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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『モンゴルでサッカー教室開催』

19・10・11
 上写真/2019年9月22日、サッカー教室に参加した子どもたちと日本人選手が記念撮影。天候も良く、参加者も晴れやかな表情


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。先日、早くも初雪が降ったモンゴルでシーズン終盤戦を迎えている大津です。前節の試合では、気温が1℃しかありませんでした。北海道出身の私でも、手袋とネックウォーマーを装着して試合に挑むぐらいの寒さでしたが、チームメートのモンゴル人選手は半そで短パンのまま試合に挑んでいました。寒さに対する耐久性の世界レベルを実感しました(普通の日本人だったら、絶対に寒くて動けません!)。

 さて今回は、そんな初雪が降る約1週間前、2019年9月22日に私が主催者として開催した、現地モンゴルの子ども向けサッカー教室の様子をお伝えします。

 まず、今回のサッカー教室を開催した経緯をお伝えします。私が現在プレーしているモンゴルでは、近年少しずつサッカーの人気に火がついてきています。 ワールドカップ・アジア二次予選では 、一次予選を突破したモンゴル代表が、2019年10月10日に日本代表と埼玉スタジアムで初めて対戦。この記事が公開される頃には、私のチームメートを始めとするモンゴル代表の選手たちが、既に日本代表との試合を終えてモンゴルに戻って来ているでしょう。また、サッカー好きな大人たちがバーやパブなどで海外リーグの中継を見ていたり、子どもたちが海外クラブチームのユニホームを着て街を歩いていたりと、少しずつ国民がサッカーに興味を持ち始めています。

 しかし、以前にも触れましたが、モンゴルのサッカー界を取り巻く環境の課題は多いです。せっかくサッカーに興味を持っても、気軽にプレー出来る場所が少なく、まだまだ環境が整備されていない印象です。特に、子どもたちのサッカーを取り巻く環境は課題が多いと感じています。

 そこで今回、現地の子どもたち向けに無料のサッカー教室を開催し、子どもたちが綺麗な芝生の上でサッカーを楽しめる環境を提供したいと考えました。「少しでも、モンゴルのサッカー環境改善のきっかけとなるように!」との思いから、開催を決意した次第です。しかし、サッカー教室を開催するには、大きな課題が多数存在しました。

 まずは、開催資金の問題です。今回のサッカー教室実施を検討した場所は、ウランバートル市内中心部にある、今年完成したばかりの人工芝グラウンド。現地のクラブチームに所属していない子どもたちにとっては、利用する機会がほぼ無い場所なので、是非この綺麗なグラウンドで開催したいと考えました。しかし、グラウンドを利用するにあたり、日本円で約2万円(休日2時間の価格)の使用料がかかり、その他にも備品や当日の飲料水など、細かい部分の経費を含めて開催資金が必要でした。

 そこで、資金の問題を解決する方法として、先月から私が始めた“KAZUTAKA OTSU 蹴球サロン”のプロジェクトとし、『オンラインサロンの参加費(月額500円)を全額サッカー教室開催費に当てる』としました。SNSを中心にオンラインサロン参加者を募ると、趣旨に賛同して蹴球サロンに参加してくださった方もいました。しかし、今回の蹴球サロン参加費だけでは開催日に間に合わず…。という状況の中、蹴球サロン参加者以外からもご協力があり、『蹴球サロンの参加費』と、『賛同して下さった方々の支援金』を合わせて、開催費の課題を無事にクリア出来ました。

 また、『開催日程』と『集客(参加者、子ども集め)』も苦労した点です。サッカー教室の企画をした当初は、「シーズンが終わって、自分自身が落ち着いてから開催しよう」と考えていましたが、先にも説明した通りモンゴルの冬の訪れは早く、10月には極寒の寒さと雪がやってきます。そこで、まだ天候が安定している9月中に開催することとしました。ただ、私自身がシーズン中ということで、開催出来る日程が限られてしまい、子どもたちとの日程を合わせることが大変苦労した点です。それでも、現地のモンゴル人の方や、日本人の知人の方のご協力を頂き、最終的にサッカー教室には約40名の子どもたちが集まってくれました。

