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J1第31節(12月5日)、札幌ドームでセレッソ大阪戦催し多彩「神の手」

20・12・11
 上写真/先日亡くなった偉大なヒーロー、ディエゴ・マラドーナ氏に対して試合前両軍の選手、サポーターたちが黙とうを捧げた。札幌には実弟のウーゴ・マラドーナ氏が1997年−98年に在籍し、攻撃的MFとしてJリーグ昇格に貢献した。

     (写真はいずれも12月5日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)


石川・早坂「ご苦労様」

  ミシャ監督らドームで涙

 12月5日、札幌ドームが8千余人のサポーターと観客の「拍手と太鼓の音」でにぎわいの中、2020明治安田生命J1リーグ第31節が行われた。試合は北海道コンサドーレ札幌とセレッソ大阪の戦いだったが、盛りだくさんのセレモニー。世界規模のサッカー関係者以外でも知る訃報「神の手」のディエゴ・マラドーナ氏(60=アルゼンチン出身=11月25日死去)への黙とう。コンサドーレ札幌のメイン会場札幌ドームの初代社長・桂信雄元札幌市長(90歳11月16日死去)。これらの先人への報告と黙とう。

 加えてコンサドーレの来年度のユニホームとスポンサーの紹介。基調の赤黒の縦じまは変わりないが、来季の公式サプライヤーはミズノに決まり、GK用、ファースト、セカンド(黒)、サード(白)などを選手が披露した。さらにホーム最終戦と重ねて、今季限りの引退セレモニーも行われた。DF石川直樹選手(35=千葉県出身、Jリーグ歴は柏レイソルを振り出しに2009年−10年札幌、11年からアルビレックス新潟、13年ベガルタ仙台、17年から再び札幌で合計6年間在籍、チームキャプテンも。堅実な守備職人と称された)。

 もう一人、MF早坂良太選手(35=奈良県出身、2008年からHONDA・FC2年。Jリーグ歴は2010年からサガン鳥栖、17年から札幌で4年間戦いクレバーな選手と言われた)。

 試合は5日午後2時1分、セレッソ大阪のキックオフ。入場人員は8千905人で、新型コロナウイルス発生後「初の大入り」。ドームは21.1度、湿度39パーセント。笛は「泣く子も黙る」ベテラン西村雄一主審(48=東京都出身)。故マラドーナ氏の黙とうの時はセンターサークルの円陣を選手審判がとぐろを巻く中、主審ホイッスルの先導で始まり30秒後に場内アナウンスの「終わります」で、厳かにキックオフに移った。

 札幌は、3−4−2−1の布陣でGK菅野孝憲、3バック田中−キム・ミンテ−福森、ボランチに宮澤・高嶺、右ウイングバック金子、左にルーカス・フェルナンデス。ワントップはジェイ。右にアンデルソン・ロペス。左に駒井。控えにはDF背番号2石川、MF背番号26早坂はもちろんのこと、GKカウィン、両ワイドDFの出来る白井、MF深井、FW菅、ウーゴ・ヴィエイラらが入った。

 セレッソは最近5試合を2勝1分け2敗で4位。今年の天皇杯にはベスト2のチームに出場が限られ、さらに来季のACLの出場は1位確定の川崎フロンターレのほか、2、3位が狙える。セレッソは前試合から1人を入れ替えただけの布陣。GK金鎮絃、DF木本、瀬古、マテイ・ヨニッチ、MF松田、藤田、片山、奥埜、FW清武、坂元、ブルーノ・メンデス。控えには豊川、丸橋、高木、都倉らが入った。札幌のマークはやはり清武だろう。

 札幌は攻めては、トップのジェイにボールを集め、両サイドに拾わせるボールをさばき、リターンでジェイの得点を生み出したいところ。トップ下のロペスと駒井がこの役目だが、金子とルーカスのセンタリングも「武器」になる。ここまでは様子見が互いに多く、行ったり来たり。(25分飲水タイム)。

 札幌の左サイドから相手陣内を狙う場面が多くなる。左サイドはルーカスのドリブル突破と、福森からの展開が見ものだったが、思うようにジェイ、ロペスに入らない。駒井も地道に中央でパスを受けてジェイかロペスにパスを出しリターンをもらいたいが、途中でカットされる。リカバーの宮澤もここぞというときは「守りより攻めを重視する」。

 均衡が破れたのは40分。怖いパスカットをまともに食らった。相手MF奥埜が札幌の不用意な縦パスをカットし、清武に預ける。清武は楔で前線を狙うと、札幌DFがクリアしきれずに、右サイドを駆け上がったMF松田に渡り、正確なクロス。これをエリア内に入ったトップのブルーノ・メンデスがヘッドでゴール左に打ち込んだ。札幌のゴール前はがら空きだった。前半は札幌が0−1でリードを許し、折り返す。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「いいゲームは出来ているが失点がもったいなかった」、「ここからギアを上げて後半逆転していこう」、「自分たちでゲームをコントロールしていこう」

