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J1第21節(8月3日)、「非常に悲しい敗戦」ミシャ監督

19・08・05
広島ピースマッチ・札幌が1失点

 「ポジティブ」なミシャことペトロビッチ監督が、広島からスタートした日本生活も13年目の暑い夏を迎えた。明治安田生命J1リーグ第21節は、8月3日午後7時から広島市のエディオンスタジアム広島で、北海道コンサドーレ札幌とサンフレッチェ広島が今季2戦目の対戦を行った。広島では米軍の原爆投下(昭和20年8月6日)の悲劇を忘れず、平和を祈念して昨年から「ピースマッチ」として、世界にアピールしている。

 戦いの方は、ホーム広島が1−0で勝利、アウエー札幌戦(6月1日第14節)0−1の雪辱を果たした。ミシャ監督にしてみれば、かつてのファン、チーム関係者、教え子・森保一JAPAN監督の見つめる中での一戦は、どうしても勝ちたかった。特に広島は中2日の強行日程で負け無しの7ゲーム目。「負けてはいけない試合」と位置づけていたゲームに敗れ「残念で非常に悲しい敗戦」とのコメントを残した。この結果、札幌は順位を1つ下げ、8位となった。

 試合は気温28.6度、1万2千672人の観衆を集めた熱帯夜の戦い。前後半2回の飲水タイムを採る山本雄大主審の采配で行われた。

 ホームの広島は、Jリーグ第16節の川崎フロンターレ戦を7月31日に戦い、中2日での札幌戦。城福浩監督の采配で、DF野上結貴とMFに野津田岳人の2人をトップチームに加えただけの「ミニマム」な戦列。札幌も荒野拓馬が出場停止で、MFに深井一希が入っただけ。

 札幌は前半3分に右MFの白井康介が、トップのジェイの頭上にクロスボールを上げ一発のチャンスをつくったが、広島GK大迫敬介が好守した。さらに白井―ジェイの右サイドからの攻撃が続き、ジェイのヘッドがゴールポストにはじかれるなど、札幌の得点機が連続した。

 前半は札幌の一方的なゲーム展開だったが、後半に入ると、広島の左からの攻撃が目を引く。左MFの柏好文、その前の森島司、左ボランチ稲垣祥の左スペースを使ったトライアングルが効果的。後半4分には、柏―森島と渡って札幌DF進藤亮佑がわたり合ったが、外側から内側に回り込まれ、稲垣が守備的なMF札幌の宮澤裕樹を置きざりにしてシュート。中央のDFキム・ミンテが立ち尽くす左側をかすめ、ブラインドになったのか、GKク・ソンユンもなすすべがなく先制を許す。

 この後、一進一退の攻防が繰り広げられるが、選手交代の先陣は広島で日本代表などで出番が少なかったMF青山敏弘(広島16年目)が後半18分に出場、サポーター席が沸き上がった。札幌はルーカス・フェルナンデスが同28分(深井一希)、アンデルソン・ロペスが同30分(ジェイ)の2人が代わっただけ。広島は、同36分MF柴崎晃誠(野津田)、41分FW渡大生(森島)ががっちり「終盤」を引き締めた。

 コンサドーレは、失点してからの空白が長い。さらに交代の選手が、監督の意向なのか、コーチの行き違いなのか、「監督・スタッフ・通訳」のやり取りが「見えない」。見えない方が良いのか、一見「殺伐した」ジェスチャーが、見て取れる。

 試合結果の詳細を見るとシュート数=札12、広5。コーナーキック=札5、広2。フリーキック=札15、広17。PK=0−0で、ひいき目でなくても札幌優位だっただろう。

 
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「まずはサンフレッチェ広島に勝利をおめでとうと伝えたい。ただ、試合を振り返ってみると、こうしたゲームをわれわれが負けたということは、私は芸術に近いと思う。やはり多くのチャンスがあった前半に1点、2点を取ってリードしていれば、この試合はわれわれが勝利していた試合であったと思う。

 ここ最近のゲームでは、前節以外ですけれども、多くチャンスが作れている中で決め切れないゲームが続いている。逆に広島はここ最近、少ないチャンスをモノにして勝利を収めている。広島は今非常に良い流れだと思うし、自分たちは逆にチャンスが多くありながら決め切れない展開の試合が多い。やはり、あれだけ前半にチャンスがありながら決められないという展開にしてしまえば、負けてしまうということはサッカーの世界ではよくあることだ。

 試合の内容に関しては、決して悪い内容のゲームだったとは思っていない。ただ、われわれは負けてはいけないゲームだったと思うし、負けてはいけない展開だったと思う。そうなってしまったのは、前半に決め切れなかったことがすべてだった。あのチャンスを決め切れなければ、罰を受けるのがサッカーだ。負けてはいけないゲームだったが、広島が勝利して3ポイントをモノにした事実は変わらないし、われわれは敗者として勝者におめでとうと言うしかない。

 私は負けたときも必ずポジティブなものを見ている。負けたところから前向きなことを考えていく人間だが、今日のゲームに関しては残念で非常に悲しい敗戦だった。負けてはいけないゲームだった」


■サンフレッチェ広島の城福浩監督のコメント
 「今日はホーム広島でのピースマッチ。われわれにとって特別な試合だったので、戦う姿勢を見せてスポーツができる喜びと感動をどうしても伝えたかった。最後、選手はよく踏ん張ってくれて、来ていただいたサポーターと喜び合えたことは本当に良かったと思います。

 内容については、ちょっと前半は失い方が悪いところがあって3回、ひょっとしたら4回くらい決定的なシーンを作られてしまった。そこは飲水タイムがあったので修正をして、後半はさらに選手たちが修正してくれて、後半は自分たちのサッカーができるようになったと思いますし、前半とは全然違うゴール前の様子になったと思います。ボール保持率そのものは前半も後半も札幌のアウェイで戦ったときより格段に上がったと思いますが、決定的なシーンを作られたことは真摯に振り返って反省したいと思っています。

 日本で一番暑い2、3週間の中での中2日の日程というのは、われわれにとって本当に厳しかったです。ただ、これを乗り切るだけのトレーニングを年間を通じてやってきているつもりですし、われわれのサッカーをやれば疲弊はミニマムで済むだろうと思ったので、メンバー変更も本当にミニマムにしました。相当に悩みましたけども、われわれはいま成長過程にあって自信をつけている状況でもあるので、変更はミニマムにした中でしっかりとつないでいくことを選手はやってくれたと思っています」


■J1通算100試合出場となった、北海道コンサドーレ札幌の福森晃斗選手のコメント
 「100試合というよりかは勝ちたかったというのが一番です。自分たちのほうがチャンスは作れていたと思いますし、シュート数を見ると12対5で、前半向こうは1本しか打っていないし、後半も4本しか打っていない中で、自分たちは12本打っていた。そういう中で点が取れないっていうのは自分たちの力不足がもろに出たと思います。

  焦れずに戦っていましたけど、1つのチャンスで決められてしまう甘さも出てしまったのかなと思います。自分も含めて小さなミスが多かったなという感じでした」


【余 談】
 ◇ジュビロ磐田の名波浩前監督が7月下旬から、札幌を訪問していた。(株)コンサドーレの野々村芳和CEOの親友でもあり、同じ静岡県出身。サッカー専門チャンネル「スカパー」の主任教授(?)でもある。その名波氏をして「近代サッカー指導者の帝王」と、言わせたのがミスター・ペトロビッチ監督。帝王学を学ぼうとする人も多い。少年少女からシニア選手、サッカーファンの老若男女まで、ミシャの振る舞いを見ているぞ!
池田淳