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高校選手権北海道大会 旭実が2年連続4度目の優勝

12・11・11
セットプレーから得点、道大谷室蘭を連破

 「念願の全国1勝を味あわせてやりたい」。第91回全国高校サッカー選手権大会・北海道大会の決勝は10月28日、札幌厚別公園競技場で、旭川実業高校―北海道大谷室蘭高校の対戦で行われた。旭実が後半のセットプレーから挙げた1点が決勝点となり2年連続4度目の全道チャンピオンになった。旭実は12月30日から首都圏で開催される「高校生の最高峰・全国選手権大会」に挑む。

 全道大会は、29校が出場して10月20日から、札幌市内の会場で熱戦が繰り広げられた。27日の準決勝は、旭実―帯広北、北海―道大谷室蘭(旧校名・室蘭大谷)の対戦となり、旭実はFW山本真司のヘディングで決勝点を挙げ帯広北を破り、道大谷室蘭は0−0の延長でも決着はつかず、PK戦5−3で決勝にコマを進めた。

 決勝は、昨年と同じ対戦になったが、強風と曇り時々雨の悪コンディションの中で、前半は風下に陣取った道大谷室蘭が0−0で切り抜けた。勢いに乗り、後半も押し気味の展開だったが、決定機にシュートが決まらず、さらに旭実GK永井建次の再三の好捕に会い無得点に終わった。残念だったのは前半10分FW吉田光希が絶好機を逃すなど決定力の無さが、随所に見受けられた。一方の旭実は、前半の風上を生かしきれず、FW山本、寺林研人が攻めるが、室蘭CB広瀬智行らの高さに阻まれた。後半は風下になったが、ここでパスを細かくグラウンダーでつないだのが良かった。特に目立ったのはMF奈良創平で速攻・遅攻のバランスを巧くリードした采配だった。決勝点は、52分(後半12分)この日2本目のCK。MF田中伸明の右からのキックをDF遠藤元一が頭で決めた。

旭実はプレミアの経験生かせ

 今季初参加した「高円宮杯U―18(18歳以下)プレミアリーグ」が旭実を成長させた―と言っても過言ではない。富居徹雄監督が試合後の会見で「(全道優勝は)満足ではない。全国で勝つことを目標にやってきた。これからです」。プレミアリーグの成績は1分け15敗。2009年全国高校選手権で1回戦突破して以来、今年のインターハイ全国1回戦でPK勝ちしてはいるが、選手権、インターハイ、プレミアを通して全国では勝てていない。試合数にして20余試合勝てない「壁」は。関係者は「目標を一段上げないと―」。奈良創平主将も「目標は優勝。プレミアで負けたチームに借りを返す」。時間は無い。出来ることを確実に2つほど練習して「自分のもの」にしてほしい。

トルネード戦法は特技に

 旭実は決勝でこの日わずか2本のコーナーキックのうち1本をものにした。後半12分、キッカーがタイミングを見ている。トルネードの1回目は相手選手にぶつかってしまい選手が倒れやり直し。タイミングを取り直した旭実の選手が相手DF陣を取り囲むように廻り出した。背番号10の奈良が逆方向に走って行く。キッカーの田中がトルネードの中心に相手を置き去りにしたあたりで、強風も利したような「アウト」にカーブする球を蹴った。ニアに1人、そしてゲッターの遠藤、後ろにもう一人、ファーにもちゃんと1人いた。これ以上書くと「特技」がばれるので、試合後に富居監督に「トルネード」(竜まき)という名前をプレゼントした。全国でも自信を持って良い。

 課題のもう一つは「守備だ」。プレミアリーグで失点した経過の3つ前までたどってほしい。たぶんFWまでを巻き込んだ「守りの時間」を徹底することが必要だ。メリハリのある時間配分とメンタルな部分がどれだけ「耐えられるか」だろう。

 北海道は、Jリーグ参画チームも出来、徐々にレベルアップしている。だが、サッカーどころ、埼玉、静岡、広島など(古い話だが・昭和30年代)は、県大会をクリアすることが「全国を制す」といわれた。代表になると「浦和は、藤枝東は、広島勢は」ばかり気になった。「目標は高く。やるべきことは、悔いがのこらないように完了形で―」。当時は関西が舞台だったが、「来るな」というのに、両親が隠れて浦和から来ていた。旭実の遠藤の母さんたちに贈る言葉「決勝の日(10月28日)は、厚別競技場に1番乗りだったそうですね。伝わったと思いますよ。きっと喜んだに違いない」。

 (昔語りのオマケの池田淳が文、写真はいずれも撮影・石井一弘)


 上:上段写真/後半12分旭実右CKからDF遠藤(右端)がヘッドでゴールを決める。これが決勝点となった
 上:下段写真/後半21分大谷室蘭の右CKからの反撃、DF広瀬(10番)がヘッドで合わせるがゴールならず。旭実GK永井


 上:上段写真/高校サッカー決勝で優勝を決めた瞬間、膝をつく決勝点をあげたDF遠藤に駆け寄って喜び合う旭川実業の選手たち。敗れた大谷室蘭のキャプテンMF小栗(8番)、DF広瀬(10番)はがっくりとうなだれる。左端旭実GK永井(1番)
 上:下段写真/2年連続で優勝を決めインタビューに答える旭川実業の富居徹雄監督

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影