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J1第24節(8月24日)、FC東京と1−1で価値あるドロー

19・08・27
ジェイがフクラハギで奇妙な得点

 札幌ドームに鈴木北海道知事が登場した、北海道コンサドーレ札幌とFC東京の明治安田生命J1リーグ第24節。「本道もコンサドーレのチームスローガンのように『北海道とともに、世界へ』を目指したい」とあいさつした。

 試合は8月24日午後1時03分から札幌ドームに1万9千454人の観客・サポーターを集め、6位札幌のキックオフで1位FC東京戦が始まった。形勢はホームの札幌がトップのジェイにボールを集め、ゆったりとした試合運び。両翼に右・鈴木武蔵、左・チャナティップのJリーグの「8得点コンビネーションを誇る(8月17日対清水エスパルス戦)」布陣。左ウイングバック(WB)菅大輝、右WBはここ5試合美技を披露する白井康介。F東京の4バックと、虚々実々の駆け引き。

 これまでのF東京に似合わず、FW永井譲佑、ディエゴ・オリヴェイラに背番号10のキャプテン東慶悟のパスが入らない。左右に振ってみても収まらない。

 札幌は中央にMF背番号10のキャプテン宮澤裕樹と荒野拓馬が縦型のボランチで、宮澤が攻撃に加わると、荒野がキム・ミンテと中央バックを形成する。両DFの進藤亮佑と、福森晃斗が砦を引き締める。GKク・ソンユンは攻守のメリハリを「位置づけ」られるという布陣。

 ジェイには、相手DFの180センチ越えの長身の渡辺剛、森重真人、岡崎慎が前後左右から「付きまとう」。こんな状況の繰り返しだった。

 このような展開の中での前半38分。コンサドの左サイドでF東京FWオリヴェイラがドリブルで中央突破の瞬間、後ろからMF宮澤が足を引っかける。コンサドーレサポーターに向かってペナルティーエリア右外側からのF東京がフリーキック(FK)を得る。GKクまでの距離は約20メートル。FK(CK)をほとんど蹴っているF東京MF東の出番。

 コンサドGKクの前には、赤黒選手が5、6人。F東京は180センチ以上のツワモノ(兵)の白色が4、5人。上空の中央、センターラインの上の記者席から見ると、GKクの前の白軍の3人がターゲットのよう。184センチDFの渡辺剛のヘディングがGKクの左サイドを抜けて行った。

 均衡が破れて、間もなく前半終了。いつもは、ハーフタイムをいっぱい使って「後半に望む監督訓示」の作戦タイムが時間いっぱいだが、この日は、コンサドが先にピッチに現れた。何かを、吹っ切るように感じられた。

 後半が始まった。札幌は相手のFW永井やオリヴェイラのゴール前への突進を警戒して守りに集中していたが、DFからの中盤へのパスを多用して、相手の突破を封じた。

 この中から生まれたのが、後半2分の得点。センターバック(SB)ミンテの奪ったパスが、チャナ―菅に回り、菅は中央に居た武蔵へ鋭いパス。ちょうどペナルティーエリア内に入ったあたりで武蔵の強烈なシュート。相手DFとGKの間に刺さった弾道をジェイが左フクラハギに当てて角度を変えて得点にした。ジェイは「強烈なアシスト」と、武蔵をたたえ、清水戦のハットトリックに続く得点を喜んだ。

 ペトロビッチ監督は「ブラボー」と、引き分けながら、「勝ちを意識した。引き分けに満足」。この結果、札幌は勝ち点36の7位。得点40は、勝ち点49、得点35、失点18でJ1トップを走るF東京に得点で勝り、得点ランクでは42点が頂点の鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸に大接近しており、次の神戸をにらみながらベスト3にも期待がかかる。

 コンサドーレの第25節は8月31日午後7時から、12位ヴィッセル神戸(勝ち点29)とノエビアスタジアム神戸で行われる。


 【余 談】札幌ドームに岡田正義氏(60)が審判アセッサリーとして来札していた。ひと昔前(約10年)のJFA審判委員長で、今更アセッサリーと隣席に居た。北海道を代表する審判で、アセッサリーも務めた沖野隼夫氏らに事情を聴いたところ「審判の判定状況が代わってきたので、研修を兼ねて」だそうだ。24日の審判は、松尾一氏(46)で、1級審判。選手同士の対立を収めるマネジメント力は一級品とある。試合中によく対立した選手に握手するよう導いていた。

 岡田氏は、本誌(Web版)で、伊藤庸夫欧州担当記者が取り上げた「ビデオ・アシスタント・レフェリーシステム=V・A・R」についての対応を投げかけたところ「遅いとの評判があるが、ロシアW杯では有効では・・・」と言うことになっていたという。


