１２月３日、札幌ドームでＦＣ東京とＪ１昇格をかけた最終戦。コンサドーレ札幌は、前半終了間際にＦＷ内村が２ゴールを奪い折り返すと、後半は東京の反撃を１点に抑え逃げ切り。今季を象徴するような粘り強い戦いぶりで、首位の東京を下した。

　これで札幌の最終成績は、２１勝５分け１２敗、勝ち点６８。４位の徳島ヴォルティスが敗れたため、Ｊ２リーグの３位となり、来季のＪ１リーグ昇格が決まった。

　この日、札幌ドームには、Ｊ２リーグ戦最多入場者数となる３万９２４３人が詰め掛け、選手たちを猛烈に後押しした。そして、１２時３２分、札幌のキックオフで運命の一戦が始まった。

　すでにＪ２で優勝を決めている東京。個々の技術と強さは抜きんでており、試合の主導権を簡単には渡してくれない。高いボール支配率から、次々と札幌ゴールを脅かす。しかし、何としても勝ちたい札幌は必死のディフェンスで耐えしのぐ。

　前半４０分、我慢の時間が続いていた札幌に千載一遇のチャンスがやってくる。中盤でボールを奪うと、スペースに飛び出したＭＦ古田へスルーパス。ボールを受けた古田がゴール前に切り込みグラウンダーのクロスを入れると、これに巧みな動き出しで東京ＤＦをかわしたＦＷ内村が飛び込み待望の先制点を決めた。

　さらに前半終了間際、またしても中盤で東京のボールを奪うと、ＭＦ近藤が日本代表ＤＦの今野をドリブルで振り切り、中央へパス。これを内村がトップスピードで走ってくると絶妙なトラップで納め、ニアポストへシュートを叩き込んだ。

　そのまま札幌がリードして迎えた後半、東京が怒涛の反撃を開始。ボールポゼッションで優位に立たれ、札幌が自陣内に釘付けに。ＧＫ李を中心に守り抜いてきたが、後半３５分、それまで集中していたＤＦ陣の一瞬の隙をつかれ、東京ＭＦ谷澤にゴールを許し１点差に詰め寄られてしまう。

　何としてもこのままリードを保ちたい札幌は、キャプテン河合を中心に声を掛け合い、互いに粘り強くカバーしあった。ＤＦラインを崩されても最後のところで必死に体を投げ出し、東京にゴールを割らせない。

　そして、長いロスタイムの末、ついにタイムアップの笛・・・。その瞬間、札幌ドームが選手、スタッフ、サポーターの歓喜の渦に包まれた。

　試合終了のホイッスルが鳴った時、選手の顔は充実感でいっぱいだった。そして帰路につく家族連れのサポーターには笑顔があふれ、設立時から応援をしていたであろうシニアサポーターの足取りもいつもより軽快に見えた。

　来季はトップリーグでさらに厳しい戦いが待っているのは間違いない。しかしそのステージにあらためてチャレンジできる喜びを一緒に味わえる幸せが来春待っている。

　（写真はいずれも１２月３日、札幌ドーム、撮影・石井一弘）

　上写真／前半２０分札幌ＭＦ古田（１５番）が東京ＭＦ羽生（２２番）と競りながらドリブルで突破していく。古田は内村の先制点をアシストし、追加点の起点になるなど大活躍だった。左は東京のＤＦ今野（６番）

　上写真／前半４０分札幌ＭＦ内村（１３番）が先制ゴールを決めバックスタンド方向に走り出すのを、渋い表情で見る元札幌で日本代表の東京ＤＦ今野（６番）、ＧＫ権田（２０番）。右端はＤＦ徳永（２番）

　上写真／前半４０分先制ゴールを決めたコンサドーレ札幌のＭＦ内村（右から２人目、１３番）と祝福する宮澤（１０番）、アシストしたＭＦ古田（１５番）、キャプテンＭＦ河合（４番）、ＦＷ近藤（３２番）が走り寄って行く

　上写真／前半ロスタイム２分札幌のＦＷ近藤（３２番）がＭＦ古田からのパスを受け、東京ＤＦ今野（６番）を置き去りにして内村へ絶妙のパス。貴重な２点目をアシストした

　上写真／前半ロスタイム２分札幌ＭＦ内村（１３番）が、この日２点目となる貴重な追加点を決め大きく手を広げて走り出す。後方はゴールの起点となったＭＦ古田（１５番）

　上写真／後半４分札幌ＭＦ河合（４番）が東京ＦＷロベルト　セザー（９番）、ＤＦ徳永、ＦＷルーカス（４９番）をかわしながらパスを出す。攻守の要としてキャプテンの重責を果たし後援会が選ぶＭＶＰを獲得した。徳永の後方、札幌の高校生ＤＦ奈良（３７番）

　上写真／後半１０分札幌のＭＦ内村（１３番）が東京のＤＦ森重（３番）をかわしながら、ハットトリックを狙ってシュートを放つが決まらず。右は東京ＤＦ徳永

　上写真／後半４３分東京ＭＦ羽生（２２番）の攻撃を闘志をあらわに守る札幌の守備陣、左からＧＫ李（１６番）、ＤＦ岩沼（６番）、ＭＦ宮澤（１０番）、ＤＦ山下（２３番）、宮澤と山下の間は東京ＤＦ今野（６番）、右端は森重（３番）

　上写真／後半３２分両手の指を立てながら懸命に指示を出す札幌の石崎信弘監督