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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『コロナとアジアのサッカー事情』

20・07・11
 上写真/ソーシャルディスタンシングで試合前の整列をするモンゴルリーグの選手たち


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。新型コロナウイルスの影響で世界中のサッカーリーグがストップしていましたが、日本のJリーグをはじめ、あらゆる国でリーグ戦が続々と再開し始めました。私が所属するモンゴルリーグも、7月1日からようやくリーグ戦が開幕しました。ということで今回は、モンゴルをはじめとするアジア各国のサッカー事情をお伝えします。

 まずは、モンゴルリーグについてです。前述したとおり、7月から2020年シーズンのリーグ戦が開幕。コロナウイルス対策として、今季のリーグ戦は全ての試合が無観客で行われます。また、Jリーグなどと同様に集合写真の撮影時は選手同士がある程度距離を取って撮影。ハイタッチやボトルの共有も禁止です。更に、一番影響を受けているのが、私を含めた各チームの外国人選手たちです。モンゴル国政府は、外国人の入国制限を今年の1月から厳しく規制しており、この記事を書いている7月現在も外国人はモンゴルへの入国が禁止となっている状態です。そのため、モンゴルリーグのチームと契約している外国人選手は、各々が自分の国で待機する状況が続いております。ですので、現在のモンゴルリーグは外国人選手抜きでリーグ戦が繰り広げられています。


 上:左側写真/FCウランバートルの開幕戦の様子。チームの集合写真もそれぞれ距離を保っての撮影。

 上:右側写真/控え選手たちも、マスクの着用と席を離しての配置。また、監督やコーチ以外はベンチには座らずに、メインスタンドに座っている。


 ちなみに、私が所属するFCウランバートルの開幕戦は、日本からネット中継で観戦しました。後半の開始早々に先制点をもぎ取って良い流れをつかんだかに思えましたが、そこから2失点してしまい、90分を過ぎて1−2のビハインド。しかし、後半ロスタイムにPKを獲得し、それをチームメートがしっかりと決めてくれて2−2に追いつく劇的な試合展開でした。ネット中継越しに試合を見るのは常にハラハラしてしまい、とても心臓に悪かったです(笑)。

 通常のシーズン中であっても、イエローカードの累積やけがの影響などで試合に関われないことはあります。ですが、そのときは試合会場に直接足を運んで、試合直前までチームの為にウォーミングアップや試合の準備を手伝ったり、試合中は声を出して指示を出したり、または応援したりと、直接コミュニケーションを図ることが出来ます。ですが、今は直接チームに関わることが出来ません。そこで、試合直前にチーム内のグループチャットを利用し、日本から応援メッセージ動画を送りました。引き分けに持ち込んだチームの力に、少しでも貢献出来たのではないかと思っています。ただ、このハラハラする感情で毎試合ネット中継を見なければならないのは、とても辛いのが本音です(早くピッチの上に立ちたい!)。

 


 右写真/モンゴルリーグでは新型コロナウイルス対策としてハイタッチが禁止されているため、ひじ同士を当ててゴールを喜び合う様子


 
 他の国々の情報もお伝えします。私が2017年にプレーしていたタイリーグは、コロナウイルスの影響を受けてリーグの開催時期が変更されました。通常は、年明けからプレシーズンが始まり、2月頃に開幕。カテゴリーごとに終了の時期は異なりますが、だいたい秋ごろにシーズンが終了。日本のJリーグと変わらない時期にシーズンを開催しておりましたが、今シーズンはヨーロッパ主要リーグと同じく秋春制(9月に開幕予定)を採用するとのことです。

 また、リーグ編成も大きく変更になります。以前までは1〜4部のリーグ構成となっていましたが、今シーズンからは3部制のリーグとなります。1部と2部は大きく変わりませんが、3部と4部は統合される形です。また、3部リーグはタイ全土を6地域に分けて、各地域でリーグ戦を開催。そこで勝ち上がってきたチームが、2部昇格を掛けて昇格決定戦を行う方式に変更されるようです。更に、外国人枠についてもレギュレーションが変更されます。1部と2部は大きく変わりませんが、3部リーグにおいては昨年まで採用されていたアジア人枠が撤廃。その為、アジア人枠でプレー出来た日本人選手たちにとっては大きな影響を与えるレギュレーション変更となりそうです。

 次にタイの隣に位置するカンボジアリーグの情報です。カンボジアでは、日本のJリーグと同じく既にリーグが開幕しておりましたが、コロナウイルスの影響を受けてリーグは一時中断の状況でした。しかし、日本のJ1リーグが再開した7月4日と時を同じくして、カンボジアリーグも再開。約3か月ぶりに1部リーグの各チームが試合を行いました。カンボジアでもコロナ対策のために、スタジアムは無観客での試合開催。選手やスタッフは試合会場に入場する際、発熱のチェックや手のアルコール消毒を徹底するなどの対策が施されていたようです。

 最後は東南アジアの情報をお伝えします。タイの北に位置するラオスでは、7月11日からリーグ戦が開幕する予定です。ラオスリーグも他国同様、無観客での試合開催となり、リーグ戦は10月末に終了予定で、今シーズンは短期決戦になる模様。また、昨年よりも現地でプレーする日本人選手は増える傾向なので、注目のリーグになるでしょう。

 今回は、モンゴル、タイ、カンボジア、ラオスの4カ国の現状をお伝えさせていただきました。なぜ、この4カ国のリーグをご紹介したかというと、文中でも少し触れましたが、近年多くの日本人選手がプレーしている国だからです。日本のJリーグや、ヨーロッパの主要リーグのように大きくメディアで取り上げられる機会が少ないリーグであることは事実だと思います。ですが、日本を飛び出してチャレンジし続ける日本人選手たちが存在していることもまた事実です。北のサッカーアンビシャスをご覧になられているみなさんに、少しでもアジア諸国のサッカーについても興味をお持ちいただければ嬉しいなと思い、今回の記事を執筆させていただきました。お気に入りのJリーグチームの応援と同時に、コロナウイルスの猛威に負けず戦い続ける海外組日本人選手たちの応援も、是非よろしくお願いします!


◆大津一貴プロフィール◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年からは再度FCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
大津 一貴