サッカーアラカルチョ

一覧に戻る

弊紙発刊の書籍が好評につき限定版発売中!【一部抜粋して紹介】

21・10・11
 Amazon初登場でカテゴリー別4位となった「100万円も借りられなかったNPOが、街クラブ日本一の施設を造った奇跡の物語」(出版元:北のサッカーアンビシャス)が、全国のサッカー関係者から注目を集め、「クラブ40周年記念誌同梱版」としてリニューアル発売となった。

 こちらの特装版は、数量限定で現在Amazonでのみ取り扱い中。地域スポーツ関係者には関心の高いクラブ運営や、あっと驚く施設の作り方も実例を基に紹介。ご興味のある方は是非どうぞ。

 本紙では、本の中身を少しずつではあるが紹介している。今回は第二十五の巻「地域とホーム施設が一体となり活用の幅が広まる」から一部を抜粋したい(登場人物の年齢、所属、役職などは2017年通常版出版時のものとなります)。


【以下書籍より一部抜粋】

第二十五の巻「地域とホーム施設が一体となり活用の幅が広まる」

 2016年8月、北海道らしい夏空の下、SSSのホームグラウンドで石狩市と石川県輪島市の子どもたちによるスポーツ交流事業が行われた(この交流事業の様子は北のサッカーアンビシャスWeb版2016年8月号にも掲載されている)。

 この事業は、2012年に石狩市が輪島市と友好都市提携を結んだことをきっかけに、青少年スポーツ交流事業として、スポーツ少年団を交互に派遣しあい、両市の交流を深めているもの。これまで、バレーボール、ソフトボールなどが行われ、2016年度は石狩市主催で、輪島市の子どもたちを迎えてのサッカー交流大会開催となった。

 SSSでは自クラブの子どもたちが直接参加という形ではなく、両市の子どもたちに良いスポーツ環境を提供しようと、人工芝グラウンドとクラブハウスを無償で開放。スポーツ振興くじ助成で整備されたホーム施設を活用し、地域社会貢献活動の一環として協力した。

 輪島市スポーツ少年団副本部長の石本昇藏氏は「今回、このような良い施設でスポーツを通じての交流が出来て本当に感謝しています」。交流事業を担当した石狩市保健福祉部健康推進担当部長の我妻信彦氏からも「両市の子どもたちにとって充実した交流事業となりました。本当にありがとうございました」とお礼のコメントがあった。

 当日は、石狩市の田岡克介市長(71歳)もSSSのホームグラウンドを訪れ、交流事業を視察。「この度の輪島市・石狩市友好都市青少年スポーツ交流事業への全面的なバックアップをいただき、心より感謝申し上げます。おかげさまで、両市の少年団同士が、サッカーを通じて交流の輪を育むことが出来ました。輪島市訪問団からも素晴らしい環境で試合が出来るなど、大変有意義だったとのお話もいただきました。将来にわたり輪島市と石狩市の子どもたちが、友好の懸け橋となるようなスポーツ交流事業を実施して参りますので、今後も、ご支援、ご協力をお願いしたいと存じます」と、直々にお礼状も届けられるなど、クラブと石狩市との良好な関係性が示される交流事業となった。

 その他、SSSのホームグラウンドでは、外サッカーシーズンに公式大会やクラブ主催の交流大会も盛んに行われている。北海道で年間を通して考えると、3月までは街中に雪が残っている年もあり、雪溶け後、待ちに待った外サッカーのシーズンが始まる。ただし、土のサッカーグラウンドの場合は、雪溶け後もドロドロの状態が続き、4月いっぱいはグラウンドを使用出来ない年もある。人工芝グラウンドの場合は、その年の降雪量にもよるが、春先に雪が溶け始めてから人手で除雪をすると、3月末や4月の初旬から使用出来るシーズンもある。

 外シーズン終盤は、雪の降り始めの時期にもよるが、12月初旬ごろまでグラウンドを使用出来る年もある。年間で考えると土のグラウンドに比べ、少なくとも1か月程度は、使用可能期間が延びる。これは室内でフットサル期間の長い、北国のサッカーにとっては非常に大きい人工芝のメリットだ。また、ここまでは北国の積雪問題を中心に説明したが、雪の少ない地域、もしくは雪が全く降らない地域であっても雨天時の練習の問題はイメージしやすいのではないか。多少の雨なら土のグラウンドや天然芝グラウンドでも活動は可能であろうが、借用施設では使用制限などはあるはずだ。人工芝グラウンドであれば雷が伴わなければ雨天でも練習活動が可能である。これは年間で考えた時に練習量、稼働率ともに大きな違いとなるだろう。

