サッカーアラカルチョ

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ヨーロッパサッカー回廊『“UEL2”誕生か』

18・12・19
 現在行われているヨーロッパチャンピオンズリーグは、予選のグループ戦が終了、久しぶりにイングランド4強がそろい踏みでベスト16に勝ち上がった。

 まずはマンチェスターシティ(勝ち点13・F組1位)、マンチェスターユナイテッド(勝ち点10・H組2位)の2チーム。そして最終戦の結果、B組のトッテナムホットスパー(スパーズ)がイタリアのインテルと勝ち点8で同点となったが、直接対決でのアウェーゴール差で上回り、インテルを抑えスパーズが勝ち上がった。C組のリバプールもナポリと同点の勝ち点9で並んだが、総得点で9点を挙げ、ナポリの7点を上回り、結果4チームが残った。イタリア勢は結局、ユベントスとローマの2クラブが残ったにすぎなかった。

 3クラブが残ったのはスペイン(バルセロナ、レアル・マドリッド、アトレチコ・マドリッド)とドイツ(バイエルン・ミュンヘン、シャルケ、ドルトムント)。

 2クラブが残ったのは前述のイタリアとフランス(PSG、リヨン)の両国。そしてオランダからアヤックス、ポルトガルからFCポルトの1クラブがベスト16に進出。これから来年の5月までノックアウト戦で優勝を争う。国別でいえばイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、ポルトガルの7か国のクラブが覇権を懸けて戦うことになった。

 一方、チャンピオンズリーグの下となる、ヨーロッパリーグではスペイン勢が3クラブ(ベティス、ビジャレアル、セビージャ)、イングランド勢は2クラブ(アーセナル、チェルシー)、ドイツも2クラブ(レバークーゼンとフランクフルト)となり、イタリア(ラツィオ)、ポルトガル(スポルティング・リスボン)、フランス(レンヌ)の3か国は1クラブずつであった。

 チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの勝ち残りクラブを合計するとイングランド6クラブ、スペイン6クラブ、ドイツ5クラブ、イタリア、フランスそれぞれ3クラブと序列が付いたのである。これは正しく観客動員数、経営規模に比例する序列と言えよう。

 そしてUEFAクラブ大会の経済的成功から、UEFAは現在の2リーグを更に拡大しようとする動きが出てきた。名称を「UEL2」として、UEFA加盟国から上記2リーグに加えて32チーム、8グループにて予選を行い、グループトップの8クラブが準々決勝、準決、決勝に進み、2位のクラブはヨーロッパリーグの3位とのプレーオフとするもの。大会のスタートは2021年からとUEFAはもくろんでいる。

 この構想に対し、国のリーグ戦、カップ戦、そしてヨーロッパUEFA戦と年間60〜70試合もこなさなければならない選手の体調など、ベストに保つことが難しいとする加盟国のクラブから反対の声が上がってきている。現在スペイン、オランダ、デンマーク、スイス、ポーランドが公式に反対している。一方、経済的にも潤うとする国、クラブもあり、今後議論を呼ぶ構想でもある。

 ホームアンドアウェー方式を逸脱するスペイン、バルセロナのアメリカでの公式戦を求める動き、そしてヨーロッパスーパーリーグ構想の動き、更にイングランドのEU離脱による、EUとの二重国籍を保有する南米トップスター選手が、果たしてイングランドの労働許可書をもらえるのかといった問題も含めて、国際フットボール界は『ヨーロッパ1強』を許していいものか揺れている。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08    :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