日の決勝でいうと3−3というファイナルではなかなかないスコアだったけど、ミシャ(ペトロヴィッチ監督)のサッカーの哲学が引き出してくれたところもかなりあるし、すごく攻撃的なゲームだったと思う。相手も1点取ったあとにベタ引きする選択はできたと思うけど、しっかり出るときは出てくれていたので、そういう意味では本当に札幌も初優勝を懸けて、サポーターの皆さんもたくさん来てくれていた中で、すごく良いファイナルの雰囲気を作ってくれた。ともに感謝したいです。最終的に勝ったのは僕らだけど、札幌もここまでよく戦ってきたと思う。さっきミシャと話をしたけど、『本当にありがとうございました』という話をしました」

 上:左側写真/延長後半12分、最後の最後、懸命に選手を鼓舞する札幌のぺトロビッチ監督

 上:右側写真/前半33分、札幌MF白井(左)のスローインで、選手に位置を指示する川崎の鬼木達監督

■北海道コンサドーレのペトロビッチ監督のコメント
 「今日は川崎F、札幌、両チームにとって非常に素晴らしいゲームができたと思っています。見ていた方にとっても非常に興味深いゲームだったと思います。120分の戦いの中、川崎Fが良い時間帯もありましたし、われわれ札幌が良い時間帯もありました。そういう中で、お互いが五分に渡り合う、きっ抗したゲームだったと思います。私は日本に来て長いですが、ルヴァンカップの過去の決勝を振り返ってみても、ベストな決勝の1つに数えられる試合だったと思います。

 川崎Fは日本で最も強いチームの1つに数えられると思いますが、そういう強いチームに対して、われわれは2位じゃないと、勝って優勝を勝ち取るんだと、そういう思いを持って今週練習をして、この戦いに向けた準備をしてきました。われわれは勝利の得点をした、リードした中で勝利できる、そこに限りなく近づいたと思います。しかし、そのリードを生かすことができなかった。

 際どいところで敗れはしましたが、私たちは選手たちを本当に誇りに思っています。川崎Fという非常に強い相手に対して、選手たちは恐れることなく、勝負を挑んでくれた。オープンな展開の中で五分に渡り合い、限りなく勝利に近いところまで持っていってくれた。彼らの頑張りに対して、非常に誇りに思っています。

 なぜ勝利できなかったのか、監督である私自身にどこが足りなかったのか、それはいま探しているところですが、勝てなかったのは私自身に何かが足りなかったからだと。選手たちはよく頑張ったと思いますし、その頑張りは素晴らしいものがあった。その頑張りに対してわれわれは誇りに思わなければなりません」


■川崎フロンターレの鬼木達監督のコメント
 「この埼玉スタジアムをホームのような雰囲気にしてくださったサポーターの数と声援を感謝しています。それと最後、勝ってもおかしくなかったですし、負けてもおかしくなかったですし、どちらもありましたけど、最後の最後まで選手があきらめずに、それを信じてサポーターが本当に応援し続けてくれたこと、本当に感謝しています。選手とサポーターに感謝しています。

 ゲームのほうは決して簡単なゲームではなかったと思います。特に最後の後半ですね。アディショナルタイムに同点に持っていかれたところで、選手の気持ちのところも落ちたと思いますし、また退場等あってなかなか難しいゲームになりましたけど、本当に最後まであきらめない姿勢が何かを起こせると。それを本当に選手とサポーターが教えてくれたと思います」
池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影