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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『最新版・アジアサッカーの現状』

20・11・11
 上:上段写真/モンゴルリーグの様子(引用:モンゴルリーグ公式フェイスブックページ)

 上:下段写真/タイリーグの様子(引用:タイリーグ公式フェイスブックページ)


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。今回のコラムは「アジアサッカーの現状について」です。2020年、世界的に拡大している新型コロナウイルスの影響は、日本のJリーグのみならず、全世界のリーグが同様に大きな影響を受けております。現在は、Jリーグや欧州主要リーグのように、観客動員数の制限や選手のPCR検査実施を徹底し、安全に努めてリーグを開催している国も多く見受けられますが、世界の中には、2020年シーズンの開催を断念した国も存在します。そこで今回は、私がプレーしてきた国のリーグを中心に、アジアのサッカー界の現状をお伝えしたいと思います。

◆モンゴル
 まずは私が所属していたモンゴルです。先月のコラムでもお伝えした通り、モンゴルリーグは9月末をもって2020年シーズンの全日程が終了しました。新型コロナウイルスの影響により、リーグ戦は6月から9月までの約3か月に開催期間が縮小され、私を含むすべての外国人選手は渡航制限によってモンゴルへ入国することが出来ず、モンゴル人選手のみで戦うシーズンとなりました。例年であれば、プレシーズンの時期に3月まで移籍期間が設けられていて、開幕自体は4月からです。しかし、今年のモンゴルリーグは外国人選手に限り、移籍期間が2020年1月15日までに前倒しされました。その結果、すべての外国人選手がチームの始動前に契約を交わしたこととなり、「チームとの契約はあるが現地でプレー出来ない」という状態に陥ってしまいました。外国人選手にとっては、チームとの契約が残っているので簡単に他国へ移籍も出来ず、難しい状況に陥ったシーズンだったと言えます。私を含めて、多くの日本人選手もプレーする予定だっただけに、残念な結果となってしまいました。

◆タイ
 2017年に私がプレーしたタイリーグの状況をお伝えします。タイリーグに関しては、日本のJリーグと同じように「春―秋」の期間で例年シーズンを開催していました。例年は2月頃に開幕し、10月頃にシーズンが終了する流れです。しかし、新型コロナウイルスが流行した時期と同時にリーグ戦は中断され、現在は欧州の開催時期と同じように「秋―春」でリーグ戦を開催することに変更されました(それでもタイは1年中暑いです…)。その為、現在はシーズンの真っ最中。例年であれば、11月頃から現地でトライアルが始まるので、世界各国からサッカー選手たちがチーム数の多いタイリーグでのプロ契約を狙い、熾烈な契約争いを行っていました。ですが、新型コロナウイルスの影響によって、ビザなしの外国人が入国することが出来ない現状です。ときには1チームのトライアウトにサッカー選手が100人以上も集まるようなタイのサッカー界ですが、今年はリーグの開催時期がずれたことも影響し、例年のように同国で世界各国のサッカー選手たちがしのぎを削るような光景は見られないでしょう。


 上:上段写真/カンボジアリーグ優勝のボーンケットFC(引用:ボーンケットFC公式フェイスブックページ)

 上:下段写真/マレーシアリーグ、ジョホール・ダルル・ダグジムFCのホームスタジアム(引用:ジョホール・ダルル・ダグジムFC公式フェイスブックページ)


◆カンボジア
 数年前、実はカンボジア現地のチームにトライアル参加したことがあります(結果は残念ながら契約に至りませんでしたが…)。タイから見ると東側に位置している国であり、近年はサッカー熱が高まってきている国のひとつです。カンボジア代表の監督は、現在ブラジルリーグに所属している本田圭佑選手ということもあり、日本でも馴染みのある国のリーグに変化しつつあります。カンボジアリーグは、Jリーグと同じように、「春―秋」の期間で例年開催されています。2020年シーズンは、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念された時期に、一時的にリーグ中断の措置を取りましたが、6月からはリーグ戦が再開。2020年10月末にリーグ戦が無事に終了しました。現地では日本人選手も多くプレーし、カンボジアリーグを大いに盛り上げていたようです。

