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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『海外トライアルでのリアル』

19・06・11
 上写真/5月12日、FCウランバートルVSアスレティック220FC戦、後半途中からキャプテンマークを巻いてプレーした大津選手


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さまこんにちは。先日、海外サッカー生活で初めてキャプテンマークを巻いた大津です(え!?試合の途中から・・・。いや、細かいことは気にしません)。現在のチームには在籍3年目になり、チーム内での責任が増してきた証だと思います。その期待に応えられるよう、モンゴルでの日々を大切に過ごしていきたいです。

 そして、北のサッカーアンビシャスでも同様に「キャプテンのような存在感を発揮する記事を執筆しよう!」と試合同様、気合が入っております。今回で7回目の登場となり、「私の存在感が、紙面上でも増してきているのでは(ふふふ)」と、勝手ながら思っております。

 さて今回は、海外チームでキャプテンマークを巻くようになるまでの“過程”の話しです。具体的には『海外チームへのトライアル事情』をお伝えします。多くの選手の成功体験は語られることが多いですが、私自身が経験した失敗経験も含め、海外サッカー選手が表舞台に立つまでの過程を包み隠さずお伝えします。

 まず、私が今までに海外でプレーした5シーズンのうち(今季も含む)、オファーを受けて問題なく契約できたのは、今シーズンが初めてです。過去4シーズンは、何らかの形でトライアルやテストを受けてチームに加入しました。トライアルの形式は国やチームによって様々です。

 オープントライアルという名目で、チームに加入したい選手たちに募集をかけて、テスト当日に集まった選手同士で試合を開催するような形式もあれば(100人以上集まることも珍しくありません)、チーム側が経歴書やプレービデオで事前に選手を選考し、チームに帯同させて練習やトレーニングマッチを見てから合否を判断することもあります。また、チーム側がOKを出せば、経歴の良い選手や実力のある選手がトライアル無しで直接契約出来る場合もあります。

 私が今まで一番びっくりしたのは昨シーズンに起きた出来事です。現在も所属するFCウランバートルのオーナーから「もしチームが決まってないなら、一緒にプレーしよう!」と、直接メッセージをもらいました。給料などの条件を詰めてから現地に向かいましたが、チームに合流した際にマネージャーから「去年と監督が変わったから、お前も他の外国人と一緒にトライアルだからね〜」と、言われたことです。これには関西出身の方々に負けないぐらいの「なんでやねん!!」というツッコミが炸裂しました(それもスベリましたが・・・)。

 ですが、チームとの契約とは関係なく、監督に認められなければ試合に出場することはできないので、頭を切り替えて練習やトレーニングマッチに臨み、合流から約10日後にチームと契約することが出来ました。その後、監督から「お前がチームのナンバー1プレーヤーだ!」というお言葉を頂いたことも包み隠さずお伝えしておきます(はい、これは自慢です)。

 また、私自身が契約をつかめなかった経験も多々あります。例えば、カンボジアのチームには経歴書やプレービデオでの審査が通り、現地に向かうことになりました。渡航前に「4日間チームに帯同してもらい、その期間でのプレーを見て判断する」と、知らされた状況での合流でした。

 その言葉通り、チームのスタジアムに併設された宿泊施設に寝泊りしながらチーム練習やトレーニングマッチに参加。しかし、同じタイミングでトライアルを受けに来ていたアメリカ人選手とイラン人選手は契約をつかみ取る中、私は契約することが出来ませんでした。ちなみに、この時私は左ひざにけがを抱えたままプレーしていました。ですが、トライアル中にそんなことは何の言い訳にもなりません。けがを抱えていることがチームにばれないように、あえてテーピングを巻かずにプレーしたのは、今となっては良い思い出です。

 マレーシアのチームにトライアルを受けた際は「トレーニングマッチ2試合を見て判断する」と、事前に言われていました。合流初日、フェイスブックのオフィシャルチームページに、写真付きで私が合流したことが紹介されました。「え?もしかして契約決まり!?」と思ってしまうほどの歓迎ムード。午後からのトレーニングマッチでは、後半開始から45分のみプレーしました。しかし、試合後に監督に言われた一言。

 「お前はうちのチームに要らないから、他に行ってくれ」

 それを聞いて、「45分で何が分かるんだ!」と、最初は思ってしまいましたが、全ては自分の実力不足が原因です。ここでもすぐに頭を切り替えて、代理人の方に現状を伝えて相談しました。すると、「もしかしたら、マレーシア国内で他のチームにトライアルにいける可能性がある」ということだったので、翌朝から自分で手配した安宿に移動。いつ来るか分からないチャンスに備え、気温30度を越えるマレーシアの首都クアラルンプールにて自主トレを行っていました(時には観光に来ていた人を捕まえて、パス練習をしたりしていました)。ですが、結局は他のチームのトライアルには行けなくなったため、1週間後に真冬の北海道に帰国したのが今年の1月のエピソードです。

 以上のように、日本では考えられない状況が次々と起こるのが海外でのトライアルです。どんなに理不尽だと思われる状況に陥っても、普段の自分と変わらないメンタル状態を保つことが、契約をつかみ取る秘訣の1つだと思います。

 実際にニュージーランドやタイでは、トライアルから契約を勝ち取って現地でプレーすることが出来ました。あと厳しいことを言うようですが、契約すること自体が目的になってしまっている選手は、二流サッカー選手だと私は思います。緑色の芝生のピッチに立ち、自分のプレーでチームの勝利に貢献し、応援してくれる人たちやチームのサポーターの為に全力を尽くすことが一番の目的であるはずです。この目的がぶれてしまうと、トライアルではうまくいかない気がします。逆に、しっかりと目的を念頭に置いてサッカーに取り組むことができれば、自然とトライアルでも良い結果が付いてくると思います。これが、失敗も成功も経験してきた私がいま思うことです。もし、そのような環境に挑戦する選手たちの参考としていただければ幸いです。


 上写真/2017年12月、カンボジアのチームに練習参加している様子


 上:上段写真/2019年1月、マレーシアのチームのオフィシャルページに合流を紹介された際の写真。歓迎ムードに感じたが・・・
 上:下段写真/マレーシアのクアラルンプールにて自主トレを行っていた際、観光に来ていた韓国人の大学生キム君(もちろん初対面)と一緒に、ロングキックの練習をしてもらう出会いも


◆大津一貴プロフィル◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年はFCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優秀外国人選手ベスト10に選出された。

大津 一貴