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弊紙発刊の書籍が全国で絶賛販売中!【一部抜粋して紹介】

18・09・11
 上写真/「100万円も借りられなかったNPOが、街クラブ日本一の施設を造った奇跡の物語」の表紙(三角屋根が多目的屋内交流施設。隣が2階建てのクラブハウス)。裏表紙にはホーム施設前景の写真がつながる(子どもたちも読みやすいようにと書籍内では20ページのイラストも掲載)


 昨年Amazon初登場でカテゴリー別4位、その後口コミで広まり、大型書店「コーチャンフォー 新川通り店」でも取り扱いが開始された書籍「100万円も借りられなかったNPOが、街クラブ日本一の施設を造った奇跡の物語」(出版元:北のサッカーアンビシャス、税込1,080円)が、全国のサッカー関係者から注目を集め、絶賛発売中だ。

 本紙では、昨年の12月号から本の中身を少しずつではあるが紹介している。10回目は第十一の巻「今度こそ、今度こそ、今度こそグラウンド用地の購入へ」から抜粋し、紹介したい。


【以下書籍より一部抜粋】

第十一の巻「今度こそ、今度こそ、今度こそグラウンド用地の購入へ」

 プロジェクトスタートから3年の月日が流れる中、ホーム施設の確保に向け、全ての可能性をひとつずつ精査していた特命チームだったが、2012年12月、ついに答えを出すことになる。

 ここに至るまでには、グラウンド用地の借用か、購入か、もしくは室内施設を中心とする既存施設の買収か、はたまた指定管理者制度かと奔走してきた。最終的には、クラブの今後を見据えた時に、最も拡張性と将来性の高い(お金もリスクも高い)、ホームグラウンド用地の購入に行きつくことになった。

 ホーム用地に確定した場所は、札幌市の隣にある石狩市の花畔(ばんなぐろ)地区。この地区内には、石狩市が管理する「はまなす国体記念石狩市スポーツ広場」があり、道を挟んで札幌市内の高校が造った多目的グラウンドや、他の民間団体が管理する草野球場などがあるスポーツ施設の集積地域でもある。

 地図上で確認すると、真隣の札幌市から見て石狩市は北西に位置し、SSSが購入したグラウンド用地までは、夏場であれば(冬季の雪などによる渋滞がなければ)札幌市中心部の札幌駅付近から車で約30分程度の距離感である(※)。

 (※)札幌市内は、東西南北に向けて地下鉄での移動が可能であり、地下鉄南北線の北の端の駅は麻生駅が終点である。南の終点は真駒内駅。地下鉄と言いながら、地上を走る区間でもある。南北線の他には、東西線と東豊線がある(札幌ドームへは東豊線の終点「福住駅」で降りると近い)。公共交通機関を利用しSSSホームグラウンドに行くには地下鉄南北線終点麻生駅、東西線終点宮の沢駅、東豊線終点栄町駅からそれぞれ路線バスで移動することになる。


 上写真/現在ホームグラウンドがある土地の当時の写真。SSSが購入したのは、雑草が生い茂る雑種地。ここからものすごいスピードで施設整備が進められていくこととなる(2013年6月撮影)。


 石狩市の人口は、約6万人。「市民皆スポーツ」を掲げ、2017年で37回目の開催となる石狩サーモンマラソン大会や石狩市民スポーツまつりが開かれるなどスポーツを通じて市民の健康増進に力を入れている街でもある。

 石狩市へ進出を決める前段階には、行政の行う事業や地域との連携の可能性を探り、道や市議会議員へSSSの行う事業説明やあいさつまわりなども特命チームが行っていた。計画が本格化する頃には、市議会のとある会派の定例会議に柴田が呼ばれる形で、プロジェクト説明の機会が与えられることとなった。許された時間は、約10分。説明役は1人で、資料配付役で1人の入室が許可された。取り持った議員からも「急きょ、割り込みで入れたので、10分間の保証も出来ないし、内容次第では直ちにお引き取り願う(退室してもらう)ことになる。時間を無駄にせずしっかりと説明してほしい」と念を押されていた。

 当日となり、会派専用の会議室前の廊下で柴田と土橋が直立しながら出番を待っていると、不意に扉が開き入室が許可される―。

 説明役の柴田は失礼の無いよう、しっかりと自己紹介をしてから話に入ったのだが、10人を超える議員たちは、他の議案の処理で忙しかったのか、それとも場違いな者が説明していたからか、最初は全く話を聞く様子ではなかった。柴田の方を見もしない雰囲気である。資料配付役の土橋はその雰囲気に押され、『これは確かに場違いかもしれない。何を言っても伝わらないのでは・・・もし自分が説明役なら出ばなで心が折れる』と、遠くから眺めることしか出来なかった。その中、柴田は構わず説明を続けている。ふと土橋が腕時計に目をやるとあっという間に10分間が経過していた。

 柴田が一呼吸置くと、話を聞いていなかったある議員から「ところで、どこの誰だか知らんが、この場で何の話をしているんだ?」と、きつい指摘が入る。しっかりと自己紹介をし、あらかじめ資料も直接手渡していたのにである・・・。

 この時、怯んでも仕方のない状況だが、
『しめた! 話を続けるチャンスだ!』――

 「では改めてご説明致します。私はこのプロジェクトを(○○党の皆様に)最初にお持ちしましたが、もし難しければ次は〜〜」、柴田は予定時間を過ぎているのを承知で話を続けた。すると、話を聞いていなかった様子の議員が、1人、また1人と真剣に耳を傾けだす。予定時間を超え一通り説明し終えると、その場にいたベテラン議員がさっと立ち上がり「このプロジェクトが本当に進むならスポーツの街を掲げる石狩市にとっても素晴らしいこと。何か出来ることがあったら協力しましょう」――最後には、今後の展開を期待される話し合いの場となっていた。

 その後、正式に石狩市花畔地区でホームグラウンドの設置が進むことになるのだが、SSSには、クラブ所有のバスで無料送迎のあるコースと、自力で練習会場に来るコースがあり、通う子から考えると札幌市内での活動より通いの不便さは確かに増えた。「人工芝グラウンドが出来ても家から遠くなるから辞める」、「石狩にグラウンドが出来る前に卒業させておいて良かった」という一部の声には、特命チームも正直がっかりしたが、新設されたホーム施設に訪れた時の子どもたちの多くの笑顔で報われた。特にグラウンド完成直後に、台風による大雨と強風の日があり、家で寝ていたクラブ員の子どもが「ホームグラウンド大丈夫かな?!」と、早朝に飛び起きてきたという話を親御さんから聞いた時には、苦労した甲斐があったと特命チームも感慨深かったという。

 ホーム施設は、確かに利便性が高いことに越したことは無いが、それだけで語る問題でもない。そこに施設的価値としての“ホーム“だけではなく、クラブ員の活動を含め地域に溶け込み、ぶれないクラブ理念の下、永く活動を継続し続けることで、いずれは心の中(心理的側面)でも“ホーム“としてあり続けることが出来るのだ。


 この続きにご興味のある方は、ぜひ本書でお楽しみください。店頭でのご購入はコーチャンフォー新川通り店(他店舗はお問い合わせください)か、Amazonでも送料無料で販売しております(Amazonサイト内で、「SSS札幌」、もしくは「SSSサッカー」で検索するとトップページに表示されます)。

 あなたも奇跡と呼ばれたプロジェクトの証人となる!?

編集部