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プロカメラマン“石井一弘の目”番外編「写真で切り取る、その瞬間」

15・01・11
 昨年「北のサッカーアンビシャス」の忘年会兼スタッフミーティングの時、「2014シーズンのベストショットを一点選び、その状況を解説する内容を添えてくれませんか?」という要望があった。

 考えた末、一点だけを選ぶより数点選んで一年を振り返りながら、今年の展望や期待、さらにはカメラマンの面白さや悲哀なども含めて書いた方が面白くなるかと思い以下のようにしてみた。皆さんにもその一瞬を感じとってもらえればありがたいです。



 上写真/写真1、ベストショット一点とすれば、やはり10月26日のJ1に昇格した湘南ベルマーレを打ち破った都倉の先制ゴールであろう。前半9分GK李吴乗からのロングボールを直接胸でトラップ、振り向きざまに豪快に決めた。このゴールは後にファンやサポーターが選ぶJ2最優秀ゴール賞に輝いた。札幌ドームMVPを獲得するなど、都倉の活躍を象徴するゴールだった。

 しかし、カメラマンとしては不満も残る。なぜか、向きが逆なのだ。反対側のピッチサイドから撮れればより良いショットになった。一人で取材しなければならないのだから、この点は仕方がないが、どの試合でも今日はどこから撮るか、カメラマンは迷うものである。蛇足ながらJ1の最優秀ゴール賞は鹿島の西大伍だった。コンサドーレ札幌で育った選手なので嬉しかった。



 上写真/写真2、次は11月23日、強豪ジュビロ磐田との最終戦の写真だ。前半追加タイム、目下売出し中のMF中原が反対サイドからドリブルで突進してくる。「よし、初ゴールだ!」と思って、シャッターを押し続けた。次の瞬間、右から磐田のGK八田がフレームに飛び込んできた。無情にも中原のゴールは幻と消えた。

 勝負の世界に「たら、れば」は禁句ではあるが、もしこのゴールが決まって追加点を上げていたら、磐田に追いつかれることなく、一泡吹かせることができたのではないか。これは私より中原自身が、そう思っているだろう。今年飛躍していく糧としてほしいものだ。



 上写真/写真3、10月11日ジェフユナイテッド千葉戦、前半追加タイム左CKからの攻撃でDF奈良とMF石井かゴール前に飛び込む。残念ながら得点には結びつかなかった。

 ここで強調したいのは奈良のことだ。昨季最後の「カメラマンの目」で開幕戦と最終戦のスタメンを並べて一年を振り返った時、奈良のことを話題とした。今年の活躍を期待してのことだった。個人的にははなはだ残念であるが、選手に移籍はつきもの、特に将来日本代表にも成り得る逸材だ。J1のFC東京で切磋琢磨してほしい。



 上写真/写真4、元韓国代表と元日本代表の対決だ。6月28日FC岐阜戦の後半追加タイム1分、途中出場した元韓国代表FW丁成勳が出場した4分後、2−2の均衡を破る決勝ゴールを決めた。しかも初ゴールだ。

 右端に転びながらちょびっと写っている岐阜の選手の表情がいい。さらに、相手岐阜のGKは元日本代表の川口能活だ。丁と川口が直接代表戦で戦ったかどうか、私は知らない。丁の喜びはいかばかりだったか、特に今季の契約はできなかったので、一層思い出深いゴールとして心に残るだろう。



 上写真/写真5、最後は連続写真である。3月22日ギラヴァンツ北九州戦、コンサドーレ札幌が珍しく3−0と大勝した。前半28分PKのこぼれ球をDF上原が押し込んで3点目を決めたシーンだ。ファインダー越しにはFW内村とどちらが決めたか、わからないぐらい際どいゴールだった。


 上写真/写真6、次の瞬間、喜んで手あげる札幌の選手に対して、北九州のDF渡邊(3番)と冨士(7番)が手を上げる。こちらは悲壮な表情だ。オフサイドのアピールだった。この点でも際どいゴールだった。この時期の上原慎の活躍を考えると、もし負傷していなければ、終盤違った展開になったかもしれない。今季に期待したい。

 この2枚の写真を出稿する時、カメラマンは迷うものだ。結果的には写真5の方を出稿した。本当は6の写真の方が札幌の選手が喜び、北九州の選手は悲壮な表情をしていてドラマ性がある。写真として6の方がいいのではないか、という考え方もあるのだ。

 では、なぜ5を出稿したか、それは決定的瞬間が撮れなかったと思われるのを嫌うからだ。これが多くのカメラマンの習性である。その点でも写真1の都倉のゴールが撮れていて良かったと、つくづく思う。


 今年は昨年の小野に続いて元日本代表の稲本が入り、岐阜から点取り屋の外国人ナザリトも入った。あと2か月もしたらJリーグが開幕する。それまでの間、バルバリッチ監督になりきったつもりで、いろいろな布陣を考えてみるのも面白いと思います。札幌ドームでお会いするのが待ち遠しいですね!

石井一弘