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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『妖精と秘密の交信?』

19・07・11
 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは。私(大津)が現在プレーしているモンゴルリーグは、6月30日に前期リーグ戦の最終節が行われました。早くもリーグ戦はスケジュールの半分を消化し、私が所属するFCウランバートルは10チーム中8位と、なかなか思うような結果が出ておりません。苦しいチーム状況ですが、約1ヵ月後に再開されるリーグ後半戦へ向けて、自分が出来ることに全力を尽くしたいと思う次第です。

 さて、リーグ前半戦を振り返ると、私個人的にはリーグ戦とカップ戦共に、全試合でフル出場を果たしました。この出場時間を記録しているのは、チーム内で私を含めた2人の選手のみです。「圧倒的な実力と強靭な肉体がこの記録を達成したのだ。はっはっはっ!!」と自慢げに言いたいところですが、実際には多くの人たちの協力無しでは成し得なかった記録です。

 全ての試合にフル出場するためには、当たり前ですが、まずはチーム内でのレギュラー争いがあります。また、私は外国人選手なので、試合に出場出来る外国人の制限人数枠に入らなければ試合に出場出来ません(ちなみに、今年のモンゴルリーグは3人+アジア枠1人)。しかし、それ以外にも『カードの累積』や『けが』という要素も、長いシーズンを戦う上では拭えない要素となってきます。

 今シーズン、私がリーグ前半戦全試合フル出場を記録できた大きな要因の1つが、『コンディショングトレーニング』です。ただ単に体を鍛えるだけではなく、“けがの予防”と“けが後の対処”を含めてコンディショニングに努めています。

 そして、このトレーニングを実行する際に、私は魔法使いの“妖精(ピクシー)”と秘密の交信(???)をしているのです。

 と、このように書くと『大津は厳しいシーズンの海外生活で、多少おかしくなったのか?』と思われる心配もありますが、そこはご安心ください(多分・・・)。

 まず、この魔法使いの妖精こと“ピクシー”という愛称で呼ばれる石垣大輔さんをご紹介します。ここでピンと来られた方は、北のサッカーアンビシャスを熟読されている素晴らしい読者の方だと思いますが、本紙でも『健康・メディカルコーナー』を担当されています。

 普段は、札幌市豊平区にある「みつわ整形外科クリニック」の理学療法士として活動されています。また、「JARTA」というスポーツトレーナー協会のSSランクを所持しており、私が小中学生時代にお世話になった「SSS札幌サッカースクール」で専属トレーナーとしても活躍されています。

 このピクシーさんと私が初めてお会いしたのは昨年のオフシーズンです。札幌に滞在中、みつわ整形外科クリニック内の施設を利用させて頂きながら、体のコンディショニングやトレーニング方法を直接指導して頂きました。その際、私がまだ何も言葉を発していないのにも関わらず、「ここ痛いでしょ〜」と言いながら、体の痛い場所をズバズバ当ててきました。元々“ピクシー”という愛称で呼ばれていたことも知っていましたので、「この人魔法使いだな!(風貌に似あわず)」と心の中で思いながらトレーニングしていました。

 しかし、ここまでは特に秘密はありません。普通のプロサッカー選手であれば、よくあるオフシーズンの過ごし方であるかと思います。ですが、私がプレーする場所は海外。残念ながら、欧州で活躍する日本代表選手のように、個人専属トレーナーを雇って現地に帯同してもらうことは厳しいのが現実です。

 そして、私がプレーするモンゴルでは、日本に比べるとまだまだ医療体制が整っておりません。チームに専属のドクターは居るのですが(他のチームには居ない場合も多いです)、日本のJリーグのようにアスレティックトレーナーなどが常時チームの活動に帯同しているような環境ではありません。そのため、ある程度のことは自分で対処しなければならないのが現実です。けがの対処やコンディショニング維持に対して、普段から自分自身で努める必要があります。

 そのような環境で私はプレーしているので、物理的にはピクシーさんに直接体を診てもらうことは出来ません。しかし、時代は令和になりました。スマホの普及で、世界中どこに居てもネット環境さえあればつながれます。その恩恵を最大限生かし、私は現代人らしく『LINE』を利用し、魔法使いのピクシーさんとメッセージ交換しています。

 例えば、私がコンディショニングトレーニングを行っている様子の動画を、ピクシーさんにLINEで送ります。すると、その動画を見て問題点を分析したピクシーさんから返信が来ます。ある時は、腰部と臀部の動きの悪さからハムストリング(太ももの裏側)の張りを指摘してもらいました。下記の写真の通り、文章だけではなく画像に印も付いているので分かりやすいです。普段からLINEのやり取りを行い、事前にけがを防止するように心がけています。

 また、実際にけがをしてしまった場合にもLINEを活用しています。足首をねんざしてしまった際、まずは写真に印を付けて痛みの様子をピクシーさんに伝えました。すると、コンディショントレーニングの際と同じように、現時点での的確な対処法を返信して頂きました。この時はかなり足首が腫れてしまったのですが、教えて頂いた対処をすぐに実行したおかげで、なんとか週末の試合に間に合わせることが出来ました。
 以上のように、海外に居てもスマホを利用して自分のコンディショニングに努めることが出来る時代になりました。もちろん、直接体を診てもらう方が良い事は重々承知です。しかし、現状はそれを行うことが難しいので、今の自分が出来る最大限の工夫を考えた結果、“LINEを利用する”という結果に行き着きました。

 おそらく、この『今の自分が出来る最大限の工夫をする』というのは、実際のサッカーでも一緒です。現状の所属チームは結果が出ていない状況ですが、ネガティブなことにフォーカスして愚痴をこぼすのではなく、ポジティブなことにフォーカスし、工夫を重ねて行動し続けることで、一か月後に再開するリーグ戦の結果が変わると思います。

 また、そのようにアクションを起こし続けることが、プロサッカー選手としての活動にプラスになると思いますし、ピクシーさんをはじめとする、私が全力でプレーするためにサポートして頂いている方々への恩返しになると信じています。これからも応援してくださる皆様のために、結果を残すための工夫をし続けていきたいです。

上:上段写真/モンゴルの自宅でコンディショニングトレーニングをする大津選手
上:下段写真/オフシーズンにみつわ整形外科クリニックでピクシーこと石垣トレーナーより指導を受けている様子


◆大津一貴プロフィル◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年はFCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。
大津 一貴