■セレッソ大阪のロティーナ監督のコメント
 「前半のプレーを続けていこう」、「お互いのポジションを意識しよう」、「マイボールを大事にしよう」


 後半札幌は、DF陣をまとめてきた。ゴール前が時折、がら空きになり相手が自由に入ってこられる。「裏を取られた」と俗にいうが、「ハイプレス」を取るチームにありがちな「誰かいるはず。下がるはず。マークの入れ替え」が出来てない。荒野がいた時はボランチの2人、宮澤−高嶺を荒野の幅広い動きでカバーしてきた。けがの荒野は「そんな動き」をしていたのだ。
 
 後半9分に清武に入れられた2点目も「狙っていた空き巣」だった。清武は機を見てがら空きとなった札幌DFライン裏に抜け出すと、MF藤田からの浮き球パスを右足でワントラップし、左足ボレーで決めた。

 札幌は12分に選手交代。駒井と菅、高嶺と深井。菅が左のウイングバックに入り、ルーカスが右(私的にはここが定位置)に回る。右足で持ち込むルーカスが見たい。攻撃に転じた札幌はジェイに最前線に出るよう指示、ジェイは相手DFマテイ・ヨニッチとやり合いイエローカードをもらう。

 20分、札幌が1点を返した。福森が左から大きなパス。右攻撃の始まり。右に入ったルーカスが右足でセンタリング。中央にいたジェイがヘディングシュートを決めた。1点差に追いつく。(25分飲水タイム)。

 追いつきたい札幌は右からは金子、左からは福森が相手ペナルティーエリア内にクロスを供給する。31分セレッソの交代。清武が豊川に。坂元が丸橋。この辺りはセレッソペース。35分清武から変わったFW豊川が自陣からのロングボールに反応、ペナルティーエリアに持ち込み背番号20のブルーノメンデスがこの日2点目のゲット。差は1−3と広がる。選手交代がひんぱんになる。メンデスが高木。ジェイがウーゴ・ヴィエイラ。

 38分、引退選手早坂がロペスに代わって登場。43分もう一人の引退選手石川が福森に代わってピッチに。この日のセレモニーを終える。いやちょっと待った。アディショナルタイム4分には、都倉賢(元札幌)が奥埜に代わってピッチへ。そのまま1‐3のスコアで終了後も白いビジターユニホームの都倉はサポーター席に向かい深い礼と手を振って「別れの辛さをいつまでも、いつまでも」表していた。

 ホーム最終戦でのセレモニーを終え、札幌は合宿所を千葉に移した。次回の2020明治安田生命J1リーグ第32節は12月12日午後3時から昭和電工スタジアム大分で大分トリニータと対戦する。


 上:上段写真/前半6分、札幌FWジェイが倒されて得たFKをDF福森(5番)が3試合連続の記録を狙って蹴ったが、惜しくも壁に当たりCKとなる

 上:下段写真/前半24分、札幌MF宮澤(10番)がC大阪のFWブルーノ・メンデス(中央)の動きに、思わず左腕を押えてしまう。宮澤は今季もキャプテンとしてコンサドーレをまとめてきた、左端DFキム・ミンテ(20番)


 上:上段写真/前半24分、札幌DF田中(32番)のパスは、MF駒井(その右)が要求したところとはずれて、呼吸が合わなかった。左端C大阪DFマテイ・ヨニッチ(22番)、右奥MF金子

 上:下段写真/前半32分、札幌GK菅野(1番)がC大阪FWブルーノ・メンデス(左から2人目)のシュートをしっかりとキャッチする。今季菅野は正GKク・ソンユンの抜けた穴をしっかり守った


 上:上段写真/前半40分、C大阪は右サイドからDF松田のクロスをFWブルーノ・メンデス(右端)が決めて先制、ガッツポーズをする。左端バンザイして喜ぶMF藤田、対して札幌MF駒井(14番)、アンデルソン・ロペス(11番)が肩を落とす

 上:下段写真/前半40分、C大阪FWブルーノ・メンデス(中央20番)の先制ゴールで喜ぶのを横目にぶぜんとする札幌MF宮澤(左端10番)、駒井(右端)、GK菅野(その左)が「まだ、これから」とばかり気合を入れる


