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大津一貴のエンジョイフットボールライフ『モンゴルリーグの実態』

19・01・11
 上写真/モンゴルリーグ1部FCウランバートルでプレーする大津一貴選手(赤いユニホーム)


 北のサッカーアンビシャスをご覧の皆さま、こんにちは! 先月より、記事を寄稿させていただいている大津です。今回は、私が2015年シーズンと、2018年シーズンにプレーした、知られざる「モンゴルリーグ」について紹介させていただきます。

 まず、モンゴルと言えば、日本ではモンゴルからの力士が思いつきますでしょうか。モンゴル相撲も有名ですよね。

 モンゴルの位置関係は、日本と同じ東アジア地域で、南側は中国、北側はロシアに挟まれた国です。首都のウランバートルは、緯度が稚内よりも北に位置しており、真冬はマイナス40℃にもなります。世界一寒い首都がウランバートルとも言われており、北海道よりも寒い場所です。

 その気候の影響は、サッカーにも大きく影響しています。外でサッカーがプレーできる期間が短いので、トップリーグの開催期間は4月下旬〜10月上旬。真夏はサッカー日和になるのですが、4月の開幕戦と10月の最終戦は、気温が0度に届きません。北海道よりも外でボールを蹴れる期間が短いので、短期決戦のリーグとなっております。

 気候の影響は開催期間だけではありません。プレーするグラウンドにも大きな影響を与えています。それは、モンゴルのサッカースタジアムに天然芝が存在しません。寒い期間が長く、天然芝が育たないことが理由です。プロリーグの試合も全て人工芝のピッチで行います。そのため、公式戦では取替え式のスパイクは使用禁止。モンゴルでプレーする際は、ゴールキーパーも含めて固定式のスパイクのみです。

 また、人工芝の質にも問題があります。首都のウランバートルにあるスタジアムは、日本のように天然芝の感覚に近いロングパイルの人工芝を採用していますが、地方のスタジアムはテニスコートのような質のカチカチな人工芝です(日本でも初期の人工芝はこうだったと思います)。ここでは、固定式でもスパイクを使用すると逆に滑ってしまうので、私はトレーニングシューズを使用していました。中でもゴールキーパーは厳しいかもしれません。寒い気候や固いグラウンドも含め、サッカーをするにはハードな環境で公式戦が行われています。

 リーグ構成としては、1部リーグに参加している10チームがプロリーグ(日本で言うところのJ1)となります。2部リーグ以下は基本アマチュアですが、シーズンごとに1部の下位2チームと、2部の上位2チームが自動入れ替えとなっています。2部と3部の入れ替えもありますが、毎年レギュレーションが変わるので、その都度確認しないとはっきりとしたことは分かりません。リーグ規定があいまいなところは、発展途上国のサッカーリーグあるあるではないでしょうか。

 しかし、1部リーグの優勝チームには、AFCカップのプレーオフ出場権が与えられます。このAFCカップは、Jリーグチームの上位が出場するACL(AFC Champions League)の1個下のカテゴリーに当たる大会で、同じくAFC(Asian Football Confederation)が主催する、アジア諸国のクラブチームによる国際大会です。

 まだまだ発展途上のリーグではありますが、国際大会へとつながっているモンゴルトップリーグ。もしかすると選手個人としてのチャンスは、日本のJ2やJ3で戦うよりも大きいと言えるかもしれません。

 私個人としては、国際大会に出場することが選手として1つの目標です。そのチャンスをつかむ可能性が、モンゴルリーグにはあります。2015年シーズン、2018年シーズン共に、私が所属した「FCウランバートル」は、リーグ戦は2位という結果でした。あと一歩のところで優勝を逃し、念願の国際大会出場はならず・・・。とても悔しい思いを2度も経験しました。

 この悔しさは、もう一度モンゴルで挑戦し、優勝トロフィーを掲げなければ晴れません。チームとの契約は単年なので、2019年1月現在、今シーズンのことは何も決まっていない状況ですが、現役中にもう一度リベンジしに行くことは、この場をお借りして勝手に宣言しておきます!(チームへの猛烈なアピールではありませんよ?)

 日本の皆さまには、あまり認知されていないモンゴルリーグですが、プロリーグが存在し、国際大会にもつながっています。環境面など、まだまだ改善しなければならない課題が多いことも事実ですが、大きな可能性を秘めているリーグです。外国人助っ人選手として、自分にできることはピッチ上で結果を残すことはもちろん、もっとモンゴルのことを日本の皆さまに知ってもらうことだと思います。

 きっと、Jリーグにやってきた時のジーコさんも、ピッチ上で結果を残し、母国ブラジルでも日本のことを広めていたはずです。その証拠に、鹿島にはジーコスピリットが宿っており、その他のJリーグチームにもブラジル出身の選手が現在も数多く活躍していますよね。私も、ジーコさんのような存在を目指して、ピッチ内外で活躍し続けたいと思います。プレースタイルはアルシンド寄りかもしれませんが・・・(今のところ、髪型はアルシンド寄りではありません。「トモダチならアタリマエー!」です)。


 上:上段写真/モンゴルリーグの試合の様子。暖かい期間は北海道よりも短い
 上:下段写真/ピッチ上に降り積もる雪。人工芝なので公式試合が可能となる


 上:上段写真/FCウランバートル(モンゴル)のメンバー。前列左端が大津選手
 上:下段写真/選手、スタッフが歓喜に沸く様子。トップリーグは毎試合、熱く厳しい戦いが繰り広げられている


◆大津一貴プロフィル◆
少年時代は、札幌山の手サッカー少年団とSSSサクセスコースに所属。中学校時代はSSS札幌ジュニアユース。青森山田高校から関東学院大学へ。卒業後は一般企業へ就職。2013−2014年は、T.F.S.C(東京都リーグ)。2015年FCウランバートル(モンゴル)。2016年スリーキングスユナイテッド(ニュージーランド)。2017年カンペーンペットFC(タイ)、2018年はFCウランバートル(モンゴル)でプレーし、優勝外国人選手ベスト10に選出された。

大津 一貴