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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『中国・フフホト市でのエピソード』

20・06・11
 上写真/試合会場でアップをする様子。足元は最近主流の天然芝に近い長いタイプではなく、短くカチカチの人工芝ピッチだった


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。私が所属するモンゴルリーグは、新型コロナウイルスの影響からいまだに再開の目処が立っていません。よって、モンゴルへ渡航することが出来ず、日本に滞在する日々を過ごしております。日本のJリーグのように早く再開の目処が立って欲しいと思うと同時に、久々に過ごす北海道の過ごしやすい6月を満喫したいと思う次第です(この時期に北海道にいるのは約15年ぶりです)。

 さて今回は、私がモンゴルに初挑戦をした2015年シーズン、開幕前に行った事前合宿で訪れた「中国・フフホト市」での経験をお伝えします。

 上:上段写真/歴史を感じさせるような寝台列車の外観

 上:下段写真/列車からバスに乗り換えた中国のエレンホト市の駅


■場所
 まずは場所についてです。中国の内モンゴル自治区に位置するフフホト市は、中国国土の北に位置します。モンゴルとの国境に近い場所です(と言っても、モンゴルの国境沿いの町から約300キロメートル離れています)。ちなみに、漢字表記ですと「呼和浩特市」となります。

■移動
 次は移動についてです。この遠征の際には「列車&バス」で、モンゴルの首都・ウランバートルから片道24時間かけてフフホト市へ向かいました。夕方17時頃にウランバートルを寝台列車で出発し、翌朝に中国国境付近の町へ到着します。そこで、パスポートの検査を受けた後、中国のエレンホト市という町の駅に到着。そこからはバスに乗り換え、フフホト市まで約6時間かかります。

■ホテル
 約1週間、現地の安宿に泊まりました。町の中心部にあるホテルでしたが、シャワーの水は出たり出なかったりと、その日の水道の機嫌によります(笑)。Wi−Fiに関しても、一応ホテル内で使用することが出来ましたが、物凄く微弱だったので使い物になりませんでした(笑)。そのため、日本の皆さんとは合宿中は連絡が取れない状況でした。部屋は2人部屋で、モンゴル人選手と同部屋でした。この時、生まれて初めて日本人以外の人と寝食を共にしたので、部屋の使い方がとても大胆なルームメートのモンゴル人選手にびっくりしたことを覚えています(良く言えば大胆、悪く言えば大雑把と言ったところでしょうか)。

■サッカー環境
 主に現地の大学生とトレーニングマッチを数試合(数会場)行いましたので、その経験を踏まえての情報です。まず、ピッチ環境は基本的に人工芝です。しかも、日本の人工芝のように柔らかくなかったので、テニスコートのようにカチカチの質でした。モンゴルと同じく、寒い気候が大きく影響していると予想されます。大学の施設に隣接されたグラウンドで、現地の学生が興味本位で試合を見に来ていることもありました。サッカー自体は人気のスポーツのようです。

■現地のサッカーレベル
 現地大学生チームとの試合しか行っていませんので、大学生のレベルをご紹介します。まず、日本の大学生と比べた時には、間違いなく日本の大学生の方が全体的なレベルは高いと思われます。技術的な部分に関しては、日本のほうが断然高いです。しかし、球際の当たりに関しては、物凄く闘争心をむき出しにしてボールを奪いに来るので、その点に関しては迫力を感じました。若干ファールまがいのタックル(というか普通にファール?)が試合中は何度も来るので、足元でボールをキープするのが得意な選手は、ボールを持ちすぎるとけがをする危険性ありです。ちなみに、モンゴル1部リーグのFCウランバートルは、現地大学生相手に勝った試合と負けた試合で、ちょうど半々ぐらいの勝率でした。プレシーズンで、毎日2部練習を行っていたことも少なからず影響はあると思いますが、参考にしてみてください。

■びっくりエピソード
 とあるトレーニングマッチでのこと。その試合の相手とは、試合開始から少々荒れた試合内容でした。悪質なファールが多く、前半からお互いにいら立っていたことを記憶しています。そして、事件が起きたのは前半終了間際のことです。私のユニフォームを必要以上につかんできた相手選手。私はその手を振り払います。すると、相手選手が私の胸ぐらをつかんできました。その瞬間、助けに来たのは味方の“ベンチ”に座っていた選手。試合中にも関わらず、ベンチから選手たちが私の元へ駆けつけます。気がつくと、相手選手のベンチメンバーも全員がピッチ内に勢ぞろい。なんと、そのまま乱闘がスタート(私はスッと気配を消してその場から立ち去りましたが・・・)。モンゴルと中国の歴史的なことも関係しているかと思われますが、国をまたいで試合をするということの自覚と責任を大きく自覚するべき出来事でした。

■痛すぎるエピソード
 合宿最終日のトレーニングマッチ。合宿中はなかなかチームとして良い内容のサッカーが出来なかったこともあり、最後の試合にはなんとしてでも良い結果が欲しいところです。そのような状況下で行われた試合。良い攻撃も徐々に見受けられておりましたが、なかなかゴールに結びつきません。しかし、試合終了間際に私が相手DFの裏に抜け出し、GKと1対1の場面に。私は何とか足を伸ばして先にボールへ触ろうとしましたが、その先に見えるのは相手GKが完全に「少林サッカーのカンフーキック」の姿でこちらに向かってくる様子。ただ、私はすでにスライディングの形で体を投げ出しており、体の勢いを止めることが出来ません。次の瞬間、相手GKのカンフーキック(足の裏)が私の胸に直撃し、私は負傷退場。結局、モンゴルに戻ってから医者に見てもらいましたが、テーピングを張って終了という手荒い処置のみで終了・・・(苦笑い)。とにかく、物凄く痛かったので、帰りのバス&列車が苦痛でした。おそらく、あばら骨が折れていたと思われます。

 以上が、海外でサッカーをするようにならなければ、訪れることは無かったフフホト市遠征のエピソードです。このように、日本では経験出来ないことを多く知れることは、海外でプレーしていることの特権だと思うので、これからもその経験を北のサッカーアンビシャスの読者の皆さまにお伝えしていきたいです。

上写真/現地大学生とのトレーニングマッチ後


◆大津一貴プロフィール◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年からは再度FCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
大津 一貴