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プロカメラマン“石井一弘の目”『札幌MF兵藤、幻のゴール』

17・05・15
 上写真/札幌対大宮戦の後半22分、札幌のMF兵藤(6番)がゴールネットを揺らずがオフサイドの判定でノーゴール(5月6日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)

 札幌対大宮戦、後半13分にキャプテン宮澤の先制点で勢いづいた札幌は22分、右からの攻撃でFW都倉のワンタッチパスを受けたMF兵藤(6番)が大宮GK塩田をかわしてシュート、追加点をあげたと思った瞬間、笛が鳴った。この瞬間が微妙なのです。オフサイドの判定で、もちろんノーゴール。

 兵藤にとって無情の一瞬だが、それはカメラマンの私にとっても無情の一瞬なのです。いつもピッチサイドのカド付近で各社のカメラマンが狙っているのは、このような一瞬を撮るためです。この写真、ゴール写真としてほぼ完璧です。兵藤の表情が分かり、ボールが有り、その上、ゴールキーパーの表情までわかる。

 なかなか撮れないショットが「よし、撮れた!」と思った瞬間、オフサイドの笛はかなり非情なものが有ります。いい写真でも、それがこの日の結果に結びついているかによって、写真の価値はガタッと変わってしまうのです。そのあたりがカメラマンの悲哀につながっています。

 この写真にはもうひとつ要素があります。兵藤の笑顔です。これを「よし、やった―!」とゴールの笑みととるか、オフサイドを認識した、いわば苦笑いととるかです。よく笛の後にボールを蹴ってカードをもらっている選手を見ます。この場面ではカードは出ていません。それだけ微妙だったということでしょう。

 そこで14日のG大阪戦の後、兵藤選手本人に聞いてみました。実はオフサイドを取られるだろうなと瞬時に分かったという答えでした。ゴールに向かって「これはいける・・・」とボールを蹴る瞬間、「笛が聞こえてオフサイドと思ったが、勢いで止まらず蹴ってしまった」と言っていました。ゴール前のそのわずか数秒でいろいろなことを考えるものなんですね。J1での経験豊富な兵藤選手だからでしょうか。今後もその経験と確かな技術でチームを引っ張ってもらいたいものです。
石井一弘