 上:上段写真/子どもたち同士でコミュニケーションを取れるよう、トレーニングごとにチーム分けを工夫した(左端が大津選手)
 上:下段写真/モンゴルで活躍する日本人選手たちと、参加者がパチリ


 開催当日は、現地でプレーする日本人選手たちにも声を掛けると、私を含めて10名の現役モンゴルリーガーが快く参加してくれました。更に、私が所属するFCウランバートルからも、通訳係として選手1名と、運営係として監督、合わせて2名にご協力頂きました。

 サッカー教室に参加してくれた子どもたちは、現地のクラブチームに所属する子どもが約7割。知人を通じて、現地の孤児施設から参加してくれた子どもたちが約2割。フェイスブックを利用して告知した記事を見て、参加してくれた子どもたちが約1割(もちろんモンゴル語で投稿した記事です)、という構成でした。年齢も6歳から12歳までと幅広く、性別、サッカー経験や競技レベルもバラバラという状況でした。

 しかし、そこは私の腕の見せ所。サッカー教室開始時からチーム分けを工夫し、リーダー役として日本人選手を各チームに1人ずつ配置。リーダー役の日本人選手たちに各グループを引っ張ってもらいながら、子どもたちが常にコミュニケーションを取る必要があるようなトレーニングメニューで、全員が楽しめる内容にオーガナイズ。普段のサッカーでのプレーと同じく、年齢を重ねて頭脳的なプレーが光るようになってきた大津の長所を生かしたファインプレー(?)により、子どもたちは大盛り上がり。参加者全員が、楽しそうにサッカーに取り組んでくれました。

 サッカー教室の最後は、『日本人選手全員vs子どもたち全員』のガチンコ試合。日本人選手チームが先制するも、子どもチームが粘り強く追いつく試合展開。その後2−2となり、この日、一番の大盛り上がりを見せたところでタイムアップ。最後には、今回のサッカー教室でのMVPを2名選出し、サッカーボールをプレゼント。当日はけが人が1人も出ることなく、楽しく終えることが出来ました。子どもたちだけでなく、私たち選手や関係者にとっても最高の1日となりました。

 最後になってしまいますが、ご協力頂いた皆さま、本当にありがとうございました。皆さまのおかげで、参加した子どもたちの笑顔を見ることが出来ました。サッカー教室終了後には、保護者の方からも「是非、もう一度開催して欲しいです!」という声や、今回参加出来なかった子どもの保護者の方からも「またやらないんですか? 次回があるなら参加したいです!」という声を頂きました。サッカーは言葉の壁や国境を軽々と越えると再確認出来ましたし、本当にありがたく、嬉しい限りです。今後もこのような活動を継続出来る方法を、現在模索しております。そして、少しでもモンゴルサッカー界の未来のためになる活動を続けていきたいと思います。

 では皆さま、改めまして「マシ、イヒ、バイルラ〜!」(モンゴル語で「本当に、ありがとうござました!」)

※この場をお借りして、今回のサッカー教室開催にあたりご協力を頂いた皆さまのご紹介をさせて頂きます。
●協力者一覧
・株式会社スポトレンド
・株式会社ナンシンデザイン
・NPO法人SSSスポーツクラブ(SSS札幌サッカースクール)
・一般社団法人シティフットボールクラブ
・KAZUTAKA OTSU 蹴球サロン・メンバーの皆様
・その他、個人的にご協力いただいた皆様(個人名は割愛させて頂きます)

 上写真/指示を出す大津選手(手前)と、通訳係を担ってくれたチームメートのバヤルジャルガル選手(奥側)


◆大津一貴プロフィル◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年はFCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
 
大津 一貴