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ヨーロッパフットボール回廊『無観客試合、延期、中止、欧州の対応は』

20・03・11
 中国武漢から始まった世界へのコロナビールス(以下コロナ)の蔓延は、新型ビールスの対策が遅れを取り、世界中へ影響を与えている。その影響は、単なる疫病対策の医療健康面だけではなく、経済にもそしてあらゆるイベントにも影響を与えており、スポーツもその例外ではない。

 フットボールの試合も各国のビールス感染者の拡大に伴い、感染国である中国、韓国、日本そしてフットボールが国民スポーツとなっているヨーロッパでも中止、延期、無観客試合を実施または検討しており、今後の推移によっては、2019/20年度のリーグは最悪中止となる可能性も無きにしもあらずの状況である。

 3月初めの状況は下記の通りとなっている。

■1 アジア:中国、韓国、日本Jリーグ:中止または延期

■2 ヨーロッパ
(1)イタリア:コロナビールスの感染者が一番多い北イタリアでは、セリエAの試合は全て延期のため中止となった。一番影響を受けているのは、ミラノ地域のACミラン、インターミランの本拠ミラノでの試合は現在のところ中止となっている。日本人選手の吉田麻也がいる近郊のジェノアのサンプドリアもその影響を受けている

(2)スイス:3月23日までのリーグ戦は中止。また1,000人以上の観客が集まるいかなる試合も中止。

(3)フランス:パリサンジェルマン対ストラスブルグのリーグ1の試合もコロナのため中止。今後の試合については協議中。

(4)イングランド:現在協議中として、3月27日ウエンブレーで行われる予定のイングランド対イタリアのフレンドリーマッチは中止を検討中。プレミアリーグは現在協議中であり、今のところ無観客試合は無く通常通り実施されているが、今後のコロナ感染者数の増加に伴い延期、中止も検討中。ただ感染防止のため、試合前の選手同士のあいさつでの握手は禁止となった。プレミアクラブのウルブスは選手がサポーターにサインすることを禁止した。   

(5)ドイツ:現在のところ、通常通りブンデスリーガを実施中。   

(6) デンマーク:デンマークリーグのブロンビーの選手コーレンベルグがプロ選手としてはヨーロッパフットボーラーのコロナビールス感染者第一号となりリーグ戦を欠場、リーグ戦は中止となっている。 

■3 ヨーロッパの国際試合
(1)6月に行われるユーロ2020については、UEFA(ヨーロッパフットボール連盟)は3月末までに状況を見て実施するか中止するかを決定するとし、現在は状況把握の期間で、最悪は中止もあり得るとしている。この『UEFA Euro2020』の準決勝戦及び決勝戦は英国イングランド、ウエンブレースタジアムで行われることになっており、イングランドファンは1996年以来の地元での決勝戦に期待は大きいだけに、中止となれば経済的にも大きな痛手を被ること必至である(ユーロは今回から1国開催から多国開催に運営を変え予選時は東欧、ヨーロッパ各国で行われる)。

(2)ヨーロッパクラブチャンピオンズリーグ及びヨーロッパリーグも現在状況を注視し、上記Euro2020と合わせ、実施か中止かを3月末までに決めるとしている。

(3)『Europa Nations League(各国代表チームによるリーグ戦)』は今年秋に行われる予定であり、組分けは既に決まっているが、実施かどうかについては時間があり、中止するかはまだ決まっていない。
 ちなみにグループ分けは
 Group1-オランダ、イタリア、ボスニア、ポーランド
 Group2-イングランド、ベルギー、デンマーク、アイスランド
 Group3-ポルトガル、フランス、スウェーデン、クロアチア
 Group4-スイス、スペイン、ウクライナ、ドイツ
 となっている。秋に行われるので、コロナが終息しているとみての実施となる。

■4 その他のスポーツイベント
(1)ラグビーヨーロッパ6か国対抗:イタリアでは無観客試合とする事が決定。
(2)バドミントン:すべての国際試合中止。
(3)クリケット:試合前握手禁止。
(4)陸上:中国南京大会中止  
(5)パリハーフマラソン中止
(6)英国DCMS(Digital,Culture,Media,Sport)省では3月9日の週にあらゆるスポーツの活動についての指針を発表する予定。

 このようにフットボールのリーグ、大会がコロナにより多大な影響を受けているが、何でも賭けにする英国、次のようなスポーツイベント中止か実施かの賭け率がブックメーカー(賭け屋)から出ている。

◇プレミアリーグ(5月まで):5:1(中止は5分の1)―実施の確率高し。無観客試合で。
◇ユーロ2020(6月)  :5:6(中止は5分の6)―実施は五分五分か?
◇オリンピック東京(7−8月):8:11(中止は8分の11)−中止の確率高し。
◇ウインブルドンテニス(6−7月):4:1(中止は4分の1)--実施の確率高し。

 さて皆様、このコロナ騒動どうなるか、罹災国の対策次第で終息するのか夏まで続くのか世界中が注目している。日本ではオリンピックの開催可否が焦点であろうが、まずは終息を第一義にスポーツは第二義でも良いのではないのかと思う。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08    :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