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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『海外公式戦通算100試合を達成出来た理由』

21・11・11
 上写真/FCウランバートルに所属し、2021年シーズンに海外通算100試合を達成した大津選手
 

 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。私がプレーしたモンゴルリーグは、2021年10月にシーズンが終了しましたが、日本のJリーグは12月4日が最終節であり、11月はシーズンの佳境。「優勝争い」「ACL出場権」「昇降格争い」など、各クラブが最後の力を振り絞り、激しい試合が多く繰り広げられることが予想されます。

 このような試合を積み重ねていくと、「出場試合数」が各々の選手に換算されていきます。J1リーグでの最多出場数を記録しているのは、現在ジュビロ磐田(J2)に所属している遠藤保仁選手で、その試合数は「641」。遠藤選手は日本代表の最多出場記録も保持しており、代表での試合数は「152」。昨年に移籍したジュビロ磐田でも、2021年11月現在、既に40試合以上(J2での出場数)に出場。この数字だけを見ても、本当に凄い選手であることが分かりますね。

 さて、サッカー選手の端くれである私は、2021年シーズンに海外での公式戦通算100試合を達成しました(つい最近まで自分では全く気づいていませんでしたが…)。遠藤選手に比べるとまだまだ足元にも及びませんが、「100試合」という区切りの数字までサッカーを続けられたことは、自分でも「よくやったな」という気持ちがあるのも本音です。

 そこで今回のコラムは、海外公式戦「通算100試合」を達成出来た理由を、自分なりに分析してみようと思います。

※2021年11月現在、海外公式戦通算104試合出場・28ゴール


●継続

 100試合出場を達成することが出来た1つ目の理由は、「継続」にあると言えるでしょう。

 2015年に初めて海外リーグ(モンゴル)へ挑戦し、その後はニュージーランドやタイでもプレー。2018年から再びモンゴルでプレーして、出場試合数を積み重ねてきたのですが、モンゴルリーグ自体は通年で18試合(2021年のリーグ試合数)の開催しかありません。

 J1リーグは、1チームあたりの通年試合数が38試合(2021年シーズンのリーグ試合数)もあるので、私がプレーしたモンゴルの試合数と単純に比較すると1シーズンあたり「20試合」も差があります。その為、100試合に到達するには「長年プレーすること=継続」が、必要不可欠な要素です。

 また、昨年はコロナウイルスの影響で現地に渡航出来なかったり、かつては所属チームが無い期間もあったりと、様々なトラブルや困難が存在しました。そのような状況にも臨機応変に対応しつつ、純粋に「サッカーを続ける」ことが、出場試合数につながるのではないでしょうか。

 当たり前のことしか述べておりませんが、この「当たり前」を長年継続することが、サッカーだけに関わらず、何事においても大切だと思う次第です。


 下写真/ニュージーランドでプレーした2016年(スリーキングス・ユナイテッド)
 上写真/タイでプレーした2017年(カンペーンペットFC)


 ●縁を大切にする

 前述した通り、通算100試合を達成するためには「継続」が重要です。それを具体的に紐解いていくと、私自身が海外のクラブと契約して、プレーし続ける必要があります。

 サッカー界では、人との「縁」で所属チームが決まる機会が多いと、個人的には感じています。

 例えば、2017年にタイのカンペーンペットFCと契約した際の話。私が小学生時代から一緒にボールを蹴っていたサッカー仲間が、同クラブの監督を紹介してくれたことがきっかけで、トライアルに参加することが出来ました。その後、無事に契約を果たせたことで、2017年はタイリーグでプレーすること(=試合数を重ねること)が可能となったのです。

 また、2018年から復帰したモンゴルのFCウランバートルとの契約も、まさに「縁」がきっかけでした。当時、所属チームが無かった私のもとに、2015年に同クラブで一緒にプレーした時のチームメートから「チームが無いなら、また一緒にプレーしよう!」と、連絡が来ました。結局、その連絡がきっかけでモンゴルリーグへの復帰が実現し、2021年シーズンまで同クラブでプレーし続けることになったのです。

 このように、サッカーを通じて出会った人との「縁」が非常に大切であることを、通算100試合を達成した今、改めて実感しています(本当に皆さんに感謝です)。今後も、様々な人との「縁」を大切にしていきたいです。その縁はもちろん与えられるだけではなく、他者に何かを与えられるようなつながりも大事だと思っています。


●健康の重要性

 長年サッカーを続けていると、どんな選手でも1度は「けが」という問題に直面するのではないでしょうか。また、サッカー選手は体が資本なので、一般的な職業以上に「健康」が重要だと思います。当たり前ですが、健康な体がなければサッカーをすること(=試合出場数を積み重ねること)が出来ません。

 海外でプレーし始める前、私は全治1年のけがや大病を経験したのですが、その経験から「健康」に気を使うことの大切さを嫌なほど味わい、現在は良い意味で「無理をしない」ようになりました。具体的には「しっかり休みを取る」ことです。

 例えば学生時代…。私はけがを負った時、多少無理をしてでも練習を休まないことが大切だと思っていました。なぜなら、休むことを「悪」だと捉えていたからです。その結果、パフォーマンスの低下や大けがにつながっていたことに、当時は全く気づいていませんでした。

 プロサッカー選手の場合、年間で何十試合もプレーするので、試合に出続けている選手がどこかしらに故障を抱えるのは、ある意味仕方ないことです(もちろん日々のケアは大切)。

 どんなに気を使って生活していたとしても、体調が優れない日は人間誰しも存在するはずです。その際、「これ以上無理したら大けがにつながるかも」「いま休まないと治りが遅くなってパフォーマンスに影響するかも」という時は、しっかりと理由を伝えた上で「練習を休みたい」と、監督にはっきり言うように心がけてきました。

 もちろん、それでも試合に無理して出場しなければならない場面もありますし、その時のけがや体調不良の度合いによって違いはあると思いますが、休むことを「悪」だと捉えないように考え方を改めました。

 かつて、元日本代表の内田篤人さんが「サッカー選手にとって、けがは友達みたいなもの」と発言されており、「サッカー」と「けが」について、私も内田さんと同様に捉えています。ある意味、「けが」はサッカー選手にとって「職業病」のようなものです。

 だからこそ、「休む勇気を持つこと」が、結果的には健康でプレーし続けること(試合出場数)に直結していると、私は考えています。


●サッカー界における「人間性が大切」という言葉の意味

 海外公式戦「通算100試合」を達成できた理由を自分なりに分析してみた結果、

・継続
・縁を大切にする
・健康の重要性

 以上の3つが、重要だという結論に至りました。

 このように理由を分析してみると、重要なことは「サッカーだけに限らないこと」がズラッと並んでいる気がします。

 おそらく、サッカー界において「人間性が大切」という言葉をよく耳にするのは、今回考察した内容がつながっているのではないでしょうか。

 このような観点からサッカーを深堀してみるのも、新たな発見があって面白いですね。


 下写真/2018年、3年ぶりに古巣のFCウランバートルへ復帰。この年、優秀外国人ベスト10に選出された
 
◆大津一貴プロフィル◆
 少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。
2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)
2015年FCウランバートル(モンゴル)
2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)
2017年カンペーンペットFC(タイ)
2018年からは再度FCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
2019−21年もFCウランバートル所属
大津 一貴