(写真はいずれも8月24日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)


 上写真/前半38分、F東京MF東のFKから、札幌MF宮澤とDF進藤が懸命に跳びつくが及ばず、DF渡辺(左端32番)にヘディングシュートを決められ先制される。GKク・ソンユン(25番)


 上写真/前半38分、F東京DF渡辺(左から2人目)の先制ゴールにFW永井(右から4人目)が手を上げて喜び合う


 上写真/後半2分、札幌MF菅(4番)が東京DF岡崎(29番)をかわして同点ゴールを呼ぶ絶妙のクロスを中央に入れる。この瞬間を見ると、菅の体の向きと目線のフェイントに相手DF岡崎が完全に引っ掛かり、足を出してしまっているのが分かる


 上写真/後半2分、同点ゴールを決めた札幌FWジェイ(右から2人目)と抱き合って喜ぶアシストしたMF鈴木(右端)、起点となったパスを出したチャナティップ(左端)、クロスを入れた菅(手前)、それぞれの役割を果たした4人がそろった


 上写真/後半4分、F東京ゴール前の混戦から札幌MF鈴木(9番)のシュートが一瞬決まったかに見えたが、F東京GK林にかき出され追加点ならず、悔しがる鈴木とFWジェイ(48番)


 上写真/このところ絶好調の札幌MF白井(19番)がF東京MF東(10番)と厳しいマッチアップ、右DFオ・ジェソク


 上写真/後半36分、F東京のエースFWオリヴェイラ(9番)の突進を札幌MFルーカス・フェルナンデス(7番)と荒野(27番)が挟み込むように阻み、ルーカスがボールを奪う。左端DF進藤(3番)、右端GKク・ソンユン(25番)


 上写真/後半追加タイム3分、F東京のFKからのロングボールを札幌DFキム・ミンテ(20番)がはじき返す。手前途中出場したF東京FWジャエル、右札幌GKク・ソンユン(25番)


 上:左側写真/後半38分、札幌MF菅(左)に代わって中野を投入したのに伴い、守備の指示をするペトロビッチ監督、右は菅を労う四方田ヘッドコーチ

 上:右側写真/後半39分、ゲームが途切れ水分補給するF東京FW永井(11番)の脇で選手にゲキをとばすF東京の長谷川健太監督、右途中出場した札幌MF深井(8番)


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「今日は非常に難しくなると予想していましたし、実際にそうなりました。東京は非常に経験が高く、規律があり、いかに結果を求めるか、そういう戦いをする手ごわい相手でした。立ち上がりは非常に良い形で入れて、チャンスがあったのですが、そこを決め切れずに先制することができませんでした。20分くらいまでは良かったのですが、そのあとは下がり過ぎてしまい、相手にボールを持たれてしまいました。下がったことでボールを奪いにいけず、奪いにいけないからさらに下がる。そういう悪循環でした。それがなければ、前半はあそこまで押し込まれなかったと思います。

 そういう中でFKを与えてしまい、そこで失点しましたが、そのシチュエーションを見ていて、『壁に高さのあるジェイや福森(晃斗)が入る必要があったのか?』と私は思いました。あの角度ならば、中で合わせてくるのは予想ができたと思います。場所によって誰が立つのか。それはすべてわれわれの指示でやるのではなく、選手が考えてやるべきです。

 1−0で前半を終えましたが、後半はわれわれの選手はギアを上げてアグレッシブに戦ってくれたと思います。オープンな展開の中で打ち合う。そういう試合になったと思います。後半の早い時間帯に同点にできたのは良かったと思います。特にカウンターは鋭く、相手に迫ることができたと思います。残念ながら最後の精度のところで得点に至りませんでしたが、そういうところの精度を高めることができれば後半も決定機をもっと作ることができたと思います。ただ、後半は前半よりも良い戦いをしてくれたと思います。

 今日のゲームは反省するならば、守備ブロックが下がり、相手ボールに寄せられず相手にリズムを与えてしまったところです。そして相手の守備を1つ外すことができていれば、もっとカウンターを出せていたと思います。それ以外のところでは、良い形が作れていました。引き分けでしたが、東京を相手にこれだけのゲームができたことは良いことだと思っています」


■FC東京の長谷川健太監督のコメント
 「たくさんのサポーターが応援に来てくれて感謝しています。その期待に応えられるような試合をやってくれたと思います。先制して追いつかれた展開で、互いにチャンスがある中で決め切れなかったのは、選手が一番悔しがっていると思いますが、昨年は2点リードからはね返されていて、それを肝に銘じて、体を張って守り、攻撃も相手を脅かしました。最近は暑い中でテンポが上がりませんでしたが、今日はドームなのでテンポが上がると選手に伝えていました。大きな勝点1だと思っています」

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影