 上:上段写真/前半41分、札幌MF金子(30番)がシュートするが惜しくもゴール左にはずれる

 上:下段写真/前半44分、札幌MF宮澤(10番)がC大阪MF奥埜(25番)、FW坂元(その右)と激しくボールを奪い合う、右端札幌MF駒井(14番)、DFキム・ミンテ(20番)

■北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹選手のコメント
 「前半は自分たちのやろうとしていたことが出来ていたと思うが、相手の良さを出させてしまうボールの失い方など、甘さが出ていたと思う。後半も粘り強く戦いたかったが、1点取られたあとにまた失点し、悔しい形になってしまった。今日の試合は引退する2人(石川直樹、早坂良太)に良い形で試合に出場してほしかったが、それが出来なかった。でも、そうした中でもプロフェッショナルなプレーを見せてくれていた。そうした彼らと一緒にサッカーが出来たのは自分の財産になっている」


 上写真/後半9分、C大阪FW清武に2点目を決められがっくりとする札幌DF田中(左端)、GK菅野(1番)、MF高嶺(31番)、5番はC大阪MF藤田


 上:上段写真/後半20分、札幌左サイドからDF福森のサイドチェンジからMFルーカス・フェルナンデスの折り返しをFWジェイ(中央左)がC大阪DF木本(3番)に競り勝ちヘディングシュートを決め1点を返す。左端MFアンデルソン・ロペス(11番)、右端菅(4番)

 上:下段写真/後半22分、札幌FWジェイ(48番)のパスがMF金子(中央)にうまくつながらずチャンスを逸し、「ごめん、ごめん!」とばかりに謝る、右端C大阪DFマテイ・ヨニッチ

■北海道コンサドーレ札幌のジェイ選手のコメント
 「得点の場面はルーカス(フェルナンデス)のアシストによるものでしたが、彼との連係はすごく良いです。それらも含めて得点はうれしかったが、やはりチームが勝てなかったことを悔しく思っている。リーグ戦は残り2試合となったが、やはり勝たなければいけない。勝点6を目標にして挑んでいく。今季は内容が悪くないのに、勝点3が取れない試合が多い。今日もそうだったと思う。このあと、短期キャンプもあるので、勝つためにみんなで良い準備をして残り試合に挑みたい」


 上写真/後半25分、札幌MF宮澤からの縦パスをFWジェイ(左奥)がゴール前に流し、同点の絶好のチャンスだったが、MFアンデルソン・ロペス(中央)にはわずかに届かず、左C大阪DF瀬古(15番)


 上写真/後半35分、C大阪FWブルーノ・メンデス(20番)がダメ押しとなる自身2点目のゴールを決め、清武に代わって入ったばかりでアシストしたFW豊川(32番)とハイタッチして喜ぶ、右端MF奥埜(25番)


 上:左側写真/後半31分、大きなジエスチャーで指示を送る札幌のペトロビッチ監督

 上:右側写真/後半31分、選手を鼓舞するC大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督。上位を狙える位置に付けていたが今季限りで退団することが決まっている


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「ホーム最終戦ということで何がなんでも勝利したかったし、(今季限りでの現役引退を発表した)石川(直樹)と早坂(良太)を良い形で送り出したかった。しかし、残念ながら望む形にはならなかった。選手たちは強い気持ちを持って戦ってくれたとは思いますが、試合の中で前の3人のボールの失い方が悪かった。試合の入りは悪くなかったが、精度が上がらない中で相手に少ないチャンスを決められてしまった。今季よくある展開だった。その中でもチャンスは作れていたが、決め切れなかった。後半は相手の10番(清武弘嗣)の素晴らしいゴールがあり厳しい展開になったが、1−2にしてからは追いつくチャンスはあった。あそこで追いついていれば違う結果になっていたかもしれない。だが、3点目の失点で試合の勝敗が決定してしまった。選手は全力で戦ってくれたが、残念ながら勝利出来なかった」

■セレッソ大阪のロティーナ監督のコメント
 「仕事量の多い試合になりました。素晴らしい相手、勢いに乗っている相手に対して、そういう試合になりました。前半の最初、彼らの激しいプレスに対して、なかなかビルドアップすることが難しく、彼らはボールを持ったときも、良いプレーをしていました。その中で、少しずつトレーニングで準備してきたことが出せるようになってきて、その時間帯にブルーノ(メンデス)が点を決めました。後半、彼らは同じようにプレスを掛けてきたんですけど、しっかりとボールを動かして、彼らのプレスの裏を取ることが出来ました。その中で、2点目を取ることが出来たことは良かったです。そこから1点を取られて苦しむ時間もあったんですけど、修正しながら3点目を取れたことは幸運でした。そこからは、ボールを持ちながら、落ち着いた状態で試合を終えることが出来たと思います」

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影