◆マレーシア
 東南アジアに位置するマレーシア。同国のとあるチームのトライアルに私は参加したことがありますが、その時はたった1日で「お前は要らない」と言われてしまい、個人的には苦い思い出のあるリーグ…(今となっては良い思い出です)。そんなマレーシアリーグも、他国と同様にコロナ禍の影響を受けてリーグ戦は一時中断しておりましたが、現在はリーグ戦が再開されています。こちらも「春―秋」制となっており、現在はシーズンの終盤です。1部リーグで現在首位を走るのは、マレーシアリーグの強豪クラブ、ジョホール・ダルル・タクジムFC。1997年、元日本代表の「野人」こと、岡野選手が決勝Vゴールを決めて、W杯初出場をつかみ取った試合、「ジョホールバルの歓喜」を起こしたスタジアムを本拠地とするチームです。毎年、同チームがマレーシアリーグのチャンピオンになっており、今年も優勝を達成。2014年からなんと7連覇を記録しています。同チームは、AFCチャンピオンズリーグでの試合も予定されており、Jリーグのヴィッセル神戸との対戦にも注目が集まります。

 上:上段写真/台湾リーグ、台中FUTUROのイレブン(Sportspon)

 上:下段写真/ラオスリーグ優勝のラオ・トヨタFC(ラオ・トヨタFC公式フェイスブックページ)


◆台湾
 日本からほど近い台湾にもサッカーリーグが存在することは、皆さんご存知でしょうか(実は野球だけではありません!)。台湾は、新型コロナウイルスの感染予防対策に成功している国の1つで、サッカーリーグも中断することなくリーグ戦が開催され、今月中に全日程を消化する予定となっております。普段は注目される機会のなかった同国のリーグですが、世界中のリーグが中断を余儀なくされた期間も台湾では開催されていたことが影響し、ネットでの視聴者数が例年より倍に増えた時期もあったようです。台湾リーグ自体、まだプロ化はされていないこともあり、学生や他の職業と兼業している選手も多数存在する中、外国人助っ人として日本人選手もプレーしているリーグでもあります。今後、さらなる発展が期待されるリーグの1つです。

◆ラオス
 タイの北部に位置するラオス。私も何度か足を運んだことのある同国は、ASEAN唯一の内陸国です。とても「のんびり」した雰囲気が漂っており、個人的には好きな場所の1つです。ラオスのサッカーリーグも、コロナ禍によって開幕が遅れていましたが、7月に2020年シーズンが開幕。同国のリーグにも多くの日本人選手が所属し、リーグ戦を盛り上げていました。10月末には今季の日程をすべて消化しており、ここ数年連覇を果たしているラオ・トヨタFCが今年も優勝を飾りました。名前の通り、日系企業がチームのスポンサーとなっているチームで、今季に限らず多くの日本人選手が活躍してきたチームです。しかし、私が所属しているモンゴルと同様に厳しい入国制限が解除されず、同リーグのチームと契約をしていた外国人選手がラオス現地に入国出来ず、プレー出来ないままシーズンを終えてしまった選手も存在します。その選手たちの気持ちも分かるだけに、とても複雑な心境です。

 以上、アジア諸国のサッカー事情でした。この他にも、インドネシアは今シーズンの開催を断念していたり、フィリピンリーグは約1か月間の超短期決戦でリーグ戦を開催したりと、新型コロナウイルスの影響を大きく受けている国が多く存在します。この判断は各国のサッカー協会だけに限らず、その国の政府のコロナ対策措置によるものが非常に大きいと言えます。

 選手を取り巻く環境が個人レベルでコントロール出来る領域を超えており、とても難しい状況であることに変わりはないのですが、上記に記載した国のリーグで今シーズン活躍した日本人選手がいるのも事実です。そのような選手たちへのリスペクトを忘れず、自分ももう一度ピッチの上に立つ日が来ることを願うばかりです。そして、一刻も早く新型コロナウイルスの猛威が収まり、以前のように思いっきりサッカーが出来ることはもちろん、サポーターも楽しめる日常に戻れることを心から祈っています。


◆大津一貴プロフィル◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。
2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)
2015年FCウランバートル(モンゴル)
2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)
2017年カンペーンペットFC(タイ)
2018年からは再度FCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
2019−20年もFCウランバートル所属
大津 一貴