 SSSでは春先の外サッカーシーズン到来に合わせ全道各地のチームを募集し、交流大会を開催。シーズン最初の本格的な外サッカーの対外試合となり、参加チームからも好評を得ているという。4年目の開催となる2017年の交流大会では全道各地から40チームが集い、4日間(2大会開催)で計120試合が行われ、観戦者を含めると延べ約2千200人の来場となった。また北海道の春先には、急な天候、気温の変化が多いが、多目的屋内交流施設やクラブハウスで暖を取ることが出来るなど、連動したホーム施設の有用性が示された。これも、スポーツ振興くじ助成事業の効果といえる。


 上:上段写真/2017年4月と5月に開催されたSSSチャレンジカップの様子。全道各地から計40チームが集まった。少年の大会は大人用公式ピッチの半分サイズなので2試合同時に行える。人工芝には大人用のラインは白色、少年用のラインは黄色で塗り分けられており、どちらでプレーする時も、ラインが目に入りすぎず、かつ視認性も考えられた組み合わせだ。

 上:下段写真/札幌NFCとSSS社会人部門の合同練習会時の写真。交流している両チームに笑顔が多いのが印象的である(2017年7月撮影)



 さらにホーム施設の活用として、協力団体には連携事業として施設を貸し出すこともある。そのひとつが知的障がい者サッカーチームの特定非営利活動法人札幌NFCとの連携だ。札幌NFCは札幌市を中心に各年代合わせて約90人が在籍。2016年からSSSのホームグラウンドでミドル・シニア部門との合同練習を行っており、同年札幌市代表として出場した「第16回全国障がい者スポーツ大会(希望郷いわて大会)」では全国準優勝という輝かしい成績を収めた。札幌NFCの秋川浩理事長と宮本勇太監督からは「この度、ご協力いただいた皆様のおかげで全国障がい者スポーツ大会の全日程を無事に終え帰札致しました。期間中は天候にも恵まれ、選手たちも楽しく存分にプレーすることが出来、大会を通じて著しい成長もたくさん見られました。試合は決勝戦で惜しくもPK戦で敗れはしましたが、全国準優勝という輝かしい成績を残すことが出来ました。これもひとえに皆様のご支援のたまものと厚くお礼申し上げます」と全国大会の報告もあった。

 地域の各クラブで、それぞれの事情があるとは思うが、自クラブだけの活動に注力するのではなく、地域に溶け込む努力と、クラブの存在意義が高まるような活動も必要だろう。直接的な見返り(資金的なものを含め)がすぐに見込まれなくとも、このような地域社会への貢献活動を地道に継続することで、評価とともにいずれは自分たちに帰ってくるであろう。

 SSSの活動の評判も、交流事業を支援した石川県だけで終わらず、神奈川県の教育関係者、東京都からは国際的スポーツ組織関係者、富山県のクラブ関係者らがわざわざ視察に訪れるほどになっている。

 当然のごとく道内にも評判が広まり、公益財団法人北海道サッカー協会の出口明会長(75歳)自らが足を運んで複数回の視察をしている。本道のサッカー団体関係者の間で出口会長を知らない者はいないと称されるような存在で、特に2002年の日韓FIFAワールドカップ札幌開催成功後、その余剰交付金で整備されたサッカー専用集合施設の札幌サッカーアミューズメントパーク(SapporoSoccer Amusement Park 頭文字を取ってSSAPと呼称される)を造り上げた出口会長の功績は有名だ。

 SSAPの主要施設は、天然芝1面、人工芝1面のサッカーコート、屋内競技場、クラブハウス、合宿などでの利用が可能な宿泊施設の「夢きたれ」に加え、札幌市が整備した東雁来公園人工芝サッカー場2面の管理も行い、シーズンを通して数多くの公式戦が開催され、北海道アマチュアサッカー界の聖地と言える一大拠点となっている。

 出口会長は「北海道の競技レベル向上と、サッカーファミリー増大に向け、様々な事業を展開していますが、冬季のトレーニング環境が本道の大きな課題。こういった部分も向上させようと新たな計画も進めているところです。その中、単体の街クラブであるSSSが、施設をどんどん充実させていることに驚きましたし、本道サッカー界にとっても素晴らしいこと。これからもクラブチームの草分け的存在として、目標とされるような活動を継続してほしいと思っています」と、期待を寄せる。

 視察に訪れた際には、「人工芝グラウンドにLEDナイター照明が設置された時には来ていましたが、今回クラブハウスと多目的屋内交流施設を実際に見てみて、SSSが進めたプロジェクトは街クラブとして本当にすごいことだと感心しています。北海道でもここまで出来るということを全国に発信して、地域のサッカー環境の向上から、サッカーファミリーの拡充にぜひつなげていってもらいたいものです」。帰り際には、「今度、協会の役員と一緒に視察に来ようかな」。出口会長は笑顔で特命チームに語りかけていた。

 そして数日後の朝に電話が入る。「今日早速、協会の役員と一緒にまた視察に行かせてもらうよ」と、すぐに行動に移すことが出口会長の人柄でもある(北のサッカーアンビシャスWeb版2017年2月号と特別紙面版でも特集記事が掲載されています。ぜひご覧ください)。

 この時、SSSのホーム施設に訪れたのは、出口会長、熊谷輝男副会長(69歳)、溝口昇常務理事(63歳)の3人。出口会長は「あらためて大企業の後ろ盾のない街クラブで土地から保有して、人工芝グラウンド、クラブハウス、屋内施設を一体的に造り上げたのは、日本では他に聞いたことがない。協会としても地域のモデルケースとして参考にしたい」。

 熊谷副会長は、「SSSのことはもちろん昔から知っていますが、ここに至るまでは大変だったと思います。岩越校長を始め優秀なスタッフの熱い思いがあってこそ進んだのでしょうね」と、思い出話も交えながらプロジェクトの全容をにこやかに聞いていた。

 札幌ドームの建設時に札幌市の職員として中心的役割を担った溝口常務理事は「私も行政の立場で建築物の確認や建設に携わってきており、その視点から見てクラブハウスも、屋内施設も、材料、工法、使用目的を含めて非常に合理的な造りだと感じました。難しい案件だったとは思いますが、大都市の札幌ではなく、スポーツの街を掲げる石狩市だったのが功を奏したのかもしれませんね」と、専門家の目線で冷静に分析していた。

 当日対応した岩越校長は「会員の活動環境が向上したことは喜ばしいことですが、クラブチームの草分け的存在の意義と使命からも、整備されたホーム施設を基盤にスポーツを通じて少しでも地域社会に貢献出来るような事業を継続して行きたい」と、まとめた。


 上:上段写真/2017年5月、ホームグラウンドで開催されていた交流大会を観戦する公益財団法人北海道サッカー協会の出口明会長(右側)。その隣が柴田、後ろに田古嶋

 上:下段写真/上段写真の視察から数日後、「モデルケースとして参考にしたい」と早速出口会長は協会役員と共に再度視察に訪れた。左から、北海道サッカー協会熊谷輝男副会長、出口会長、SSS岩越代表理事兼校長、北海道サッカー協会溝口昇常務理事(役職などは2017年出版時となります)



―この続きにご興味のある方は、ぜひ本書でお楽しみください。通常版はAmazonかコーチャンフォー(新川通り店、ミュンヘン大橋店、釧路店、北見店)で、特装版はAmazonでのみ販売しております(Amazonサイト内で、「SSS札幌」、もしくは「SSSサッカー」で検索するとトップページに表示されます)。

 「あなたも奇跡と呼ばれたプロジェクトの証人となる!?」


【書籍情報】
題 名:「100万円も借りられなかったNPOが、
     街クラブ日本一の施設を造った奇跡の物語」

著 者:北のサッカーアンビシャス編集部
    協力SSSドリームプロジェクト特命チーム
    イラスト担当スエリス

発行所:北のサッカーアンビシャス

形 式:A5版300ページ
   (カラー8P、モノクロ292P内イラスト20P)

価 格:クラブ40周年記念誌(カラー20P)付きの特装版は1,210円
    通常版は1,100円(ヤマトDM便での発送)

販売先:特装版はインターネットモールAmazonでのみ取り扱い中
    通常版はAmazonとコーチャンフォーで取り扱い中
(新川通り店、ミュンヘン大橋店、釧路店、北見店。他店舗はお問い合わせ)


編集部